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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第四十三話 祭りと別れ

祭りの会場に二人が付くと街のみんなは二人を見かけて噂話を始めた。

「見て?サルドさんとあれはクレアよ!」

噂好きの女たちはすぐに呼応してはやし立てる。

「やっぱり、リクードより領主の一人息子をとったのね。そうなると思ってたわ」

「そうねえ…リクードには気の毒だけど、大工の息子と将来の領主じゃねえ」

クレアは今すぐにでも全員の前でそれを否定したい衝動を必死に抑えていた。

祭りはもう始まっており、祭場の中心では町の音楽隊が楽器で音楽を奏でている。

その周りで人々が踊っているような状況だった。

若者たちは皆思い思いの相手と祭りを楽しんでいたが、その中でクレアだけがこの空間になじめないでいた。

踊りを踊っていても、リクードへの心配と皆の視線が気になるだけだった。

サルドはそんなクレアを見て見ぬふりをしていた。

そして、祭りも佳境に差し掛かると、サルドがみんなの注目を集めた。

クレアは端に逃げようとしたが、サルドはクレアの腕をつかんで離さない。

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございました。楽しんでいただけましたか?」

観衆が呼応して反応する。

「私たちの街に移住者が来ていてだくようになって5年がたとうとしてます。今日は皆さんにさらに交流を深めていただきたたく、この場をご用意させていただきました」

サルドが何を言うのか観衆は期待して彼の一挙一同に集中していく。

「生まれた場所の違いがなんだというのでしょうか。そんなものはお互いを思いやる気持ちや尊敬で越えていけます。そう僕たちのように」

そういうとサルドはクレアの腕を引っ張りみんなの前で高々と突き上げた。

そのタイミングでまた音楽が流れ始め、観衆は興奮した空気のまま踊りに戻っていった。

クレアは最悪の気分だった。

サルドにまんまとしてやられて、これで街の人々は皆サルドとクレアの関係を信じて公然と認めた形になってしまったからである。

そして観衆の興奮冷めやらぬ中、祭りは終わりを迎えた。

クレアは皆が帰る中、サルドを問い詰めた。

「早く彼の所に連れて行って」

サルドはクレアを抑えながら話す。

「落ち着いてください。明日の早朝、父の館に一人で来てください。誰にも見られないように。門の前で待ち合わせましょう」

そういうとサルドはその場を後にした。

残されたクレアに街の女集がサルドとのことを聞こうと群がるが、クレアはそれをはねのけて家に戻った。

そして次の日、クレアはこっそりと領主の館の前まで行くと、サルドが裏手に回るように指示をしていた。

そこで裏手に回ると、館の裏の雑木林の近くにサルドとリクードの姿があった。

リクードは少しやつれていたが、体は元気そうだった。

クレアは会うなりリクードを抱きしめた。

「心配かけて…どこにいっていたの?」

リクードはクレアの勢いに戸惑っていたが悲しい笑みを浮かべるばかりだった。

そしてその悲しい表情のまま抱きしめたクレアの腕をゆっくりと離すと。

「もう会えない」

と短くそういった。クレアは気が動転して、涙を流した。

「祭りの約束を破っておいて、今度は会えないですって…?」

クレアはいろいろな感情が入り混じって制御が付かない状態になっていた。

震えるクレアの肩をリクードが支える。

「全部みんなのためだ」

リクードは父に似て多くを語らない性格だった。

そんな無口だが仕事やイパルの街の民の皆の事を思って行動する実直な姿勢にクレアはひかれたのだった。

だが今はそんな彼の性格が疎ましく思えた。あまりに説明が足りなかったからである。

「それってどういうこと?」

リクードはこたえず、かわりにサルドが答えた。

「前も言ったでしょう。彼には役割があると」

クレアは怒ってサルドを睨みつける

「あなたに聞いてない!…そうなの?リクード」

リクードはうなずいた。

「俺にしかできないんだ」

「仮にそうだとしてもなんで会えないの?」

この質問には答えられないのかサルドもリクードも答えようとはしなかった。

「そんな説明で分かれったって無理よ!」

クレアの怒りはしばらく収まらなかった。

クレアの怒りと涙が収まったころ、リクードは

「君には幸せになってほしい」

とそういった。

そこでクレアが言い返そうとしたが、サルドがそれを止めた。

「残念ですがクレアさん。もう時間です。ここまでにしましょう」

「待って!!まだ何も解決なんてしていない」

だがサルドはクレアをリクードから引き離した。

リクードは

「遠い地区に行くことになるから探すのもやめてほしい」

とそういってクレアとサルドの元を離れて領主の館に戻っていった。

クレアが行ってしまうとクレアはサルドに当たり散らすが、なぜかサルドも悲しそうな表情をうかべたまま、クレアの叱責を受け続けていた。

その次の日からリクードがクレアの前に姿を現すことはなかった。

ここまでが祭りの前後で起きた出来事である。



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