表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/143

3章 夜襲 3 志麻の国、セイの国(2)

「僕の国かぁ。そうだなぁ。名前はガシュン王国と言うんだけれど、普通は単に王国と言うかな。ヒメは知っている?」

「聞いたことはないわね」

 ヒメは申し訳なさそうに首を左右に振った。


「そうかぁ。ところで、ここは何ていう国なの?」

駿河(するが)の国だわ。天子様の知らしめす国という意味ならば、日本だとか、大和(やまと)かしら。葦原(あしはら)中つ国(なかつくに)なんて言い方もあるわね」


「やっぱりそうかぁ……。聞いたこともないや」

 僕の知らない国であろうことは、予想ができていた。初めて見るものがあまりにも多い。それでも、はっきりと手掛かりがないと分かると、やはりがっかりする。これでは王国に帰るのに苦労しそうだ。東に向かえばよいのか、西に向かえばよいのか、それすら全く見当がつかない。


「セイ、ごめんなさい。力になれなくて」

 僕があまりにも長く沈黙してしまったために、ヒメに要らぬ心配をかけてしまったようだ。


「ヒメには本当にいいようにしてもらっているよ。これで謝られちゃったら、僕はどうしていいのかわからなくなっちゃう」

「そう……、でも、困ったことがあったら遠慮なく言ってよ」

「うん、そうする。ありがとう」

「ええ」


「えっと、何の話をしてたんだっけ? えーと、王国かぁ。話を元に戻すと、王国の中央には大きな河が流れていて、穀物がよく穫れる、かな。あと、瑠璃(るり)翡翠(ひすい)の鉱山で有名だよ」

瑠璃(るり)翡翠(ひすい)かぁ、素敵ね。セイの国は豊かなのね」


「どうだろう? 鉱山の利益は王さまのものだから、王さま次第(しだい)って言ってた」

 これは受け売り。僕の出来すぎる弟が言ってた。


「民に施しを与えてくれる王様か、ケチな王様かってこと?」

「そういうこと」

 弟が三十分かけて説明してくれたことを要約すると、たぶん、そんなところだ。


「それでね、普通の年ならば、まずます生活できるから、王国の人間は温和だとも言われるかな」

「衣食足りて礼節を知る、というところかしら」


「そう言う言葉があるんだね。多分そう。あと、田舎(いなか)に行けば特にそうなんだけど、余所(よそ)者への警戒心が強いって言われたりするね」


「セイはそんな感じしないから、都会の人間でしょう?」

「半分当たり、半分外れだよ。元々は田舎(いなか)にいたんだけど、僕は魔法使いの素質があったからね。王都の魔法部隊に招集されたんだ。だから、半分地方の人間で、半分王都の人間なんだよ」


「もしかしてセイ、故郷では偉い人だった?」

「んー。一応、準貴族」


「あら、すごいじゃない」

「魔法使いは全員、準貴族になるんだ。けど、部隊の指揮官になるにも、王宮で出世するにしても、準貴族じゃだめ。貴族じゃないと。ここの差は大きいんだ。こちらと違って実力があっても家柄が何よりも優先だから」


「あら、こちらでも家柄は重要よ」

「そうなの?」


「家柄はある程度の求心力になるわ。家柄に似合う教養のない主人は、逆に馬鹿にされるけどね」

「家柄があっても大変だね」


「ええ、馬鹿にされるだけならまだマシよ。国が乱れてからは、家柄があっても無能な主人を家臣が倒して、そして領国を乗っ取ったりしているわ。これを、下剋上(げこくじょう)と言うわ。それでも、下剋上(げこくじょう)をする家来に全く家柄がないってことはないわね」


「もしかして、今朝、ここが襲われたのも下剋上(げこくじょう)なの?」

「それはないわ。うち、朝比奈(あさひな)家は今川(いまがわ)家に仕える身だから、うちを倒しても主人になれないわ」


「違うんだ。そうだ、今度はヒメの家のことを教えてよ」


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ