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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i
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第二話 喧嘩

「お前、ここの依頼でこんなにもらっていやがったのか」

入れ墨の多い男は答えずにじっと男を見る。

「何の話だ」

男たちの怒りは収まらない。

「しらばっくれやがって、領主がてめえに相場の三倍の値段払って依頼してんのはわかってんだ。てめえ一人でそんなに取りやがったら、俺たちに回るもんも回りゃしねえ」

男は周りに聞こえるように言う。周りの獣狩りは三倍という額に驚き、ざわつき始めていた。

「どこで何を聞いたか知らないが、俺はまだ領主と金のやり取りはしていない」

入れ墨の男が務めて冷静に返すのもかえって絡んでいる男たちを憤らせる。

「てめえ、まだしらばっくれやがるか。これを見やがれ」

男は依頼状を投げつける。

入れ墨の男はそれを拾い上げてみると、少し表情を変えた。

「お前、これをどこで手に入れた」

表情が変わった事に満足して、男は続ける

「てめえが間抜けに落としたんだろ。この店に落ちてやがったぜ。この紋章は銀の爪のもんらしいじゃねえか」

入れ墨の男は少し考えていたが、冷静に返す。

「どちらにしろこれは俺のものではない。あまり騒ぎ立てるな」

当然男たちの激高は収まらない。

「てめえ、まだしらばっくれる気か!!」

一人が剣に手をかける。

そこでクレアが大声を出した。

「ちょっと!!店の中で始める気?」

クレアは二人の間に割って入る。

「なんだアマ、俺を止めようってか!!」

男がクレアを殴ろうとしたとき、男の後ろから眼帯をつけた男が一人

「やめろ」

と低い声を出した。いわれた男は眼帯の男を見て、クレアから手を放す。

「ですけど、グラントさん。こいつ俺らの…」

グラントと呼ばれた男が男たちをなだめる。どうやら男たちはグラントの部下らしかった。

「かたぎに手を出す気か、この酒場のエールを飲めなくなったらてめえがただではすまねえぞ」

グラントにそう言われて男は引き下がったが納得がいった様子ではなかった。

グラントはその男の肩をたたくと、

「どのみちあの獣は俺たちが明日狩る。銀の爪だがなんだか知らんが、こいつの出番もこいつに金を横取りされることもない」

と入れ墨の男に聞こえる声で言った。

と今度はそれに別の男が反応する。

「明日倒す…か。大きく出たもんだ」

グラントはその男の顔をみると面白そうにそれに返す。

「ベルグールか、お前らの兵力じゃ獣は厳しかったろうな。帝国は討伐隊に出す資金

も兵もケチってやがると聞くぜ」

ベルグールは図星をつかれたのか不快な表情を顔に浮かべるが、言い返す。

「グラント、お前らが失敗しようが俺たちにはどうでもいいが、奴はそう簡単にはいかんぞ。お前もそう思っているんだろう、銀の爪よ」

ベルグールは入れ墨の男に話を振る。入れ墨の男は答えずかわりにグラントが反応する。

「ふん、こいつ一人に何ができる。あんな拡大型一匹、すぐ終わらせるさ」

ここでようやく、入れ墨の男は反応する。

「お前、あれが拡大型だと思っているのか」

グラントは余計なことを言ったと気づき、口を閉ざす。

入れ墨の男は続ける。

「何をつかんでいるかは知らんが、部下を粗末な指示で死なせるなよ」

これにはグラントよりも取り巻きの男たちが、腹を立てる。

「グラントさんになんて口をききやがる!!」

入れ墨の男は冷静に指摘する。

「どのみち、俺は当分は奴には手を出さない。そこまで焦ってやつを狩る必要はないと思うが」

周りの男たちがグラントの代わりに言い返す。

「ふん、お前の言うことなど誰が信じるか。こっそり抜け駆けして金もらってるような奴に」

グラントは騒ぎ立てる部下をいさめると、

「手を出さないなら好都合だ。お前の獲物がかられる様をゆっくり見てるといい」

と言い残し部下を引き連れて酒場を後にした。

クレアはカルケルたちのところに戻ると

「繁盛するのはいいことだけど、血の気が多い輩ばかりなのも考え物ね」

とカルケルに愚痴をいう。

「お前さんが無事でよかった。突然間に入るもんだから肝を冷やしたぜ」

「そうね。エールにこだわっておいてよかったわ」

とクレアは笑って返す。

カルケルとリコはその後も食事を続け、リコがもう食べ得られないほど満腹になったところでカルケルはリコを連れて酒場を出た。

だが酒場を出たところでリコとカルケルは

「待て」

と呼び止められた。



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