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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i
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第二章 森での戦い 第五話 黒い獣

カルケルはレンドが去ったことを確認するとおびえながらリコに話しかける。

「おめえ無事か銀の爪はなんだっておめえに用があったんだ?」

リコは迷ったが嘘をつくことに決めた。

「わからないわ。でも人違いだったみたい。」

「たのむぜ あんな奴に目をつけられたんじゃおちおち寝られやしねえ。」

リコはカルケルに連れられて、カルケルの家へと向かう。

家に着くとカルケルの奥さんが二人を出迎える。

突然の出来事にカルケルの妻はずいぶんと驚き、突然小さい子を連れてくるなんてとカルケルをなじっていたが、心なしか表情は嬉しそうで、家に入るのを少し遠慮していたリコを早く入りな、と中に招き入れた。

一息ついた後リコは、家の中にいくつかぬいぐるみや子供用の服があるのに気が付き、カルケルに尋ねる。

「ここには子供がいたの?」

それを聞かれると、カルケルは悲しそうな表情をうかべていう、

「ああ、ちょうどお前さんくらいの年の女の子がな。」

「その子は?今はここにはいないの?」

「ああ…ちょうど2年ほど前になるか、流行り病でな。わしらには何もできなんだ。かわいそうに。」

そういうとカルケルはギューッと拳を握りしめる。その後ろからカルケルの妻は彼をゆっくりと抱きしめる。

リコはなぜカルケルが初対面のリコに親切にしてくれるのか、なんとなくわかった気がした。

次の朝、リコは早くからレンドに言われた場所に行ってみた。カルケルが心配して地図を持たせてくれたので、リコはあまり迷わずに済んだ。

クンクラの森はリクソスの町から少し歩いたところにある。

街はずれから草原を10分ほど歩くと森の入り口が見えてきた。

そこでリコはレンドを見つける。レンドはまだ森に入っておらず森のから少し離れた木の後ろにいた。

レンドはリコを見つけるとリコを引っ張って森の入り口から遠ざかった。

「どこへ行くの?獣は?」

「今にわかる」

そういうとレンドは森の入り口から少し離れた茂みの裏に座った。

リコはレンドに合わせて座った。

しばらくして昼過ぎになるとリクソスの町の方角から大勢の男たちが森に向かって現れる。

グラントはかなりの頭数をそろえているようで、その数はおよそ100近くにもなっていた。

前方にいる男は皆ボウガンのような武器を携帯しており、森の入り口を半円形に囲んでいる。

「武器の選択は悪くないな、害獣の多くは近接にかなり強い。」

「獣は?どこ?」

「森の奥を根城にしているらしいが…どうやら おでましのようだ。」

森の入り口から黒い瘴気が漏れ出してきていた。

その奥から足音とともに黒い獣が姿をあらわす。

獣は全長は5メートル弱といったところで、長い尾に足は六本あり、ゆっくりと森から這い出してくる。前足と後ろ足に比べ真ん中の足は引きずったようにほかの足とリズムがあっていなかった。

リコは獣を見てはじめ、野犬を大きくしたようだと思った。

獣の顔には三つの目がついており、一番上の目が不意にリコのいる遠くの茂みをジロっと見つめる。

リコはそのあまりの迫力に恐れをなして茂みの裏に隠れた。

瘴気をまき散らした獣はその巨体でゆっくりと前進する。周りを取り囲むグラント達をみわたすと、獣は立ち止って首を三回ふった。

「耳をふさげ。」

レンドがそういうやいなや獣は甲高い雄たけびを上げた。リコはギリギリで耳をふさいだが、一瞬だけその雄たけびが耳に入ってしまい、そのあまりの音圧に頭がくらくらしていた。

「うるさくないの?」

最もダメージを受けるであろうレンドがあまりに平気そうな顔をしているので、リコはかなり不思議に感じた。

その視線に気づきレンドが答える。

「俺の耳は聞くものを選べるんだ。」

「選ぶ?」

だがレンドはそれ以上は教えてくれず。

「見なくていいのか、始まるぞ。」

と獣とグラント達の戦いを見るように促す。

グラント達は多くが獣の咆哮に慣れているようで、みな大して動じてはいなかった。

グラントが手を掲げると、前方の男たちがボウガンを一斉に獣めがけて構える。

「やれ」

グラントが手を下げるとみな獣に集中してボウガンを打ち込んでいく。

30人余りの矢の嵐にたまらず獣がのけぞる。

「効いてるみたい。このまま倒しちゃうんじゃない?」

攻撃に耐えかねている獣を見てリコが言う。だがレンドは疑わしいといわんばかりの顔で

「だといいがな。」

と返すのみだった。

獣は最初こそ痛みに悶えていたが、途中で動かなくなりうずくまった。

グラントが

「やめ」

と合図を出すと。皆打ち方をやめ、前方にいる傭兵の何人かが武器を剣にもちかえた。

レンドが意図を解説する。

「とどめを刺す気だろうな。弱れば近接武器も効果的だ。」

前衛部隊が一斉に獣に襲い掛かる。動けない、獣の背中や腹をめった刺しにしていく。

あまりに抵抗しない獣をみて段々リコは違和感をおぼえていた。

「ねえなんで、反撃しないの?死んじゃったの?」

「いや、死ねば瘴気が消えるはずだ。みてみろ。」

獣周りから出る瘴気は収まるどころか、あふれ出し続けており、徐々に前衛のすべての足元に到達しかかっていた

そしてまさにグラント達のいる中ほどまでさしかかろうというタイミングで獣はすうと息を大きく吸い込んだ。と同時に広範囲にわたっていた瘴気が一気に獣の下に収束する。異変を感じた前衛部隊の兵士が獣から離れようとしたがもう遅かった。

獣はまた咆哮を上げた。然し今回はリコが耳をふさがずともきいていれられるくらいの音圧だった。そして先ほどまで立ち込めていた瘴気のあたりまで黒い稲妻のようなものが獣の体から放出される。後方にいたグラント達にまでは届かなかったが、

そのあまりの衝撃にグラント達はみなひるみ、放出された黒い稲妻をまともに食らった前衛の一部はのきなみ倒れこんで死んでいた。



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