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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i
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第九話 傭兵団の長と情報屋

酒場でグラントは一人の情報屋と話し合っていた。

「この情報は高いですよ?」

向かい合って座るバルガスは不敵に微笑む。

「いくらだ」

「そうですね。150ってところでしょうか」

グラントは首を振る

「高すぎる。報酬額の10分の1だぞ」

だが情報屋はグラントの嘘を見逃さない。

「嘘が下手ですねグラントさん。報酬は現状2000と聞いています。我々を情報の分野で出し抜けませんよ」

「うるさい、報酬から武器やら飯やらかかるものがたくさんあるんだ、150なんて飲めるか」

バルガスは微笑むと、

「私はかまいません、ここの獣は人気です。領主が懸賞金を高めに着けてますからね。まだあなたの隊にわたってない重要な情報があるとなれば買い手はたくさんつきます」

グラントは歯噛みする。たしかにこの獣の狩りの報償は他よりもかなり高く設定されている。

余り財政状況が芳しくないグラントの隊にとってここの狩りは絶対に他の獣狩りに横取りされるわけにはいかなかった。

そのためにグラントは隊の部下や情報屋にグラントの隊が獣をねらい、殺す準備も万全であるという噂をながさせ、他の獣狩りを牽制していた。

だがそうまでして整えた狩場も獣自体を狩れなければ意味がなかった。

獣狩りの難易度は年々上昇しており、特に戦い方が特殊になる伝承型との戦いは失敗する獣狩りも多くでていた。兵力に優れるグラントの隊とはいえど、

どこにあるかもわからない心臓探しをしながら獣と戦うのは容易ではなく、

目下最大の関心事は相手の獣が拡大型か伝承型かの特定だった。

バルガスは当然それを熟知しているので値段を吊り上げている。

「とにかくそんな額は払えねえ、90が限界だ」

バルガスは少し間をおいて切り札を出す。

「銀の爪…」

「うん?」

「知っているでしょう。各人単独で獣狩りをして、高い報酬をとる集団がいることを」

グラントは当然知っており、動向を気にしていたが、特に気になっていないふりをした

「そいつらが何だってんだ」

「領主が獣の調査の依頼を出したそうですよ」

グラントの手に力が入る。

「そんな野郎がきても、うちが先に奴を狩れば問題ない」

グラントは精いっぱいの虚勢を張る。

「知らないのですか?彼らの報酬の受取方法は前払いだ。もし調査が終わって獣狩り自体の依頼をするとなるとおそらく報酬は減るでしょうね」

「だが奴らは獣が狩れなければ報酬は戻すとも聞いたぞ」

グラントは知らないふりを続けるつもりだったがつい本音で反応してしまう。

「彼らの契約はかなり特殊なものです。契約は定めた期間の間に獣が死ななければ報酬を返すというものらしい。すなわち誰がどうやって殺すのかは問題ではないんですよ」

グラントは銀の爪と狩場が一緒になったことはなかったが、その特殊な契約内容と彼らがいかに腕が立つかというのは情報や噂でさんざん耳にしていた。

「誰が来るんだ」

「さあそこまでは私もわかりません。ですが・・・重砲剣か、双斧弓のどちらかかと」

グラントは少し思案する。バルガスは続ける

「目撃情報がちらちらとね、なんせ彼らは目立ちます」

銀の爪には基本的に使う武器に基づいた二つ名がついていて、重砲剣がレンドのことを指していた。

グラントは銀の爪の強さを十分聞いていたが、それ以上に彼が気になっていたのはその中で誰が今回の獣狩りに参加するかという事だった。

「ふん、まあだれがこようが俺たちには関係ない」

グラントは強気の姿勢を崩さないが、内心はかなり落胆していた。銀の爪の中でもバルガスが言った二人はかなり腕が立つとの評判で失敗した噂もあまり聞かない。

「そうですか、それでどうします?はらえないのならば私は引き揚げますが」

情報屋を力づくで脅すこともできるが、それをやれば今後ほかの情報屋も雇いづらくなるので

グラントは暴力的な手段に出づらかった。

「90だ。それ以上は払えない」

情報代としてはかなり破格の値段だが、グラントはここで情報を買わないことはゆるされなかった。

だがバルガスも当然食い下がる。

「140」

「100」

「130、銀の爪が来るならあなたは調査段階の時点であの獣を殺す必要がある…早く殺すにはこの情報が必要でしょう」

グラントは折れた。

「120だ、これ以上なら買わん」

「いいでしょう120だ。」

バルガスの勝ち誇った顔を苦苦しく見送った記憶を思い出し、グラントは嫌気がさしたが、

その交渉で入手した情報の質は確かに高かった。

グラントが思う拡大型への証拠としては情報は充分であり、戦いの最初にその情報に従った動きを獣が見せたので、それに従ってここまで隊を誘導してきた。

だが戦いのさなかにありグラントは相対している害獣に違和感を感じていた。

しかしここまで拡大型用の討伐の方針をとってきたグラントはもう引き返せないところまで来ており、必死にその雑念を振り払いながら隊を指揮していた。


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