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1章 出会い 3 お師匠(6)

  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 誰かに、ペシッ、ペシッ、とおでこを(たた)かれ、志麻(しま)は目を覚ました。


――きっとお(けい)ね。いくら何でもひどい起こし方だわ。あぁ、もう少し寝させて……。


 また、ペシッ、ペシッ、とおでこを(たた)かれる。


――あれ? わたし、起きないといけない理由があった……。えーと、あっ!


 志麻(しま)は勢いよく飛び起きた。

 辺りはもう明るくなっている。


 いや、昨日までいた部屋ではない。前も、後ろも、右も、左も、上も、下も、何もない空間が続いている。


「やっと起きたか」


 志麻(しま)は声のした方を見て飛びすさった。

 白い蛇がしゃべっている。


「飛びのくとは失礼な」


 そう言った白蛇(しろへび)には五色(ごしき)文様(もんよう)があり、金の後光が射している。目は全てを吸い込むような不思議な色合いだ。


「へ、へ、蛇がしゃべった!?」

「ほう、姫には我が蛇に見えるか」


 白蛇(しろへび)は悠然とした声で言った。


 志麻(しま)は、カクカクと首を縦に振る。


「そうか、ここは長慶寺(ちょうけいじ)ゆえ、白蛇(しろへび)となったのであろう。まぁ、姿かたちなぞ些細(ささい)なこと。問題なかろうて」


 この白蛇(しろへび)には表情がない。否、むしろ能面のようにどの表情にも見え、見る者を惑わす。

 志麻(しま)には白蛇(しろへび)の表情が読み取れない。表情がないとも言えるかもしれない。喜怒哀楽どれにでも取れそうで、どれでもないような印象を受ける。


「あのう、ここはどこなのでしょうか」

 志麻(しま)は恐る恐る尋ねた。


「夢の中だな」

 さも当然のように、白蛇(しろへび)が答えた。


 夢の中……。薄々そうだとは思っていた。自分の理解が当たっていて志麻(しま)は落ち着きを取り戻した。後から考えてみれば自分の図太さに驚く。


「では白蛇(しろへび)さんは、わたしが夢の中で創造した存在なのね。自分で作ったものに(おび)えるなんて」


 そう言って、志麻(しま)は自分に(あき)れたように笑った。


「否、我は姫によって作られたものではない」


 白蛇(しろへび)はあくまで鷹揚(おうよう)とした声で言った。


「では、あなたは何者(なにもの)なのですか?」

「我は我だ。それ以上でもそれ以下でもない。そもそもこの夢の空間も、姫ではなく我が作っている」


「えっ、そうなのですか。何のために?」

「今日の夜半に行くと、恵進(えしん)を通して伝えてあったろう」


「ええ! では、あなたが恵進(えしん)さまの(あに)さんで、師を買って出てくれた……」

「そうだな。なのになかなか寝ないので、随分待たされてしまった。終いには睡魔の術を使ったが、頑強に抵抗して手こずった」


 ある時間から急に睡魔に襲われたのは、そのためだったのか。あれほど頑張(がんば)ったわたしの努力って。


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

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