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公爵家

 手紙の返事がきた。


 「どうしたものか」

 「よかったではないか。気になっていた令嬢だろう?」

 「そうですけど……。兄さんはどう思う?」

 「どうも思わないよ。おまえの直感を信じろ」


 予定を決めて、実際に会うことになったのはいいが、どうしたものか。


 「……いや考えたってどうにもならないか。とりあえず会おう」


 指定された店に向かった。


 ……だれだ?


 店の前で待っている少年。

 ……従者ではない。

 弟がいるとは聞いているが、それか?

 だとしたら、ここで失礼な態度はダメだな。


 「失礼する。誰か待っているのか」

 「はい。公爵家を」

 にっこりと笑う。

 ……弟だ。

 遠目に見たことがある彼女によく似ている。

 「失礼した。私は、ステーク•アレドと申します」

 「お待ちしておりました。中で待っております」

 スッとエスコートする姿は、様になっている。


 とても上品で綺麗な動き。

 無駄のない動き。

 ……同じ弟でも俺とは大違いだな。


 店の選択がいいな。

 外観も内観も好みだ。

 シンプルのなのが一番か。

 連れられた部屋で、一番最初に飛び込んできたのは、大きな瞳。

 眼があって。

 ……吸い込まれた。

 フワッと笑って、こちらを見ている。


 「お待ちしておりました」


 椅子にすわる所作も。

 カップを口に運ぶ所作も。

 笑うときに口許を隠す所作も。


 全てが優雅で。

 綺麗だ。


 名前と同じ宝石の瞳。

 所作もそうだが、この瞳が彼女の聡明さを示している気がする。

 噂話として聞いていた。

 伯爵家に恋われた男爵家。

 でも、当事者はそんなことはなく、婚約白紙になって。

 そのことに、傷ついていない。


 「君のことは、噂話で聞いている。手紙にも書いたが、とても強い人だ」


 直感を伝えた。

 自分をしっかりと持つ。

 芯のある女性。


 「君はどうして婚約を受けたんだ?」


 不思議だった。

 断ることも、繋ぎ止めることもなく。

 ただただ、あんな眼にあった。

 なにもしない女性には見えない。


 「身分ちがいのお話でした」


 にっこりと笑っている。


 「それゆえに、なにもできなかったのです。いずれ家を出る身。家のためにできることをしたまでですわ」


 ……ああ。


 笑っているが、笑ってない。

 瞳が。

 こちらをしっかりととらえている。


 ……。


 「どうだった?」

 兄さんに声をかけられた。

 「……とても上品な方で、とても強い人で」

 何を話したかなんて覚えていない。

 「とても怖い人だよ」


 年相応の服装に、装飾。

 とても似合っていた。

 あの場所にも溶け込んでいた。

 あの瞬間だけ、別人に見えた。

 自身の敵に容赦をしない。

 そんな瞳だった。

 無遠慮なこちらにたいして、しっかりと敵意を示した。


 家のためにできること。


 そのためなら、なんだって敵にする。


 その覚悟を感じた。


 あの姿が、本当の彼女なのか。

 ……いや、それ以外のときも彼女はとても自然で。取り繕っているというのはなかった。


 「俺には無理だよ。へたに近づいて、兄さんの邪魔をしたくない。彼女みたいに、失敗を失敗にしないなんてことできないから」

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