嘘をついた
翔と茜、そして俺はよく3人で行動していた。
楽しい高校1年生だった。
出会いはごくごく普通だと思う。
まず、俺と茜が同じクラスで席が隣だった。
茜は誰とでも仲良くなれるタイプだと思う。
「今日から宜しくね!!茜って呼んでくれて良いからね!!」
「おう、宜しく。じゃあ、俺のことは秋って呼んでいいよ」
「秋って女の子みたいな名前だね(笑)」
「良く言われるよ、でも、気に入っているから良いんだけどね!!」
「そうなんだ!!改めて、秋宜しくね!!
楽しい高校生活にしよーね!!」
その日から茜とは結構話すようになった。
男友達も出来たけど、茜といる方が楽しいと思っていた時もあった。
茜も、秋といると楽でいいわ〜と言って一緒にいることが多かった。
周りからは付き合ってる噂が流れたこともあった。
そんな時だったか昼休みに一緒にご飯を食べていた時に噂について話をしたことがあった。
「茜聞きたいことあるけど良い?」
「うん、なに??」
「俺たち付き合ってるみたいだよ?」
「えっ!?!?そうなの!?!?!?
知らなかったよ(笑)」
「って噂が流れてるんだよ!!」
「あーそれね!!私も友達に良く聞かれる!!
どうする?付き合っちゃう??」
予想外の言葉だった。
「何言ってんだよ!!冗談言うのやめろよ!!」
「あはは!!バレたか冗談だよ冗談!!」
その時の茜は少し悲しい顔をしていた気がする。
高校2年生になった茜とまた同じクラスになった。
「なんでまた一緒なんだよ!!」
「あはは、凄いよね!!また宜しくね」
正直嬉しかった。
俺は茜のことが好きになっていた。
高校2年生になったから2ヶ月ぐらい経った時に、転校生がきた。
それが、翔だった。
翔の雰囲気で俺は仲良くなれるなと思った。
それは同時に茜も思ったらしい。
その日の昼休み、茜が翔を誘ってご飯食べようと言ってきた。
別に断ることはないと思ったから一緒に誘いに行くことにした。
「はじめまして!!」
「あっ、はじめまして」
少し驚いた顔をしていた。
まあそれはそうだろうな。
「ねえ、今から私たちと一緒にご飯食べに行かない?私は茜で、こっちが秋、宜しくね!!」
俺の名前を茜が紹介してくれたから俺は宜しくとだけ言っておいた。
「茜さんと秋くん。ありがとう、じゃあ、一緒に行こうかな」
「うん、よし行こう!!」
こんな感じでご飯に行くことになった。
そこから翔も一緒にいることが増えた。
俺たち3人は仲良くなった。
学校以外にも、遊園地や映画、買い物とか色々3人で行った。
俺は、翔のことを嫌いじゃなかったし、
親友と呼べるぐらい仲良くなった。
そんなある日、翔から相談があると言われ、
茜無しで屋上で会うことにした。
俺はどんな相談なのか行くまで考えていた。
好きな子でもできたのかな?
なら茜を呼んで手伝ってもらった方がいいんじゃないかな?と考えていたら屋上に着いた。
そこにはもう翔がいた。
「どうした?相談ってなに??」
「秋くん、ごめんね。その前に聞きたいことがあるんだけどいい??」
「おう、全然いいよ!」
「秋くんは、茜さんのこと女として好き?
友達とかじゃなくて恋人になりたいとか思っている??」
察しがついた。
翔は茜のことが好きなんだと。
そして、俺も茜が好きだと翔は気付いている。
多分、ここで俺は好きだよと答えると翔は諦めることを選ぶ。
なら俺の答えは決まっている。
「いや、そういう意味では好きじゃないよ?
俺は友達として好きだよ。それを聞くってことは、翔は茜のことが好きなのか?」
「そうだったの…?てっきり好きかと思ってた。うん、僕は茜さんが好きだよ。でも、秋くんが好きだったら諦めようと思ってたんだ。だから、確認したかったんだ。ごめん。」
やっぱりそうだったか。
翔は真面目な所があるから気になったから聞いたんだと思う。決して悪気がある訳ではないと思う。
「告白してみろよ、今日の帰りとかに。
俺はどっちみち今日は委員会で遅くなるから先2人で帰っててと言うつもりだったし!」
「ありがとう、秋くん。頑張るね!!」
「頑張れよ、応援してるぞ!!」
そのまま2人で握手をして教室に帰って行った。
俺は嘘をついた。
茜を好きな気持ちを押し殺した。
俺なんかより翔と付き合った方が茜が楽しいんじゃないかと思ってしまった。
放課後、教室から2人が帰って行くのを眺めていた。
茜がこっちを見て手を振ってきたから俺も振り返す。
そして、翔にも手を振った。
その日、2人は付き合った。
俺は2人に電話をした。
おめでとうや幸せにしろよとか俺を仲間外れにしないでくれよとか色々冗談混じりで話をした。
その夜、俺は1人で後悔をしていた。
茜の冗談で言った付き合っちゃうに真剣に答えていれば今の状況は変わったんじゃないかとか。屋上で好きだと伝えていれば俺が茜と付き合えていたんじゃないかとか。
自分が嫌いになる。
「高校1年生の時が1番楽しかったな…」
そんなことを呟いてベッドで横になった。
涙が止まらなかった。