父親として
「今なんとおっしゃいましたかね」
父親として。
階級は上とはいえ、こちらのほうが年は上だ。
失礼のないように。
そして我が子を守る。
確かに手紙から守りたいというのは伝わっていたし、理解していた。
この方は悪いようにはしない。
示してくださった誠意に嘘偽りはない。
だからといって、娘を手放すのは別問題だ。
「まだご本人にお話ししたわけではありません。きっと伝えても断られるとみています」
「それではなぜ自分に?」
「現在、あなたの許可を得て、私の屋敷の一つにいるわけですが、いずれ本宅のほうにもお越しいただきたいと考えています。ほかにも使用人はいますので、さすがに友人の娘が遊びに来ているというのは厳しいでしょう。年齢も年齢ですので」
そもそも友人宅でもないのだが。
「それにこちらの思いを伝えていない状態では、きっと弟君もよい感情を持たれないでしょう」
確かにダイオは納得していない。
あの子には伝えていないから。
どうして姉があんなにも熱心にこもっているのか。
ちゃんと学園にはいっているが、いつ帰ってくるのか毎日聞いてくる。
「あの子がほしいというのであれば」
感情を殺せ。
これまでそうしてきた。
あの子に見られないように。
この感情を。
怖がらせないように。
あの子が目を愛せるように。
自分を愛せるように。
「あの子があなたを愛するのであれば」
きっとあの子にはこの方の感情は見えてない。
何を話していても変わらない表情。声色。
一切の無駄のない動き。
考えが一切読めない。
「あなたがあの子をけして、傷つけないというのであれば」
守りたい。
そばに置きたいというのであれば。
「あの子が心から幸せと思えるようにけしてその手を離さないのであれば」
私は何があっても守る。
それが妻との約束。
この家に嫁いでくれた妻にできること。
この家に生まれてきてくれたあの子にできること。
「私の子が欲しいというのはそういうことです。あの子は他と違う。変わった子です。それをわかったうえでのことであれば、ほかの令嬢と同じ扱いはしないでいただきたい。何があって。あの子を。スフェーンを愛してくれますか」
一度間違えてしまった自分を心から憎んでいる。
途中で破断するであろうと思っていた婚約の話でも、あの子の傷になってしまうことをわかっていても、何もできなかった。
すべてあの子が自分でことを片付けた。
あの子の力量がはっきりしたわけだけれど、親としてふがいない。
「心配不要。すべてのものが、うらやむほど。この国で一番の幸せを。お約束します」
まっすぐこちらを見る目に嘘はない。




