弟の感想
「姉様。お疲れではありませんか? 三日続けて知らない方にお会いするのは」
ダイオが私を心配している。
この子は本当に感情を隠さない。
私にたいして、とても鮮明に示している。
「ふふふ。大丈夫よ」
「……顔色が悪いです。ずっと見ておられたのでしょう? 気分悪くないですか? 姉様に対して良いものを感じませんでした。姉様はそれが見てとれたでしょう?」
「あらあらあら」
よく見ている。
かわいい私の弟。
大切な弟。
聡明で、優しくて、思慮深い。
この子は私が傷つくことを嫌いっている。
確かにダイオのいうように、私に対する感情はとても鮮明に見えた。
お二人とも私に会えるとは思っていなかったのか、驚かれていたし、私に興味がなくし、私を怖がって。
失礼だわ。
でも安心した。
そんな方なら私を選ばない。
私を利用しない。
この家は守られる。
……。
「姉様?」
黙る私を不安そうに見つめている。
「ダイオ」
私は笑いかけた。
大切な、自慢の弟。
「はい、なんでしょう」
まっすぐ私を見てくれる。
「ダイオは三人を見てどう感じた?」
とても素直な子。
この子の感覚は正しい。
あの話だって、この子はいやがってたし。
「正直に申し上げていいですか?」
「ええ。……あっでもその前に」
「ん?」
「紅茶をいただきましょう」
お父様にははじめから伝えていた。
お会いするだけになる。
その後はなにもない。と。
私に会いたいだなんて、興味本位が強すぎる。
好奇心は身を滅ぼす。
それを知ってほしくて。
「辺境伯様だけ違うように見えました」
ダイオのその言葉に、手が止まった。
「あの方は姉様を見ていました」
……。
「お二人は姉様のお姿に眼を取られていました。そして、姉様を怖いとか、思っていたのと違う。という印象をもたれているように感じました」
ふと思うときがある。
ダイオも私と同じで変わった子なのでは?と。
それぐらいこの子はすごい。
「辺境伯様だけは、姉様を見ていて、特別変わられる様子もなくて。姉様のことを、理解されているようでした」
本当によく見ている。
三人と会話した時間にそこまで差はないだろうに。
「辺境伯様であれば、義兄と呼べそうです」
新たに淹れてもらった紅茶の香りが消えた気がした。
確かに辺境伯様は違った。
何も分からなかった。