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5章 初陣 5 尋問(5)

  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(にい)さま、参りました」

 若さまの部屋の前で姫が声をかけると、お入り、と中から声が掛かった。


 (ふすま)を開けると、若さまが胡坐(あぐら)をかいている。目の前には何やら書き付けが広げられていた。


「セイも来ておるな。ささ、座れ」

 促されて僕と姫は、若さまの前に並んで座った。


「結果が出た。まぁ上々だ。だが、その前にだ。今回の策を練ったのが志麻(しま)、お前さんだと家の者が聞いて、皆、驚嘆しておったぞ」

「あら、話してしまわれたのね」


「評議でな、俺が策を練ったかのように話が進んでおったからな。俺は人の手柄を奪う趣味はない」

「だから、ここに来る間にチラチラ見る者がいたのね。納得だわ」


 僕も感じていた。僕が姫と一緒にいることはよくある。だから、今更見られるのは変だな、と思っていたのだ。それは僕を見ていたのではなく、姫の手柄のためだと知って、自分のことのように誇らしい。やはり姫はすごいのだ。


「それで(にい)さま、結果はどうなりまして?」

「おう、話したのが三人、(うそ)をついたのが二人、内容が少ないのが四人、黙って何も話さないのが一人だ」


 そう、と言って姫が人差し指を(ほお)に当てる。


(うそ)をついた二人は、同じことを話したのかしら?」

「いや、別々だったな」


「ねぇ、(うそ)をついた内の一人が本当のことを言っていて、他の四人が嘘をついていることはないの?」

 あれっ? と思い浮かんだ疑問だ。多い方が本当とは限らない気がする。


「皆、そう思うだおろうな。だから志麻(しま)、お前さんは確認したのだろう?」

 若さまが姫を見て、説明するように目で促した。


「ええ、もし(うそ)をついた二人のうち一人が本当のことを言っているのであれば、三人が同じになって一人が違うことはおかしいわ。三人が同じ話をするということは、話してもよい(うそ)の物語をあらかじめ賊の皆で示し合わせていたことになるわね。そうすると、一人だけ違うことを話す者が出るのはあり得ない。(うそ)の物語は全員で示し合わせなければ意味がないし、そうであれば、新しく(うそ)の物語を作らず、示し合わせた(うそ)の物語を話せばいいんですもの」


「ん? どういうこと?」


 姫は、すらすら話してくれたけれど、聞いている僕は、完全に置いてきぼりを食らってしまった。難しいって。姫の目をじっと見て、訴えた。


「そうねぇ、この五人が捕まったとき用の(うそ)の物語を持っていたとしましょう。すると、それぞれはその(うそ)物語を話すか、本当のことを話すかの二択になるわ」


「そうだね」

「けれど、話を聞いてみると物語は三つ出てきた」


「うん」

「バラバラの話をした二人の内の一人は用意した(うそ)の物語ではなく、その場で新たな(うそ)物語を話したことになる。けれど、それって話す側にとって何の利益にもならないわ。少なくとも用意した(うそ)の物語を話す以上のね」


「なるほどね。僕もそう思う」


 とは言ったけれど、実際のところは頭が混乱してよく分かってない。こんな話を突然されても、解んないよ。けど、それでは格好が悪い。とっさに解ったふりをしてしまった。うぅ、バレませんように。


「でしょ。だから、前提と今ある結果が矛盾するのよ。その矛盾を解くには前提が間違っていた、と考えるしかない。つまり、(うそ)の物語を全員で示し合わせていないことになるわ」


「そういうことか。だから姫は(うそ)をついた二人が同じ話をしていないか、確認したんだ」


 もちろん解っていない。話を合わせました。ごめんなさい。


「ええ、そうよ。これで、同じことを話した三人が本当のことを話した、と考えていいわね」


 若さまは、姫と僕とを交互に見やり(うなづ)いた。


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

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