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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第七章 動き出す民 第四十二話 祭りの誘い

クレアは領主の館につくと、召使たちに部屋へ案内された。

領主の家はとても広くいくつも部屋があった。

クレアはその中の2階の一室に通されると、召使たちが、クレアの荷物をベッドのわきに荷物を置いた。

「ありがとう」

クレアが召使に礼を言ったが、召使は不愛想にお辞儀をして去っていった。

クレアは彼女の態度に少々驚いた。

確かにクレアが良家の出ではないことは有名なことで、召使側からすれば、自分達の主人に色目を使って取り入ったというように思われていても仕方がないことは分かる。

だがだとしてもあまりに不愛想なのではないかと思ってしまった。

だがクレアにはあまりそこを気にする余裕はなく、とりあえず荷物をベットの上に広げると、一つの紙を取り出した。

そこには領主の家の設計図が書いてあった。

クレアはそれと自分の今いる部屋を見比べる。

「館は3階まである、部屋は各階ごとに10弱程度…それに別館と馬小屋…全部見るのは骨が折れるわね」

クレアが領主の家に来たのは領主の館、中身を調べるためだった。

母の悲しそうな表情も領主の不快な顔を気にしなかったのもすべてはこの一点に尽きた。

だがなぜクレアがそこまでして領主の店を調べたいのかにはある理由があった。

それはちょうど3年前のあの祭りの日までさかのぼる。

クレアはその日、リクードと待ち合わせをして二人で祭りに出かけるはずだった。

領主の息子であるサルドからの提案…二人で祭りに出るというのは当然断っていた。

そのことをリクードに告げたときになぜか彼は少し悲しそうな顔をしており、

それをクレアは少し不振がったが、特に気にせずいつも通り日々を過ごしていた。

そして当日、いつものように彼女はクンクラの森の前にある少し大きな丘でリクードを待っていた。

だがいつもなら待ち合わせの少し前に現れて、本を読んでいる彼が、今日は待てども待てども現れない。

クレアは彼に何かあったのかと段々不安になってきていた。

祭りの時間は刻刻と迫っていたが、リクードは一行に現れないので、クレアは一度リクードの家に向かうことにした。

リクードの家に着いて、クレアはドアをノックする。

そこにはなぜかサルドがクレアを待ち構えていた。

「なぜあなたがここに?」

サルドは不敵な笑みを浮かべる。

「クレアさんちょうどいいところにいらっしゃった。実はリクードからこんなものをいただきましてね」

それは手紙だった。クレアが確認するとたしかにそれはリクードの字に見えた。

中身には、

『親愛なるクレア。大変申し訳ないが、今日の祭りには僕はいけない。

街のため、そして僕たち移住者のための重要な役割をすることを決めたからだ。

その内容も君にはここでいうことはできないけど、いつか君に伝えらると思う。

とりあえず、祭りにはサルドさんと出てほしい。それが最終的には僕たちやイパルの街の民のためになる』

手紙の内容を読んでクレアはサルドを問い詰めた。

「これは一体どういうこと?」

「読んでの通りだよ。リクード君はリクソスや君たち移住者たちのための重要な役割を買って出てくれたんだ」

「ばかばかしい。直接彼と話をさせて」

そういってクレアはサルドを押しのけるとドアを何べんもノックする。

すると中からリクードの父が出てきた。

「あ、リクードのお父さん。こんにちは。リクードはいませんか?」

だがリクードの父の表情は憔悴しきっていた。そして

「ここにはいない」

というと、ドアを閉めてしまった。

クレアはリクードの父にそこまでひどい態度を取られたことがなかったので、衝撃を受けた。

茫然とするクレアにサルドが話しかける。

「クレアさん、お気持ちはわかります」

クレアはキッとサルドを睨む。

「あなたね?何をしたのリクードに…彼に合わせて!」

サルドは悲しそうな表情をうかべる。

「それはできません。彼は自分からこの役割を受け入れている。そしていくらあなたとはいえ内容をあなたに伝えることはできません」

クレアはそれを聞いても落ち着いてはいられなかった。

リクードの父の態度やこの手紙、そしてサルドの言い方からもリクードが何かまずいことに巻き込まれているのは明白だった。

「そんな嘘を信じられるわけないでしょう?いいから早く彼と話をさせて」

サルドはため息をつくとこういった。

「わかりました。特別に何とかしましょう。しかし、かわりに私と祭りに出ていただきます」

クレアはあまりのことに口がきけないでいた。

「なんですって?なんで私があなたと祭りに出なければならないの?」

サルドは続ける。

「あなたと私が一緒に出るのが移住者とそしてリクソスにとってはとても大事なことなのです。リクードさんもこの件は承知をしている」

クレアは怒りで震えたが、リクードと会うために何が最善かを必死で考えた。

「信用できないわ。こんな口約束、先に彼と合わせて話をさせてくれない限りはあなたと祭りに出るなんて考えられない」

サルドはため息をつく。

「それだけはどうしてもできないのです。それにこの機会を逃すと、彼には二度と会えなくなるかもしれません」

クレアは驚いた。

「どういうこと?彼に何をさせる気なの?」

サルド自身も苦しい表情をしていることにクレアは気づいた。

「お願いします。あなたがリクードさんを愛しているのは知っています。私はあなたとすぐ添い遂げたいわけではないんです。ただどうしてもこの祭りだけは私と出ていただきたい」

基本的にクレアはサルドのことを信頼していなかったが、彼の苦しい表情だけはなぜか嘘をついているように見えなかった。

それに今はとりあえずリクードといったん会うことが先決だったのでクレアはこの提案をいったん飲むことにした。


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