コール
部屋の前で当直医と別れひとりになった所でシュウイチは端末を引っ張り出し電話をかけた。
ワンコールもせずに電話は繋がり夜なのに雑踏の中にいるような背景音と共にアサラが出た。
『はい、アサラ』
「夜分にすまん」
『いいっていいって。で、シュウ。なんかあった?』
シュウイチが申し訳ないオーラ満載で口を開くとアサラは軽い口調で返事をした。
「人化動物を保護する事になった」
『お、いいね。メス? メス??』
「お前はブレないな。メスだ。カエル」
『おー、カエルっ娘かあ。カエル……。カエル!?』
アサラの叫ぶ声でシュウイチは端末を一度耳から遠ざけた。
「何、驚いていんだ?」
『いや、カエル……。メスなんだよな?』
「何度も聞くなよ。カエルのメス。人化」
『えーっと、捜索願って言うのは出ていたりは?』
「無かったらしい」
シュウイチが無かったと言うとアサラは端末越しでも判るほど大きく溜息を吐いた。
そして、少し間を開けて
『……、カエルコミュニティってのがある』
と嫌そうにいった。
「へえ、そこに聞けば何か分かるかもって事か?」
『そんな簡単な事じゃねえよ。あそこは閉鎖的でな。あー! コンタクト取りたくねえんだよ。独特すぎて!』
「お前が言うって事は余程なんだな」
『でも、言わねえとオレが殺されそうで怖いし』
「そんなにか」
『お前のお願いじゃ無かったら絶対に連絡とらねえ』
「すまん。本当の飼い主を見つけてやりたい」
『分かった、連絡してみるわ。あと、施設名と部屋番号教えろ。顔出すから』
「すまん」
『何度も言うなよ、お前が助けたいと思う様にオレも助けたいと思ってんだ』
シュウイチは院名と部屋番号をアサラに教えて通話を終了させ部屋の扉を開けるとベッドにはかりんが寝息を立てていた。