占い通り
「さてと、あいつらを呼びに行くか。」
俺が兄さんの粥と全員分の食事の用意が出来た為、俺は玄関に来ていた。
「5…4…3…2…I…0。」
俺の秒読みから少しずれて家のチャイムが鳴った。
「占いより2秒遅かったな。飛鳥。」
「ふん、まんまと引っかかったわ。あんな影武者を用意してまで、あいつらをくっ付かせたいわけ。」
不機嫌そうに言うのは、俺たち兄弟の幼馴染である山道飛鳥である。
いわゆるツンデレヒロインだ。昔から兄さんのことが好きなのに、兄さんの女たらしを小さい頃に見抜けず、この歳になっても告白も出来ていないせいで、みるみるうちに恋敵が大量発生してしまった可哀そうな女である。
「支、あんた、なんか失礼な事を考えなかった?」
「いや、そんな事考えてないよ。ただ、思ったより人数が多いと思っただけさ。」
相変わらず、勘の鋭い女だな。それを自分の恋にも活かせていたら、兄さんを今頃独り占めに出来ただろうに。
「?…あんた、私たちが来ることは占いで分かってたんでしょ?なんで間違えるのよ?」
あんたの占いはそれを外すような的中率じゃないでしょ?と言いたげな目だな。
「生憎、昨日は野暮用で使い過ぎたんだ。少しは外れる。」
「そう、まぁ別にどうでも良いわ。あいつらは、仁の部屋でしょ。上がらせてもらうわね。」
「失礼する。」
「お邪魔します。」
「おじゃま〜」
「邪魔するよ。後輩。」
「お久しぶりですね。先輩…失礼します。」
「オジャマシマス。」
「待て。」
人の家にズカズカと入りそうな飛鳥達を呼び止めた。
「何よ。雀の為に私たちとやる気?」
「違う。だから、その手に持つ物騒な物をしまえ。家を壊す気か?」
勘違いして武器を取り出そうとするバカどもの誤解をさっさと解いておく。
「じゃあ何よ?」
「お前ら、昼まだだろう?飯の用意が出来ているから。それ食ってからにしろ。雀も呼んでくるから。お前達はリビングでくつろいでおけ。」
そう言って俺は作りたてのお粥を持って兄さんの部屋に行った。
一応、ノックして入ろうとするが、ノックに対する返事はなかった。
「?入るぞ。兄さん、他の女達が来た…ぞ……って?何してるの?」
部屋では兄さんが雀を押し倒していた。
「何?盛っているの?兄さん?」
「え…い、いや、ち、ち、違うんです。」
「そうだぞ。これは起きあがろうとしたら、転んでしまって……」
「ふーん。まぁ、兄さんに女の子を無理矢理押し倒すような下劣な行為する人じゃないから。そうなんだろうけど、さっさと退いたら?」
まだ、押し倒したままだった事に気づいた兄さんは慌てて退いた。
「雀、もう昼ごはんの用意してあるから。先にみんなで食べといて。俺は兄さんにお粥食べさせたら降りるから。」
「分かりました。」
兄さんに押し倒された事により少し放心状態の雀は危なっかしい足取りで階段を降りていった。