表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/80

第四十六話 伝承と医療記録

レンドはそのころ、リコと宿舎にいた。

リコは今日もお前に働いてもらうとレンドに予告されていたので、少し緊張していた。

レンドはまず犬の伝承ついてリコに質問を始めた。

「この付近、いやこの地区全体でいい、犬に関する伝承や言い伝えはあるか」

リコは『叡智の記録』への接続を始める。対象範囲が広い分、少し時間がかかる。

「そうね、この地区の周りはあまりないみたい。でも少し離れたバールの街には犬を守り神みたいに扱う伝承があるわね」

「バールか、少し離れすぎているな、その犬の伝承の内容は?」

リコはまた眼を閉じてより詳細な記録を探し出す

「バールは羊を放牧することで有名だけど。その時に羊飼いが使うのが犬なのね。だから犬が守り神みたいになるんだって。神としての姿は…普通の犬とあまり変わらないとされているわ。でも神々しい光を帯びるそうよ。犬の銅像を祭っている祠も街にあってみんなそこに捧げものをするらしいわ。」

レンドは考え込むように顎をかく。

「バールとリクソスは地区こそ同一だが位置はヘルナンドのさらに先になる。直接地続きじゃないのが気になるところだ。そして姿、確かに犬なことは共通しているが、奴の姿は単純な犬そのものじゃない。だが調べてみる価値はあるな。それ以外に犬はないか?イパルの街の周辺でもいい」

リコは探してみたが、あまり見つからない。

「イパルの街の周りは龍の伝承くらいしかないわね」

「なるほど、まあそうだろうな。カリヤの国で犬の伝承などそうそう聞かない。」

「あとは?」

レンドは少し考えてから答える。

「いや、十分だ。俺はこれからバールへと向かう」

リコは急な展開に少し驚く。

「それは確認しにいくの?」

「ああ、確認するのは目撃情報だがな。可能性は薄いが、漏らすとめんどくさい。こういうところは詰めていく必要がある」

そういうとレンドはリコを連れてバールへと向かった。

一方ピントは相変わらず捕らえられたままだった。グラント達は定期的に様子を見に来ていたが、ピントは特に態度は変えないままだった。

ピントが捕まってから、グラント達と二度目の戦いを挟みほとんど1週間が経とうとしていた。

本来であれば両親が血眼になって探しているであろうが、廃墟の工事に参加することを決めてから、ピントはもう家を出ていたため、おそらく両親が心配して探しに来ることはないと感じていた。

親方に無理を言って工事の手伝いに参加していた手前、みんなに心配をかけてしまうのが彼の気がかりだった。

一方でピントはこの地下室に少し驚いていた。

ブレストにはたまにピントも見てもらっていたが、その病室の地下に地下室があるなんてピントは知らなかったからである。

様子を見るに、グラント達は許可を取らず、勝手にこの場所を見つけてピントにあてがっていると思われた。

中は薬の匂いがたまっていて、あまりいい匂いとは言えなかった。

ピントは以前は椅子に縛られていたが、当分は逃げないだろうということで手だけ後ろでつながれている状態だった。

部屋の奥には書類が山積みになっていたので、やることがなかったピントはおもむろにそれを取ってみることにした。

~~~医療記録~~~

28歳

女性

体重54パルマ

症状熱、倦怠感、赤い斑点(顔、背中、腹)

病歴 特になし

備考 デルムタ先生からの紹介

・・・・

~~~~~~

ピントは退屈だったのもあり、いくつかの資料を続けて見てみた。

医療記録と書かれた資料の大半は流行り病の者が多かった。

リクソスの街に限らず、この地区では冬にはやり病が起きる。だが最近はデルムタ先生がいい治療法を見つけ大半は助かるようになっていた。

だが子供や、もともと体の弱かったお年寄り達は命を落とすことが多かった。

医療記録にはそれぞれ右端に色がついていた。

黒や赤、青もあった。

ピントは見ていくうちにそれが何となく患者の状態を表したものであることに気づいた。

黒とされた記録の多くはお年寄りで、もう亡くなっていて、青の者は比較的若く、ピントも村でよく合う人間だったからである。

おそらく黒は死を意味するのだろうなとピントは考えた。

「黒が死で、青は生きる。とすると赤は…」

赤の人の何人かはピントは最近あったことがあった。

そして医療記録をよく見ると重症になったが、回復というような記述が備考に書いてあることが多かった。

ピントはこのことから、おそらくこれは病の程度が重かった者にこれを割り当てているのだと思った。

暇つぶしにしては面白い作業だったので、そのまま記録片っ端から見ていくと、一つおかしな記録があった。

~~~医療記録~~~

7歳

女性

体重23パルマ

症状熱、赤い斑点(顔、背中、腹)

病歴 特になし

備考デルムタ先生からの紹介

・・・・

~~~~~~

一見すると特に何もおかしなことはないのだが、そこにはほかの資料に書いてあった色がついていなかったのである。

なぜこれだけ色がないのだろうとピントは考えたが、特に理由は思い浮かばなかった。

医療記録には治療を受けたタイミングも書かれていた。

「これは…三年前の冬か」

ピントが他の記録と比べて違和感があったのは他にも理由がある。

名前が書かれていないのである。

他のにはすべて名前が書かれているのに。

ピントは何やらまずいものを覗いている気分になってきていた。

名前がなかったのでちょうど三年前に病にかかった子を思い出そうとしたが、いかんせんはやり病なのでかかった子も多く、全てを思い出すのは厳しかった。

規則性を見つけ出そうとほかの資料も見たが色が書いていないのはそれだけだったのでピントはお手上げだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ