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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第五章 二度目の戦い 第三十話 帝国の討伐隊

グラントの隊はあくる日の朝、大勢を連れて、贄の木の探索へと向かった。

グラント自身は車いすに乗って、それを部下に運ばせていた。

クンクラの森はかなり広かったが、贄の木自体がそこまで数が多いわけではないので、捜索自体はそこまで難航しないだろう、とグラントは予想していた。

それよりグラントが恐れていたのは獣が直接隊に襲い掛かってくることだったので、何人かの部下に獣を見張らせ、グラント達の隊に近づいてくるようなら、合図を出させるようにしていた。

心臓部のみの相手ならまだしも、怪我をしたグラントをかばわせながら、獣とも戦う気はグラントにはなかった。

7本目の贄の木にグラント達が到着したころ、

獣を見張っていた部下たちは、獣の様子が少し変わっていることに気づいた。

先ほどまで全く微動だにせず、寝転がっていたが、何かを警戒しているのか、息が荒くなっていた。

部下の一人が獣を顎で指して、しゃべりだす。

「気づいているのかなこいつ…」

言われた部下は首をかしげながら答える。

「どうだろうな、心臓への脅威には獣は気づくって噂はきいたことあるけど」

「まあ気のせいだろ。狩りに気づいたとしても俺たちが狙われることはねえさ」

二人は笑いながら、獣の様子を見ていた。

グラントは贄の木を見渡しながら、他の贄の木を見つけた時と同様に部下に周りを掘るように命令をだす。

レイル達は命令に従いあたりを掘っていく、

いくつか穴を掘り進めたあたりで、一人の部下のシャベルが何かに突き当たった音がした。

「これは…」

傭兵たちがその周りを掘り返していくと、一つの白い球体がそこにあった。

球体は真白で中心のみが紫に光っていた。

「どうやら今回は嘘じゃないようだな」

グラントは連れてきたピントを見ながら微笑んだ。

球体はドクドクと脈打っており、時折光を発している。

グラント達は周りを取り囲む。

すると突然、グラント達の後ろから兵がぞろぞろと現れだした。

「なんだこいつら…」

レイルは剣をぬいて突然現れた兵士たちに向けた。

兵士たちの鎧の胸には帝国の印を表す鳥の紋章が刻まれている。

「帝国の討伐隊の紋章…ベルグールか」

グラントがつぶやく。

兵たちの後ろから勝ち誇った顔で討伐隊の隊長ベルグールが現れた。

「ご苦労だったな。グラント」

グラントが言い返す。

「なんのようだベルグール。お前らは負けてこの件からは手を引いたもんだと思っていたけどな」

ベルグールは笑いながら返す。

「その予定だったが…。昨晩お前らが、心臓部にかかわる情報を見つけたと聞いてな…

付いてきてみたら案の定だ」

グラントは周りを見渡す。

ベルグールは帝国から増援を要請したようで、かなりの数の兵隊を集めていた。

「ここの獣はなるべく討伐隊が始末するように上から言われていてな…悪いがここは俺たちに譲ってもらうぜ」

グラント達は先の戦闘で兵力を削られており、多勢に無勢は明白だった。

「グラントさん…!」

レイルはすがるようにグラントの指示を待つ。

「まったく、こざかしいな相変わらず帝国のやり方は…」

グラントはそう言いながら空中を少し見た。

そして改めてベルグールの隊をみると諦めたように全体に撤退の指示を出した。

部下たちはその指示に従い、帝国の兵士を睨みつけながらその場を後にした。

帝国の兵と少し離れると、レイルはどうしても納得できない様子でグラントに説明を求める。

「どうしてひくんですか?ここであいつらに手柄を取られてもいいっていうんで?」

グラントは撤退している部隊を途中で止める。

「ベルグールに一枚やられたのは腹が立つがある意味ラッキーだ。」

レイルはグラントの言っている意味が分からず聞き返す。

「どういうことです?」

「今回はベルグールが先陣を切ってくれる。何か危うい罠があってもな。それに見てみろ」

そういうとグラントは空を指さした。

レイルは言われて、空を見ると納得した表情になった。

空には部下と示し合わせていた色のついた煙が上がっている。

その後グラントは隊を討伐隊から少し離れた位置に陣取らせ討伐隊から気づかれないくらいの位置を保った。

ベルグールはグラントが引いていったのを見て少しほっとしながら討伐隊に指示を出す。


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