まだ未定の物語
ところとごろ会話口調になってるのは、僕と弟の会話です
初めから世界は狂っていたんだ。
僕が、俺が見ているこの美しい世界はとても残酷で弱肉強食の上に成り立っている。
強いものが勝ち、弱いものが負けて僕の人としての尊厳は奪われる。
友人を殺した。あの日から。
街行く人は誰もが蔑んだ目で僕の事を見る。
頭のおかしいガキ。親が親だから仕方がない。あの目はまた人を殺す目だ。近づかない方がいい。
僕は悪くない。僕は何もしていない。
「お前は何がしたい?」
僕は何もしたくない。
「あいつが憎いんだろ?やっちまおうぜ兄貴」
憎い。そりゃ、お前を殺した奴らだ。憎くないわけがない。だけど、僕が奴らをやってしまったら僕は奴らと同類だ。どんなに辛くてもお前を殺したような卑屈な連中と同じところに立ってたまるか。
それが僕の、理多、お前を助けられなかった贖罪なんだ。
「生ぬるい事を。人を一人この世から追い出しておいて、反省すらしないようなのが居続けていいと本当に思っているのか?分かっているんだろ?心の底ではコイツらはこの世にいてはいけない存在だと」
…
「なら殺すしかねぇだろ。お前も苦しみから解放される。安心しろ兄貴。何かあった時は俺が全部罪を負ってやる。」
…ダメだ。
「焦ったいな。兄貴がやらないなら俺がこいつを殺す。少し眠っててな!!兄貴!!っ!!」
そこからの記憶はない。でも足元には血だらけで倒れている友人。いや、害虫がいた。
既に息は無く、完全に死んでいるようだった。
そして僕は、警察に捕まった。
それから2年経ち、何回も裁判が行われた後、犯行は精神疾患による無意識下で行われており、僕自身も大量の怪我を負っていたことから正当防衛として処理され、無罪が言い渡された。
そう。僕は二重人格者だ。
僕の中には3年前に殺された弟の人格がある。友人を殺した日から弟は顔を出さなくなった。これが彼の言う罪を負うと言う意味なのか、僕には計ることはできない。
僕はそれから1年精神科に入院した後、晴れて自由な身になった。
しかし、無罪といえど人を殺したことに変わりはない。社会からの目は痛かった。
正当防衛とはいえ、アイツはカッとすると殺しにくるとかほんとは正当防衛ではなく事件後に半狂乱になった僕が行った自傷だと言う人も居て、その悪評は当然企業にも届くだろう。
就職は絶望的と言った方がいい。
だから死ぬことにした。最後に家族にあってからと僕は家族を探した。
僕たちは元から家などなく家族で段ボール暮らしだった。僕はその中で食糧調達を任されていた。家族は病気で動くことができなかったからだ。
そんな事を考えていると不安になる。家族は誰かに食料をもらっていたのか。
そして、嫌な予感は的中した。
家族は、どこにもいなかった。
「ここまで来ると笑いが込み上げてくるな」
僕はナイフを思いっきり首に突き立てた。しかし、僕は怖かったのだ。結局死には至らずに気づいたら病院に運ばれており高額な手術大を請求された。
もう一度言う。この世界は狂っている。
優しい世界で生きることは大変幸せだが、同時に僕たちのような人を無視する。つまりこの優しさを手にいえるためにはある一定の地位とお金が必要だ。
その現実を突きつける。この世は優しい世界なのではなく、残酷な世界が正しいのだ。