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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i
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第七話 検証

レンドは担いでいた袋をおろすと、中から鉄塊を三つ取り出す。

鉄塊は各辺が50、15、30センチの直方体で、すべての大きさはどれも同じくらいだったが、それぞれ異なる箇所に突起や穴があった。

鉄塊の一つは紐が両端についており担げるようになっている。

レンドは紐付きのものと先端に穴が開いている箱の二つを縦に組み合わせた。

リコがよく見ると二つの鉄塊の突起と穴は対応するようになっている。

すると、先端の穴から金属の細い筒のようなものが突き出してくると同時にひも付きの

鉄塊の下の穴から引き金と用心金が出てくる。

「幸い的は狙いやすいな。」

そういうとレンドは、袋の中から金属の弾を一つ出す。

リコが見ていると、その金属の弾にレンドの赤い入れ墨の一部が移ったように見えた。

ひも付きの鉄塊の中に後ろの穴から入れると、槓桿をスライドさせ、弾を装填する。

「また耳ふさいどけ。」

リコは耳をふさぐ。レンドはその装置を抱え込んで獣にむけると狙いを定め、引き金を握りしめる。

「頭に当たれば振動を測りやすいな。」

レンドは引き金をひいた。

ドンという衝撃音が鳴り響き、リコだけでなく戦っている傭兵たちも害獣以外の方向から聞こえた大きな音におどろいてひるんでいた。

次の瞬間、獣に弾が着弾する。

遠距離のボウガンの攻撃にはやられているだけで特に反応がなかった獣だが、これは多少効果があったのか、その場で大きな咆哮をあげた。

「何をしたの?」

とリコが聞くと

「静かに。」

とレンドは短く言った。レンドは獣のほうに耳を傾けて集中し、何かを聞いているように見える。

リコは遠くにいる獣の様子を見ていたが、咆哮以外は特に変わったところは見つけられなかった。

だが近くにいた兵士たちは明らかに獣の異変をかんじていた。

一旦ひるみ、すぐ元の態勢に戻ろうとした獣だったがなかなかバランスが保てない、

よく見ると獣は全身震えていた。

震えが止まらず、自分の体の制御が聞かなくなった獣はまた咆哮をあげてもがいていた。

「なるほど、やはりつっかえるが、それが中心なのが気になるな。」

「何をしたの?」

「今のは特別製の弾だ、打ったところから全身に振動がつたわるようになってる。奴が単一構成かどうかは振動を俺の耳で聞くとある程度分かる。」

「どういうこと?」

獣は体の異常にきづいたのか震えを振り払おうともがいていた。

「振動が体に伝わるとき、単一構成なら途中で振動は変に途切れたり、つっかえることはない」

「じゃあつっかえたっていうのは…」

「奴は単一構造じゃないということになる。これは単純な拡大型ではありえない。」

獣は震えが収まるといったん体制を立て直し、

打ってきた方向にいるレンド達を遠くから確認すると、怒りの咆哮をあげた。

「もう一つ確認したいことがある。」

というとレンドはまた弾を袋から出し、今度は三つ装置の中につめる。

そして、興味深そうに見ているリコを引っ張り、自分と銃の後ろに隠す。

「盾がいるな。」

というと残りの一つの鉄塊の取っ手を持ち、力を入れる。

すると取っ手がついている面を中心に鉄塊が一気に展開した。

だがそれは最終的には直方体の展開図のような形にはならず、まるで盾の形のように成形されていく。最終的に大きな鉄製の盾になったが、ところどころ違う金属がついていた。

レンドはそれを二つの鉄塊からできた銃の横に取り付ける。

「これで防げれば、いいがな。」

レンドは再び構えると、咆哮を続ける獣の胸に弾を打ち込んだ。今度は三つの弾が同時に飛び出し獣に着弾する。

獣は今度は震えるでもなく、咆哮を挙げるでもなく、のたうち回る。

そして次の瞬間獣の周りの瘴気が一気に獣の中に引いていくと、また黒い稲妻を拡散させた。

「くるか?」

レンドは身構えたが、黒い稲妻はレンド達の側には来ず、グラント達のボウガンを構えた

前衛部隊のところに飛んでいく。しかし彼らも離れているので誰も黒い稲妻には当たらなかった。

「やはり範囲は限定されてるのか。だがどうしてだ。」

レンドは獣の攻撃を見て考えているようだった

「見たかったのは雷?」

「攻撃範囲と条件だな、ダメージが一定量をこえるとその時に半径10m前後にいるやつってところか、だが全員に向けてその攻撃が放出されるわけじゃない…別の条件がありそうだな。」

「いつもそんなに考えるの?」

リコは少し驚いていた。

「まだ全然材料が足りない、奴が伝承型なのかですら不透明だ。」

「なんで?さっき拡大じゃないって言ってたじゃない。」

「単純な拡大型じゃないことがわかっただけだ。伝承型だと決まったわけじゃない。」

「拡大じゃないなら伝承じゃないの?」

「あの分類はな、基本構造に過ぎない、実際今害獣として暴れ、かつ生き残ってる物の多くは基本構造をふまえて、それをさらに発展させたもののほうが多い。」

「発展?」

「伝承型も拡大型も俺たち人間が勝手に分けただけにすぎない。奴らの構造はまだまだ未知数なんだよ。」

グラントは獣が悶えている間、思わぬ方向からの攻撃に少し驚いていた。


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