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手紙は三通
目の前に手紙が三通。
一通は北の国境を守っている辺境伯から。
一通は伯爵家から。
最後の一通は公爵家から。
どれも一級品の用紙に一級品のインク。
……はあ。
どうして男爵家の私に天上人のような方から手紙が届くのかしら。
同情なのかしら。
それとも興味本位?
だとしたらとても失礼。
「手紙は読んだのか?」
「いえ。まだですお父様」
「……そうか。好きに選びなさい。スフェーン。君が選ぶのであれば問題ないだろう」
「一度失敗していますよ」
「あれは失敗ではないよ。君だって納得していなかったからね」
目を合わせて、にっこりとお父様は笑われた。
「お父様……」
目をスッと下げた。
お父様の眼を見られない。
見てしまったらきっと。
お父様の感情を見てしまう。