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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i
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第四話 入れ墨の男と少女の約束

リコは観念した。あの時緊張していたリコは男たちに見つめられたときにとっさに飲み物の話題で話しかけてしまったことを思い出す。

しかし、成果は十分だと彼女は感じていた。

少し間をおいてリコは問い返す。

「それがあなたの力なのね、あなたは特別な耳を授かってる。」

「手の込んだことを仕掛けた奴がいると思ったが、こんなガキとはな。聞きたいのは二つだ。まず一つ目は、なぜあんなことを仕掛けた。」

「あなたの力を知りたかったの。それにはああするしかなかった。」

「俺の力をなぜ知りたい?」

リコは深呼吸をする。ここからが肝心だった。

「私は記録師だから、銀の爪に関する詳しい記録は少ないの。だから私は記録師の長に命じられて、あなたの力を細かく知る必要があったの。」

言われて入れ墨の男は疑う表情をした。

「お前が記録師だと?こんな年でまして、女の記録師なんて聞いたこともない。」

リコはそう言われ慣れているのか、平然と返す。

「たしかにあたしより前にはいないらしいわね。でもあたしは確かに記録師よ」

レンドは疑った視線を変えない

「お前が記録師だという証をみせてみろ。」

リコは戸惑う。証と言われても、記録師はとくに特定の称号や紋章を持つわけではない。

「ええと、ならあなたの生まれた町を教えて、記録師は町の言い伝えや、伝承、知恵をできうる限り受け継ぐ、今日初めて会ってまだあなたの名前も知らないけれど、生まれ育った町を教えてくれればきっと私はその町の伝承を答えられるわ。」

入れ墨の男は考え込む。そしてこういった。

「カリアの国にラスという地名がある。そこの伝承をなんでもいい、言ってみろ。」

リコは目を閉じる。

「ラス、ね少し待って。」

そしてしばらくしてこう答える。

「これはひっかけね。カリアの国に今ラスという地名はない…でも伝承の中になら、その記録があるわね。リシという町の言い伝えの中にラスという地名が出てくるわ。」

それを聞くと、入れ墨の男は驚いたと同時に、昔を懐かしむようなひどく切ない表情を浮かべた。そして、

「記録師というのが本当なことは分かった。」

と一言告げた。

リコは入れ墨の男の表情が気になったが記録師であることがわかってもらえてほっとした。

入れ墨の男は一呼吸置くと質問を再開する。

「もう一つ聞きたいことがある。あの依頼状だ。多少、いじってはあるがあれは確かに俺達にあてたものだ。あれをどこで手に入れた。」

リコはまた困った表情を浮かべる。

「どうしても今はそれは言えないの。でもあなたにはいつか教えれると思う。そこまで待ってほしいの。」

「それで俺が引き下がると?」

「ううん、でももしあなたが私を見つけたらこれを渡すようにいわれている。」

そういうとリコは首にかけているペンダントを入れ墨の男に手渡す。

ペンダントはロケット式になっていて中が開けられるようになっていた。

入れ墨の男はペンダントをふって中の音を聞いたりして警戒している様子だったが、ついに中身を空けて確認する。

彼は少し驚いた表情を浮かべてリコを見返す。

リコからそのペンダントの中身はよく見えなかった。

「あたしも中身は知らない、あなたに渡すことだけが決まっていたの。それ以外は何も話せないわ。」

入れ墨の男はまだ何か聞きたいことがある様子だったが、それをなぜかリコに聞くことはなかった。

そんな様子をみてリコが尋ねる。

「あなたの話はそれで終わり?」

「俺の力の話は他言無用だ。情報収集がやりづらくなる。」

「耳がいいこと?」

「ああ、全部の会話を聞かれてしかも記録されてる酒場では誰も飲まねえ。」

今度はリコが逆に提案する。

「いいよ。でもその代わりに私をあなたの仕事に連れて行って。」

これに入れ墨の男は笑って返す。

「調子に乗るな、今すぐ殺されないだけ、ありがたいと思え。」

そういって入れ墨の男は行こうとするが、

リコは呼び止める。

「あなたの仕事に私は役にたつはず。それはさっきわかったでしょ?」

入れ墨の男は立ち止まる。

「戦いでは役に立たないけど、伝承なら、あなたの役に立てるはず、害獣を倒すにはそれが必要なはずよ。」

入れ墨の男は答える。

「ずいぶんと獣狩りに詳しいらしい。獣には会ったこともないんじゃなかったか。」

「あなたの邪魔はしない、ただ記録させてほしいの。」

入れ墨の男はあきらめた表情になる。

「邪魔したら、すぐ消えてもらうからな。それともう一つ条件がある。記録師は記録を補完するとき、だれが見ていい記録にするか選べるようになっているはずだ。」

リコはうなずく。

「じゃあ銀の爪に関する記録を見れるのは、銀の爪だけにしてくれ、銀の爪が記録師に頼んだ時だけに。」

「わかった。」

「ねえ、名前は?あたしはリコあなたの名前を教えて。」

「俺はレンドだ。」

「レンド、よろしくね。」

リコの笑顔を見てレンドは自分が年端もいかぬ少女にしてやられたことを再認識すると、ため息をつく。

「グラント、明日獣倒すって言っていたけどいいの?先こされちゃうよ?」

「あいつらは勘違いしてるがな、俺はまだ正式にこの依頼を承諾したわけじゃない。

今はまだ調査段階なんだ。調査で俺がやるべきだと思えば引き受けるけどな。」

「何もしないの?」

「明日は奴のお手並み拝見だ。グラントが倒してしまうようなら、調査の手間も省ける。」

「どこに行けばいいの?」

「クンクラの森の入り口だ。行き方はせいぜいカルケルにでも聞くんだな。」

そういうとレンドは去ってった。




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