作戦通り
よろしくお願いします。
「さて、作戦会議を始めよう。」
はじめまして、俺の名前は守支。
ここは、俺が通っている第五異能学校の図書準備室である。
図書委員なら誰でも使える便利な場所で今は俺達以外入らないようにしている。
「あの……毎回…ありがとうございます…こん…な……ダメな自分………のため…に…」
「それは別に構わない。俺はお前の恋を応援する。その約束を守っているに過ぎない。俺は約束を破らない。」
「はい…ありがとうございます。」
この自信無さげな少女は音無雀。俺はこの少女から恋愛相談されている。そして俺はそれを全力で応援して成功させる。
そういう約束をした、俺が一方的に。
「取り敢えず、これまでの作戦でお前のダメさはわかった。」
その言葉に暗い表情がより暗くなったが、まぁ良いだろう。
「作戦の失敗はお前のそのあがり症にある。」
これまで俺が考えたものは、普通にデートさせて関係を深めようという単純なものだ。複雑なもの程何処かで間違えたら修正が難しくなるからな。
音無にそんな臨機応変な対応は期待できないのは最初から分かっていたから。シンプルイズベストでデート作戦を3度繰り返したのだが………
「えぇ、まず、1回目はデート当日にあいつ会うことに緊張しすぎて熱が出てデート場所まで行けなかった。これに間違えはないな。」
「はい…合っています……」
ただでさえ高校生に見えない小さい身体がさらに小さく見えるが、無視しておこう。
「2回目では、緊張感しない為に俺と夜遅くまで作戦会議した事による寝不足で、デート場所に遅刻した事によりデートスポットに行けなくなり、場所変更によるあいつの知り合いに遭遇でデートが崩壊。まぁ、これはあいつと交流出来ただけマシではあるな。」
「はい……そうですね……………」
蚊の羽音より小さい声がより小さくなっているガラル、俺には聞こえるから良いだろう。
「そして、昨日行った3回目のデートではお前は完璧に作戦を始めることはできたが、あいつのお人好しとトラブル体質により事件に巻き込まれデートは崩壊、その上助けた女にあいつはまた好意を寄せられてライバルが増えたと……」
「はい……………………………………そう…なんです……」
これは流石に音無は悪くない。むしろこいつはよくやった方である。
「まぁ、なんだ……取り敢えず、これでも食べて落ち着け。」
これからを考えるよりも先に今にも泣き出しそうな音無を慰める為に用意していたお茶と茶菓子を勧めた。
「ありがとうございます。………いつも美味しいですね。」
少し落ち着いたのか、音無の声が少し大きくなった。
「それは良かった。作った甲斐が有る。」
この茶菓子は俺特製の菓子である。
「あの…守さんの占いで…デ、デートの結果を知ることは出来ないんですか?」
「確かに出来るが、お前の知っている通り占いは俺の能力だ。使用制限がある、気軽に使えない。」
その言葉に雀は、少しがっかりした表情を表した。
「それにもう占った。」
「えっ?」
「雀が相談された日に既に占っている。占い内容は雀が占いの結果を知って成功するか?だ。」
「……けっ…結果は?」
雀の表情が緊張に満ちている。結果を一切伝えていない事でなんとなく予想できているのだろう。
「お前の思っている通り、最悪の結果だ。どうやっても失敗する。」
「そ、そんなっ!」
悲痛に満ちた顔をする雀。
「まぁ、落ち着け、俺の占いの確率は約90%だ。対策をした回避できない訳じゃない。」
「じゃあなんで、すぐに占い結果を教えてくれなかったんですか?」
「俺が占ったのは、それをしてデートはどうなるか?だ。雀があがり症なのはあいつから言っていたから、前から知っていた。占わなくても多分失敗すると思っていた。」
「では……なんで失敗すると分かっていてデートをさせたんですか?」
物凄く悲しい表情でこちらを見つめる雀。やっぱりこいつが良い。
「こんな事言ったらお前はデートなんか絶対しないだろ。それに俺の占いはそんな細かく占えない。毎回のデートでどんな失敗をするかなんて分からないだ。だから、雀にはデートをしてもらった。今度のデートの為に。」
「今度の…デートですか?」
そう前回までのデートはあくまでデータを取るための練習だ。次のデートこそ本番である。
「今度のデートは勝負に出る。」
「次ですか?まだ……誘われてもないですが?」
「そこは大丈夫だ。あいつから誘われることはない。」
「???どういう事ですか???」
頭も上に大量の?が浮かんでいそうな程に混乱している雀に俺は考えたデートプランを話す。
「まず、今回雀をデートに誘うのは俺だ。」
「えっ!守さんがですか!!」
面白いくらいに驚いてくれる雀。話す方もこんなに驚いてくれると楽しくなる。
「あぁ、そうだ。誤解しないように言っておくと、もちろん本当にデートをするわけではない。これは他の女達にあいつとのデートを邪魔されないためのフェイクだ。」
「フェイクですか?」
「今までデートをしていて不思議ではなかったか?3回目のアクシデント除いて、他の女達がお前らのデートを邪魔しなかった。変じゃないか?あいつらだぞ。」
「確かにあの人達なら邪魔当然してくるはずですね。」
あいつのことが好きな奴は大体が独占欲が強い為自分以外とデートなどをするのを嫌がる。それをお互いに知っている為、あいつとデートする時はそれを知られるのを極力減らしている。
「雀とあいつのデートの情報は今まで俺が情報操作で隠していた。」
「そんな…こともしてくれていたのですね。ありがとうございます。」
「別に礼はいい、お前の恋愛を叶える為にはあいつら確実に邪魔だ。それを排除していたに過ぎない。」
これまでのデートならいつも通りで良かったが……
「前のデートで新しいあいつの女に目撃されてしまった。それにより他の女達にもお前のデートが漏洩してしまった。」
「そんなっ!私のせいで守さんの努力が無駄に!」
「言っておくが、これはお前のせいじゃない。いつかはバレるとは思っていた。それがあいつの巻き込まれ体質で早まっただけだ。だから、そう自分を責めるな。」
「はい。」
少しは落ち着いたようだが、目にはまだ涙を溜めている。
「それじゃあ、これより作戦を話す。」
ありがとうございました。