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超獣戯画Ⅰ  作者: m-u-t-o-i


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第十八話 領主

「奴は行ったか」

グラントに聞かれて、レイルは家の窓からあたりを見渡す。

レンドとリコが歩きながら離れていき、時期に見えなくなった。

「はい。もう見えなくなりました」

レイルがそういうとグラントは情報屋についてレイルに指示を出し始めた。

「ヘルムントの酒場に何人か連れて見張りをたてろ。情報屋のバルガスってのが、そのうち見つかる。そいつを生きたまんま俺のところに連れてこい」

レイルは承知して部屋を出ていった。

グラントも今回の発端が情報屋であることはわかっていたので、自分で処理しようとしていた。

一方でレンドはリコとともにグラントが休んでいた家を出ると、すぐに腕をまくって自身の入れ墨を触り始める。

「グラントとは仲直りできなかったね」

リコに言われて、レンドは呆れたように返す。

「元はといえばお前のせいでめんどくさくなったんだ。ここからの関係修復は簡単にはいかないさ」

そういうとレンドは腕の刺青の十字架の周りにある丸い模様をゆっくりと指でなぞる。

「何してるの?」

「少し黙ってろ。調節する」

二回転半ほどでなぞるのを止めるとこんどは肩をまくり上げ右胸の上にある刺青の丸を同じようになぞって、こちらは一回程度で止めた。

「これでちょうどいい」

そういうとレンドは歩きながら目をつむって集中しはじめ、右腕の入れ墨の丸を指でゆっくりとなぞっていく。

リコは黙ってそれをみていた。

しばらくするとレンドは腕を触るのをやめ、何やら文字を自分の手帳に書き出す。

「ヘルムント…見張り…バルガス…なるほどまあこれだけあれば十分だな」

リコは尋ねる。

「何をしたの?」

「グラントの指示を聞いてる。ヘルムントか、たしかに情報屋が多く集まる村だ。ここから少し離れてるが、まあ行くのにそう時間はかからないだろう」

リコは驚いて尋ねる。

「それってあの部屋の会話ってこと?そんな所の話し声まで聞こえるの?」

「歩きながらは少しコツがいるがな。俺達に入ってる刺青は能力を調整するためのもんだ」

「じゃあグラントが話してくれなくても聞くつもりだったの?」

レンドはこたえる。

「むしろ奴がやすやすと情報を渡す確率はほぼないと思っていた。いくら報酬を取らないとはいえあいつらにとって俺がいると動きづらいのはかわらんだろうからな。

それに情報源を他の獣狩りに教える奴なんていないさ」

「じゃあ今からヘルムントに行くの?」

「ああ、先に領主のところに行っておいて正解だった」

リコはグラントの所に行く前のことを少し思い出す。

この日、グラント達を尋ねる前にレンドとリコは領主の館を訪れていた。

リクソスの街は領地の中心に位置しているため、領主の住む館もまたリクソスの街の中にあった。

館に2人がつくと、召使が2人を領主のいる部屋に通した。

館はかなり大きい作りになっており、中の領主の部屋も意匠をこらした銅像や置き物がならべてあるかなり金のかかった部屋だった。

レンド達が部屋で待っていると領主が部屋へと入ってくる。

「これはこれは銀の爪のお方、そして…やけに可愛いお連れさんですな」

レンドは気にするなという意味で首を振る。

「とにかく、先日は調査をありがとうございました。今日来ていただいたということは獣狩りの件お受けしていただけるのでしょうか」

レンドが袋から契約書を取り出す。

「そのつもりです。契約書を持ってきました。そして契約印もね」

レイスの契約印は契約対象者が推す必要があるが、本人がその印自体を所有している必要はなかった。

「これがレイスの…たいそうな作りですな。さすが最古の印…もちろん構いません。

あの獣を殺していただけるなら喜んで契約に従いましょう」

領主はいたく契約したいらしくレイスの契約印にも大して同じている様子はなかった。

「わかりました、ではここに名前を記入して印をお願いします。」

領主は従って印を押す。その瞬間、印が一瞬熱を帯び、領主は驚いて印をおとした。

「今のは?」

レンドは落とした印を拾って答える。

「契約の証ですね、確認してください。」

レンドが示すところに印で押した印が赤く焼き付いてる。

「なるほど、押すのは初めてなものでこれは申し訳ない、恥ずかしい所をお見せしました。」

「いえ、最初はだいたいこうなります。では約束のものを先にいただけますか?」

領主はそう言われると、奥から男達に袋を持って来させた。

袋には貨幣が大量に入っているらしく、運び手が歩くたびにジャラジャラと貨幣の擦れる音がした。

「これで十分ですかな。」

レンドは中身を見ると、返事をした。

「ええ、契約通り、奴を倒せなかった場合はそっくりそのままお返しします」

「信頼していますよ?あなた達は獣狩りの中でも相当な猛者だとお聞きしている。

グラントの奴らがやられた今、あなた達だけが頼りです。」

これにはレンドは特に返事をせず、会釈で返すのみだった。

レンドは金の入った袋をかつぐとリコと部屋をでていった。

廊下に出るとクレアとレンド達はすれ違った。

クレアはとても思い詰めた顔つきをしていたのでリコは気になって話しかけようとしたが

彼女はレンドとリコが視界に入らないようだった。

レンドは気にせず廊下をすすんでおり、クレアも部屋に入ってしまったので、リコはレンドの後を追っていった。

クレアは領主のいる部屋に入った。

「よくきたね、クレアさん。それで?気持ちは決まったかね?」

クレアは覚悟を決めて答える。

「はい。わたしはサルドさんと結婚します」

「そーか!それはよかった。これでクレアさんも私達の家族の仲間入りだ。こんなに嬉しい事はない」

領主はとても嬉しい様子で興奮していたが、それとは対照的にクレアの顔はかなり悲壮な面持ちだった。

「それで、結婚したら母は店を続けられるのでしょうか」

「当たり前だよ。息子の嫁さんの実家を潰すわけにはいかないからねぇ。帝国の方達には私から言っておこう」

クレアはようやくホッとしたような顔をしたが、気分は浮かなそうな表情のままだった。

「そんな浮かない顔をしないで。君は正しい選択をしたんだ…うれしいねぇ、頭のいい人間が私達の家族にはふさわしい」

領主は不敵な笑みを隠さずクレアの肩をぼんぽんとたたく。

クレアはそれをはねつけられず。不快な顔を隠すのに必死だった。


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