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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第二十九話 感覚共有

一方レンドとリコは街へ向かって歩いていた。

リコは耳に手を当てていて何かを聞いている様子だったが、終わると手を耳から離した。するとリコの耳から入れ墨がレンドの手に移動した。

レンドは一言。

「手強いな、製作者は」

とつぶやいた。リコは

「これすごいね。ほんとにすぐそこにいるみたいに聞こえる」

とレンドにいった。

「耳の力は共有することもできる、あまりやらないがな…今回は入れ墨を使ったが

人数が多い時は範囲指定を使うときもある。グラントの家にやった技と似た手法だ。」

とレンドは言った。

レンド自身、グラント達が、いずれピントに気づくのは時間の問題だと感じていた。

その中で、ピントからの情報を逃さないためにはリスクを冒してでも、入れ墨を仕込んでおく必要があった。

「なんで製作者が手強いの?」

リコはレンドの最初のつぶやきに戻る。

「いや、そうだな手強い可能性がある…という方が正しいかもしれない。

もし、あのガキが言っていた贄の木とやらに何か仕掛けあるとすればの話だが…」

「どういうこと?」

「もし、仮にお前が製作者で…あの獣を殺させたくないとしたらどうする?」

リコには質問の意図がよく読み取れなかった。が考えながら答えた。

「ううんと…私だったら…あの子に木の話はしないかも…」

この答えにレンドは満足したように彼女を見返した。

「どうしてだ?」

「あの獣がもし伝承型なんだとしたら、木のことを言ってしまえばそこに心臓があるって教えてるようなものだもの。拡大型の噂はいい手だけど、それ以上をあの子に教える必要がないわ…」

レンドは満足そうにうなずく。

レンドはこうした分析をする際のリコの性格の豹変に少し驚いているところがあった。

リコ自身の見た目は幼い少女そのものだが、戦略を練る時などのその表情はまるで少女を思わせない緊張感があった。

「そう、そこだ。製作者は獣狩りの行動をかなり知っている。そしてその分析を使ってグラント達を誘導している。とすれば今回のこの木の情報は、奴が意図的に流していると考えるべきだ」

「ってことは木の情報も嘘なの?」

レンドはその問いに難しい表情をする。

「何らかの罠が隠されている…ということは考慮すべきだろうな。グラントも用心はするだろうが、いかんせん俺の存在もあって、奴は今焦りが勝っている」

レンドはため息をついた。


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