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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第三十一話 第三討伐隊隊長の苦悩

いまからちょうど3か月前、ベルグールは帝国の上層部に呼び出された。

上層部の部屋に通されると、普段あまりお目にかかれないような幹部たちが、ベルグールを迎え入れる。

「第三討伐隊隊長ベルグールです」

「入り給え」

ベルグールが入ると一人の幹部がしゃべりだした。

「君に依頼したい件がある」

ベルグールは少し警戒した。

幹部がここまでそろい踏みで自分に依頼してくるとすればそれはかなり重要な案件に違いないからである。

「どんな内容でしょうか」

ベルグールの問いに一人の幹部が答える。

「リクソスの件だ」

討伐隊は各地の獣の発生状況をある程度把握はしているため、リクソスで獣が一体、出てきているのも知っていた。

「リクソス…ですか、であれば第一番隊の方が位置的には近いのでは?」

ベルグールは少し苦々しい表情を浮かべる。1番隊の話をするのをベルグールはある理由から嫌っていた。

だが幹部は顔を見合わせると、

「それには及ばない、君で十分対処できるはずだ。」

と告げた。この上層部の言い方が、ベルグールは少し引っかかった。

「わからないですね…皆さんが集まるような重要な依頼ならなおのこと1番隊がいいのでは?」

一人の幹部が微笑む

「今回は特殊な事例なんだ。あまり目立った動きをしたくない、だから君が適任なんだよ」

かなり鼻につく言い方だったが、ベルグールは言い返さなかった。

確かに自分達3番隊に比べると1番隊は目立つ、それはひとえに隊長であるゼウルに起因する。

「君もわかるだろう。確かに奴は腕は他の追随を許さないが、戦い方が特殊だ…それゆえにかなり目立つ…今回はそれはあまりよろしくないんだ」

ベルグールはここでようやく事態を何となく把握した。

今回の獣の存在をあまり帝国は公にしたくない、それゆえ

わざわざ地区外の3番隊を遠征に使わせているのだ。

そこまでわかればベルグールにあまり拒む気持ちは生まれなかった。

「わかりました、引き受けましょう」

その言葉に幹部は満足そうにうなずいた。

「助かるよ、きっと君ならすぐ奴を葬れるはずだ」

そういわれて送り出されたがだがいざ獣と戦ってみると、ベルグールの予想は簡単に裏切られた。この獣は倒せそうでなかなか倒せない。

ベルグールは獣の特性をみて、最初から獣が伝承型ではないかとあたりをつけて狩りに臨んでいたが、獣自身が全く動かないため心臓部のあたりをつけづらかった。

何度か反応を見るために攻撃を重ねてみたが、グラント同様、雷の攻撃と、時折くる豹変した獣の攻撃に、部隊は混乱を余儀なくされていた。

相手が拡大型か伝承型なのかの判断ですらベルグールは自信を持てなくなってきており、

帝国に一時撤退する瀬戸際まで来ていた。

そんな時に同地区の情報屋から、グラントが心臓部のありかを見つけたらしいという情報をつかんだのであった。

これにかけるしかなかったベルグールは帝国から即座に増援を頼んでグラントを張り、一気に肩を付けられるところまではおぜん立てしたのだった。

「意外と簡単に引いたな、グラントの奴…まあ確かに手負いで俺達とやって勝ったところで獣に勝つ可能性は低い…当然の決断か」

そう呟きながら、ベルグールは討伐隊に心臓部の攻撃を命じた。

討伐隊の前衛部隊が心臓に剣を突き刺していく。

「これでようやく終わりだ」

だが心臓部の鼓動は止まらなかった。

「何をしてる。どんどん切りつけろ」

だがいくら切り付けても心臓の鼓動止まらなかった。

むしろ切りつけていくほど鼓動が早くなっていっているように見え、討伐隊の間に徐々に動揺が広がった。

「隊長…これ」

隊員の一人が焦りだす。

「これは…瘴気だと?」

見ると心臓部から徐々に黒い瘴気があふれ出し始めていた。

この光景に伝承型と何度か渡り合ってきたベルグールでさえかなり混乱した。

「どういうことだ?心臓部から瘴気がでるなんて。」

討伐隊の何人かが警戒して、攻撃をやめようとする。

だがベルグールはここで引くわけにはいかなかった。

「攻撃をやめるな!!ここで決めろ」

ベルグールはこの瘴気は相手のブラフだと思っていた。

今までの伝承型との戦いは、心臓部をみつければ、白い獣以外は大体が戦いの終わりを意味していたからだ。

目の前の勝利にベルグールの視野は狭まっていた。

だが次の瞬間、心臓部に瘴気が吸い込まれた。

討伐隊は皆身構えたが、一瞬遅く、前と同じように黒い雷が討伐隊の前衛に襲い掛かる。

ベルグールは後方で指示を出しているため難を逃れたが、前衛部隊はほぼ壊滅していた。


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