ゆらなゆら【WEB】
ゆらなゆら
わたしはゆらなゆら。
まだ、名はないのです。
正確にはゆらなゆらと名付けられし者となる者です。
母のお腹の中でくるくるしながらね。
神様だと思うのよ? がね、がね、がね、おっしゃつてましましたのよ!
わたしがね! わたしがよ! 救世主!
違う違う違うのよ? わたしが救世主じゃなくてね? わたしがね! このわたしがよ! 救世主を産んじゃってねお育てできるんですって!
ななななな! なんてなんてなんて光栄なことなんでしょう! まいあがっちゃいますわよ!
だって直接聞いたんだもん!
そなたの産み育てし子、めしやとなるであろう!
そんでもってそんでもって、いろいろあってね。
わたしは無事に、この世にオギャア致しました。
わたしは今、心臓に穴が空いているらしくて……保育器に入っています。
いきなり大大大大ピンチなのです!
毎日母が心配そうなゆらゆらな顔と瞳で、保育器の透明でゆらゆらな牛乳の底みたいなぶあつい壁の外から見つめてくれてます。
母よ! 父よ! はやくわたしにゆらなゆらと名付けて下さいませな。
わたしは白馬の王子様と恋におちて、世界を救う救世主を産み、立派に育てなければならないんですから。
時は経ち……わたしは白馬の養鶏農家さんの後継ぎの飯田さんと夫婦となりました。
毎日毎日鶏につつかれながら、玉子の出荷に大忙しです。
そしてさらに時は経ち……息子は立派な恰幅に育ちました。
そして、世界の飯屋の店主をしています。
異業種の方たちと七色騎士団だったかしら? を、結成し、世界に生きる術をお届けしているみたいです。
わたしは88歳で卒業して、ゆらゆらな世界から見つめて応援してます。
ふあいと! がんばって世界を救うんだぞ!