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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第二十八話 尋問

「なぜ情報屋に情報を?お前の飼い犬なら死んでほしくないはずだ。」

レイルの問いにピントは詰まった。

「それは…迷惑をかけているからです。俺の犬が街の民に、みんな怖がっているし」

グラントはそのよどみを見逃さない。

「だから獣狩りに任せようと?だがそれなら討伐隊にその情報をいうことも可能だったはずだ」

「討伐隊に直接いえば、俺の犬だってことがみんなに知られてしまう。そうしないためにはあんたたちに狩ってもらうひつようがあったんだ」

ピントの返答は確かに筋は通っていた。

だが答えに臆した様子だったためにレイルはそこをついていく。

「筋は通っているが、どうも引っかかるな。お前本当はあの獣の別の情報を知っているんじゃないか?。そして、獣狩りをはめるためにあえて拡大型に見えるような情報をこいつに流した」

ピントは必至に否定する。

「ちがう、ほんとにあいつは俺の飼い犬だったんだ。」

レイルはバルガスをピントを交互に見比べる。

「俺たちをはめるなんて、てめえみたいなガキにできるわけがねえ。おおかたこいつの入れ知恵だろう。おいガキ。いくらもらったんだ」

レイルはしゃべりながらヒートアップしていきピントの首ねをつかんだ。

ピントは苦しそうに答える。

「もらってません。そんなの」

レイルはピントを放すと今度はバルガスにつかみかかる。

「てめえもいい加減にはかないとやっちまうぞ!!」

バルガスは抵抗できず、なすすべもなくレイルに殴られて、床に倒れこんだ。

レイルがそんなバルガスに追撃をくらわそうとしたとき、

「もうやめてください!!」

とピントが大声を出した。

「全部話しますから、もうやめてください」

レイルの殴る手がこの声に反応して止まる。

「全部?やっぱり何か隠してやがったのか。」

ピントはうなだれた様子でしゃべり始める。

「あいつが森に現れたのは、ちょうど1年前くらいです。その時俺の飼ってた犬が死んでしまって、あの癖はほんとにそっくりだったんで、おれは自分の犬が生まれ変わったんだ!って思うようになったんです…あいつは確かに不気味だけど、特に俺たちに攻撃とかはしてこなかったから、街の連中もみんなほっといてました。でも領主があいつを殺すために金をたくさんかけてるのを知って…どうしてもあいつを死なせたくなかったんです…。そんな時、情報屋が獣の情報を探し回ってるって聞いて…」

グラントは注意深くピントの表情を探っていた。

「情報屋が探している情報は、うちの街にあいつに似た伝承がないか、それとも獣の特徴を持った動物がいなかったかって話でした」

グラントが口を挟む

「そこで獣の特徴を情報屋に伝えようと?だがそれは結果的に獣を殺しやすくなる…。」

ピントはうなずく。

「正直、最初はうちの犬に特徴が似ている話は情報屋に流すつもりはありませんでした。

情報屋が探す情報ってことは獣狩りが狩りをするためのものだと思ったので…。」

グラントがさらに聞く。

「それがなぜ情報を流す気に…?」

「一度、本当に獣の特徴が俺の飼っている犬のものか確かめに行ったんです…その時、獣の近くにある人がいて…」

グラントは話の風向きが変わってきたことを感じていた。

「人?」

「そうです。彼は害獣の研究をしている。と言っていました…俺ははじめは彼が俺をからかっているんだと思ったんですが…。あまりにも害獣に詳しくて…なぜ情報屋が元となる獣を探しているのかも彼に教わりました」

グラントは途中から身を乗り出して聞いていた。

「俺は彼にすべて話したんです。あの獣を死なせたくないことも、俺が飼っていた獣に仕草が似ていることも…。そうしたら彼は一つ提案をしてきたんです。」

「提案だと?」

ピントはその時のことを思い出す。

クンクラの森で、彼はこうピントにいった。

「もし君があの獣を獣狩りから守ることができるとすれば…そうだな、情報屋にこんな情報を流すといい。あの獣と同じ仕草をする獣を飼っていたとね。仕草の細部まで詳細に伝える方が、信憑性が増すからそうした方がいい。」

ピントは答える。

「あいつを殺しやすくなる情報を与えるんですか?」

ピントの疑問に彼は冷静に返す。

「いや、むしろ逆だ。拡大型だと向こうが勘違いしてくれればこの子が生き延びる確率は上がる。」

ここまで聞いてグラントが反応する。

「拡大型だと勘違い…か、やはり俺たちをはめた奴がいた…情報屋もまんまとそれにのせられたってわけか…なめやがって。」

レイルはピントの頭をつかむ。

「結局のところお前が俺たちをはめたってわけだ…どうしますこいつ」

レイルはグラントを見る。

「その研究をしているとか言っていた奴は何か言っていなかったか、その獣のことを」

ピントは答えたくなさそうな表情をする。

「まあ答えなければ死ぬだけだ。お前がはめたおかげで俺達が何人死んだと思ってる。」

グラントはピントを見ながら言う。

ピントはグラントをみて少しうなだれたが、ゆっくりと語りだした。

「彼はあの時、森の贄の木にはあまり近づかない方がいいと言っていました。」

グラントは聞き慣れない言葉に聞き返す。

「贄の木?」

「ここの森にある大きな木のことです。クンクラの森には確か全部で10本くらいの贄の木があります」

グラントはさらに情報を引き出そうとする

「10本か、その中のどれかとは言ってなったのか」

「いえ、それは言ってなかったです、獣の近くにもなるべく寄るなとは言っていましたが」

「嘘じゃないだろうな。」

「誓って本当です。」

グラントは考え込む。

――使えそうな話だが、どこまでこいつを信じたものか…

グラントにはもう失敗は許されていなかった。

「わかった。だが次の狩りにはお前もこい。情報が違ったら、お前もそこで道連れだ」

そしてグラントはバルガスを捕まえると、

「ガセをつかませやがって、報酬は半分返してもらう」

というとバルガスをレイルに任せた。

バルガスは必至で反論していたが、レイルに連れていかれていた。

一方レンドとリコは街へ向かって歩いていた。



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