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6章 尾張遠征 1 花見と稽古と友達のこと(6)

  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「どうじゃ? 順調に進んでおるかの?」


 白い夢の中。日課となっている講義。現在は孫子(そんし)が二周目に入っている。一度に深く掘らず、何度も読み返すことによって徐々に深い理解を得るのだ、とお師匠は言う。最初に読んだ時と違い、二周目では後半にある章と前半にある章のつながりに気付く。全体を知っていると前半の章が見せる景色はこうも違うのか、と志麻(しま)は驚いていた。


「ちゃんと昨日の復習と、今日の分の素読はしてきたわ」


 志麻(しま)はそれを、お師匠の講義が始まって以来、一度たりとも怠ったことはない。なんといっても楽しいのだ。


「そちらではない。そちらを心配すると思うてか。そうではなく、次の大戦(おおいくさ)弥次郎(やじろう)殿に付いて参陣したい、と言うておうたであろう。そちらの進み具合じゃの」

「そっちのことなのね」

 志麻(しま)は答えて、深く息を吐いた。


朝比奈(あさひな)家中の三分の一は、わたしが付いて行くことに賛成してくれているわ。けれど、肝心の(にい)さまが相変わらず反対だわ。何とか家中の支持を半分以上にして、それを梃子(てこ)(にい)さまを説得したいのだけれど、なかなか進まないわね」


「左様か、賊からうまく聞き出しても増えぬか」

「ええ、それがあったから、三分の一が賛成してくれるようになったのよ。なければ、ほとんどの者は首を縦には振らなかったわ」


「うむ。なかなか人を動かすということは、難しいものだ」

「ええ、けれど、まだ諦めないわ。あと二か月はあるはずだから、何としても家中を説得して、(にい)さまを翻意させるわ」


弥次郎(やじろう)殿にしても、家中が反対しておるのに妹の姫を連れて行くとなれば、身内に甘いと悪評も立つ。内心はどうかは判らぬが、賛成できぬであろう。やはり、家中の支持が、参陣の分かれ目になろうな」

「そうだわね。努力するわ」


「うむ。武芸の鍛錬も、この講義で行う学問も、一朝にして事態を変える力はないが、徐々に姫の夢に近づく力となろう。なれば、今日の講義を始めようか」

「はい」


  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

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