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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第二十二話 動点の応用と情報元

一方バルガスの家ではレイルが執拗にバルガスを追い込んでいた。

レイルはバルガスの頭を掴んで聞く。

「情報元を吐いてもらおう」

「いやだね。吐いたら用済みだから殺されちまう」

グラントの時とは打って変わって汚い言葉遣いをバルガスはしていた。

本来の彼の気性はこちらに近い、グラントとしゃべる時は交渉上手を演じるため努めて丁寧な口調に変えていた。

レイル相手にはその口調がかえって憤らせることがわかるため、バルガスはあえて飾らない。

バルガスを見てレイルは不敵に笑う。

「今用済みにしちまってもいいんだぞ」

「そうしちまったところで…欲しい情報は手に入らない」

バルガスは商売柄こういう修羅場には慣れていた。

いつもは隠れ家が見つからないが、今回は相手が一枚上手で、逃げ場所を失っておりバルガスにとってはかなり危険な状況だが、バルガスにはいくつか打開するプランがあった。

「まあ聞いてくれ・・・おれも実際は本当の情報元が誰かは知らねえんだ。」

レイルは激昂する。

「知らねえ奴の情報を不確かにおれらによこしたってことか」

バルガスは慌てない。

「あの街にはいくつか情報筋があってな、そこで得た情報なんだよ。だからそもそもの情報元は俺は知らねえ。伝え聞きが俺に回ってきただけさ」

レイルはふと考える。

これはバルガスの嘘な可能性もある。

それをこの場で確かめる術はレイルにはない。

「じゃあ明日その情報筋のところまで俺達を案内しろ。今度中途半端をつかませたら用済みにしてやる。」 

バルガスはうなずいた。こうしておけばリクソスまでは時間が稼げる算段が付くし、何よりいざとなれば情報元に責任を負いかぶせることができると彼は踏んでいた。

次の日レンド達は、まず学校へ向かった。

学校はかなりこじんまりとしており、子供たちは年齢に関係なく一堂に集められて授業を受けているようだった。

レンドはまず教員が集まる場所へ向かった。

教員といっても先生は2人でやりくりしているらしく部屋もこじんまりとしていた。

レンドが彼らに事情を説明する。

「森に出る獣を倒すための手がかりを探しているんだ。それで生徒に話を聞きたい」

先生の2人は突然現れた銀の爪に動揺を隠せない。

「獣退治と子供たちに何の関係があるのでしょうか」

先生という立場では害獣からなるべく子供たちの距離をとらせたいようだった。

「別段彼らに危害を加えるつもりはない。2.3質問をするだけだ。なんなら教室であなた達の見ている前でそのまま質問しても構わない」

先生は顔を見合わせる。2人の中で年配の先生がこたえる

「そういう事でしたら…ただし欲しい情報が得られなくても子供達を問い詰めるような事はないと約束してくれますか?」

「それで問題ない」

先生達は納得したのかレンド達を教室に連れて行く。

レンドは先生の後ろについて行くが、教室の前まで行く手前で先生2人の話を聞きながら教室の壁に手をつける。

リコが興味深そうにそれを見ていたが、その瞬間レンドの手から刺青が教室の壁にうつった。そしてレンドがその移った刺青を叩くと、刺青は散り散りになって。教室の壁を伝って教室の中に入っていった。

その間はほんの一瞬だったため、レンドを注視していたリコ以外は誰も気づいていなかった。

先生達は教室に入り、子供たちに事情を説明していた。

あまりない出来事に子供たちは興味津々で教室内は騒々しくなる。

レンドは先生に紹介された後、子供達の前に立つと質問を始めた。

「この中に犬を飼ったことのある人間はいるか」

何人かが手をあげる。

レンドは人数を数えずに次の質問に移る

「犬を飼っていたやつの中で、その犬が2年前にいなくなったものは?」

誰も手をあげない。レンドは質問を続ける。

「飼っていた犬の特徴が、今森を騒がせている獣に似ていると思っているものはいるか?」

これにも誰も手をあげない。

レンドの質問の意図が子どもたちにも伝わったのか、ざわざわし始めていた。

-あの獣を飼っていたことのある人がこの中にいる。

その意図を理解したからか、誰も手をあげるものはいなくなっていた。

レンドは一通り見渡すと満足したのか、

先生に合図をだしリコと2人で教室を後にした。

教室を出て先生に別れを告げて、外に出たタイミングでレンドはちょうど教室の外に位置する壁まで近づくと、右手を壁につけ、左手で拳をギュッと握った。

すると先程まで散っていた刺青が教室の壁伝いにレンドの所に戻っていく。

一通り刺青を回収し終えると、リコを連れて今度は町の外れの塔まで向かった。

町外れの塔には、子供というよりは青年に近い人の集団がおり、塔の建築作業を手伝っていた。

レンドがバルアクという人がこの中にいるかたずねると、ひとりの青年が『塔の奥にいる』と

答えたので、リコとレンドは青年たちの好奇の目にさらされながら、中に入りバルアクの元に向かった。

塔の中では皆に比べると歳のいった男がみんなに指示をだしていた。

『あの人がそうですよ』と中に入ったところで青年がおしえてくれる、

レンドとリコにバルアクは気づくと、

「そこの2人、なにしてる、塔の中は建築中で危ない。外にでてくれ」

と言ってきた。

レンドが事情を説明する。

「俺は獣狩りだ。ここの連中にいくつか質問がある、皆を集められないか」

レンドの顔の刺青と格好から銀の爪なことを察したのかバルアクの態度は協力的になる。

「獣狩りか、あの獣には俺らも困ってる。まだ襲われたわけじゃないが、奴が森にいるせいで建築材の入手が厳しいんだ」

そういうとバルアクは一度全員をあつめて、レンドに質問させる場を設けた。

レンドはまた合間を見計らって刺青を散らし、学校で行ったのと同じ質問をする。

彼らも学校の子供と同様に、レンドの質問が、この中にいる誰かが獣と関係がある、という主旨のものだとわかると、周りを見合ってざわざわしていた。

一通り質問が終わると、レンドは同じように刺青を回収してバルアクに礼を言い、リコと塔を後にした。だが町へ戻る途中で、レンドは近くの廃墟にリコをつれてきた。

廃墟は塔から5分ほどの場所で塔の様子を見渡すことができた。

廃墟の壁の裏のスペースにレンドは陣取ってそこで寝転がって目を閉じた。

リコはレンドと一緒に横になって少し休むことにした。

夜が来て、塔の建築作業が終わりを迎えると、青年たちはそれぞれの帰路についていた。

レンドはふと起き上がると、じっと塔のあたりを見ている。

リコもレンドの様子に気づいておきあがあると、おそらくレンドは目的の人を見つけたんだろうなと思ってレンドをみていた。

3人ほどの集団が塔からでてくる。その中の1人が仲間達に別れを告げて、レンド達のいる廃墟の横を通り過ぎようとしていた。

そのタイミングでレンドはリコと共に出ていってその少年に呼びかけた。

「お前だろう。あの獣を飼っていたのは」

その子はとても面食らった様子でレンドとリコを見ていた。



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