表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/143

7章 西へ 3 志麻、見附で負ける(1)

 3 志麻(しま)見附(みつけ)で負ける


「大きな町だね」

 セイは町の入口に立ち、目の前に広がる町並みを見渡しながら、隣の志麻(しま)に言った。

「ええ、ここは見附(みつけ)よ」


 遠江国(とおとうみのくに)見附(みつけ)は古くは遠江(とおとうみ)の国府が置かれ、古来より栄えし町である。掛川(かけがわ)から西に二里のこの見附(みつけ)は、町を貫く東海道により陸運と結び付き、町まで伸びる(おお)(うら)という入り江により水運とも結び付いている。今川(いまがわ)氏の遠江(とおとうみ)支配の中心が掛川(かけがわ)城と高天神(たかてんじん)城であるならば、見附(みつけ)遠江(とおとうみ)の経済の中心であるとされてきたのだそうだ。


 そういう町の歴史も楽しいのだけれど、大きな町の方が小さな町よりも食事の質が期待できる。これは王国での経験則だ。こちらの世界に来ても、条件反射で期待してしまうのは仕方のないことだよね。


掛川(かけがわ)の町と大して変わらんな」


 見附(みつけ)の町を見て喜んでいる僕と比べ、冷めた声の源太(げんた)には、がっかりさせるものがあったみたい。余談だけど、源太(げんた)は昨日の駆け足が(こた)えたらしく、甲冑(かっちゅう)は胴を残して夕凪(ゆうなぎ)に預けていた。


「そうねぇ、遠州(えんしゅう)一の町だと聞いたけれど、ちょっと拍子抜けね」

 姫も同様の感想を(いだ)いたのか、(うなづ)いて同調した。


「昔、俺の親父が立ち寄った時には、商人で(あふ)れかえるほどの(にぎ)わいだったと言っていた。駿府(すんぷ)には及ばずとも、遠江(とおとうみ)では群を抜いて一番だったそうだ」

「わたしも父さまから、掛川(かけがわ)見附(みつけ)のような大きい町にしたいと聞いたことがあるわ」


 二人が二人とも勘違いをするとは思えない。ということは、何かがある。または、何かがあった、ということだよね。


「ねぇ、じゃぁどうして(にぎ)わいがないのか、ちょっと人を捕まえて聞いてみない?」

 僕の提案に、姫はニコリとほほ笑む。


「そうしましょうか。少し早いけれど、どこかのお店に入って軽く食事をとりながら聞いてみましょう」


 源太(げんた)が僕の肩を何度も(たた)きながら、ガハハ、と声を上げて笑った。

「セイ、姫様はお前のことを全てお見通しだな」


「ちょっと、お見通しって何のことさ?」

 僕は源太(げんた)の手を、ひょい、と避けて聞いた。


「そりゃあ、食うのが目的で、話を聞くのが手段ってことだろ」


 うっ……、それを言われては、ぐうの音も出ない。


「姫、そうなの?」

 恥ずかしくて耳が熱くなるのを感じながら、僕は姫に問いかけた。


「ええ、まぁ。セイは食べている時が一番幸せそうだから、ね」

 姫が気まずそうに答え、源太(げんた)がもう一度大きく、ガハハ、と笑い声をあげた。


「そんなに顔に出る?」

「まぁ、分かりやすい方かしら。だけど、もうわたしも源太(げんた)も知っていることだから、無理して隠すことないわよ」


 うん、と答えた時にも、まだ、源太(げんた)は笑っている。姫の優しい心遣いに比べて、源太(げんた)の細やかさの欠けっぷりはどうにかならないのか、とセイは心の中で愚痴った。


  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ