表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

棄てられた完成品



 

 アサラは椅子から立ち上がり腰を折った。

「なんだよ、いきなり」

「オレの、せいなんだよ。お前が襲われたのは」

「お前の? なんで」

「言ったろ、カエルコミュニティに連絡するって」

「ああ、閉鎖的なコミュニティだろ?」

「そこの一員だったんだよ」

 あいつは、とアサラがうつむいた。

 シュウイチはアサラとかりんを交互に見つめた。

「だから、オレの責任。お詫びになんでもするぜ?」

「いいよ、お前にはいつも助けられてる。それよりもそいつがかりんの、この子のご主人なのか?」

 シュウイチは当たり前の疑問を口にした。

 しかし、その疑問を受けてアサラは視線を泳がせた。

「なんだよ、いきなり黙って。まあ、言いたくなければ言わなくてもいいぞ」

「いや、関係者だし、言うよ。知る権利は、ある」

 アサラは椅子に座り直してかりんの頭をなでながら語り始めた。

「この子な? あいつが作ったんだよ」

「作った? 人工交配って事か?」

 アサラは首を振った。

「いいや、違う」

「人工交配じゃなくて作った……。意味がわからん」

「この子は、試験管ベイビーなんだよ。聞いたことはないか? 人工授精させた受精卵を試験官に入れて栄養を送って育てる、って話」

「まさか、いや、でも個人でできるのか?」

「個人でやり遂げたのははじめてだろうな」

「本当に、できるのか?」

「できる。つーか、できたんだ。いるじゃないか目の前に、完成品が」

 いつの間にか目を覚ましていたかりんがシュウイチの右手をぎゅっと握った。

「あいつは、自分の飼っている子の卵子と精子を受精させて受精卵をつくり、それを入れた試験管を大量につくった。理想の娘ができるようにいじりまくってな」

「で、できたのがかりん、か」

「結局、できあがったのはかりんちゃんだけだった。ある程度育てて醜いと思って川に捨てた」

「で俺が助けた、と」

「そ。それでコミュニティに連絡が来て慌てて見に行ったら仲良くお前らがいてカッとなって襲った、ってさ」

「包丁は、なぜ持っていた?」

「おれの娘がどうのこうのって叫んでいたし元々さらう気だったのかもな」

「棄てたのに自分のモノ扱いか……」

 シュウイチはかりんを見た。

 視線を向けられてかりんはその握る手の力をまた強くした。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ