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5章 初陣 5 尋問(4)

  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 再び朝比奈(あさひな)屋敷にある二基の(やぐら)、その一つの上に、志麻(しま)とセイ、二人の影があった。前回と違い今回は昼間でなので、屋敷の門からそそくさと去って行く二人の賊の姿が、はっきりと見て取れる。


「どう? 動いているかしら?」

「うん、どちらも大丈夫だよ」


 セイの手の上には、二つの追尾の鳩羽(はとば)があった。一つは以前に掛けた茂吉(もきち)のもの。もう一つは、今、去って行くもう一人の賊に掛けたものだ。


「上々ね」

 そう言って、志麻(しま)は逃げる二人の背中を見続けている。


「ねぇ、姫。あの賊たちを、また捕まえに行くの?」

 同じく去って行く賊を目で追いながら、セイが尋ねた。


「いいえ。そのつもりはないわ。解放する、好きなところへ行ってよい、と約束したのだから、それは守るわ。朝比奈(あさひな)の家名が懸かっているからね。簡単に破れないわよ」


「そうなんだ。じゃぁ、これからどうするの?」

「これから第二の仕掛けをするわ」

 志麻(しま)は、笑みを浮かべて答えた。


「第二の仕掛け?」

「そうよ。第二の仕掛け。今、(ろう)の中にいる賊たちは何を考えているかしら?」

「解放された人たちが羨ましい……かな?」


「ええ、それもあるわ。けれどもう一つ、誰か裏切り者がいる、と疑心暗鬼になっているわね。それも二人いると考えているわ。二人の内容が一致したか、矛盾がなかった。なぜ? 本当のことを話したから。そう疑っているはずだわ」


「賊は、何て言ってたの?」

「何も。誰も何も話していないわよ」


「えっ!? (うそ)なの? 何も聞けていないのに、解放しちゃったの!?」

 そうよ、と志麻(しま)は鼻高々に言う。


「わたしも、さすがにあの条件では誰も話さないと思っていたわ。もちろん、話してくれても良かったんだけれど。ただ疑心暗鬼を起こすことが目的だったのよ。普通だったら話さない。だから、どうにかして冷静さを失わせることが重要なのよ」

「賊の人たちは、今頃、(だま)されて動揺しているんだね」


「ええ、見届け役が、じきに(ろう)に戻されるわ。そして、(ろう)の中に伝わる。羨ましいという思いに、妬みが加わるわ。思い出してちょうだい。あの解放された賊の一人は、名前を話したのよ。一人だけいい食事をずっと(もら)っていた。食事の度に妬みを覚えたはずよ。さらに解放までされた。心の中は理不尽(りふじん)でぐちゃぐちゃになるわ」

「うん。僕だったら許せないかな」


「今日一日は尋問をしない。ぐちゃぐちゃな気持ちを増幅させて(もら)うわ。そして明日、尋問をする。条件は今日と同じ。だけれど、今度、助かるのは自分にするわ」


「しゃべるかな?」

「全員でなくてもいいのよ。何人か、本当のことを話せば。いけると思うわ」


  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

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