独特な匂いはどの病院も
病院に到着して最初に行われたのは警察からシュウイチへの質問攻めだった。
なぜ、なぜ、なぜ。
シュウイチは上司へのイライラが酒と一緒に吐き出されていて賢者モードだったのか淡々と”なぜ”に答え続けた。
警察の質問攻めが終わると今度は病院からの質問攻めだった。
同じ様な質問が多かったのでシュウイチは情報共有しろよなどと思った。
やっとの事で開放されたシュウイチは当直医による報告を受けた。
「彼女、やはり人化動物で間違いないですね。簡易検査ではカエル種と出ています」
「カエル……、ですか。川で遊ばせていて居なくなった、とか?」
「捜索願を確認してみましたが出ていませんでした」
「え……? じゃあ、あの子は何処から?」
当直医は首を振った。
「分からない。そうとしか言えないです」
「そう、ですか」
「しばらく、ウチで保護する事となります。仮ですが保護者が必要なんですが……」
「俺に、保護者になれと?」
「第一発見者が仮保護者になるのは暗黙の了解のようなものでして……」
そこでシュウイチの頭にある顔が浮かんだ。
動物たちと戯れ、笑う顔。
「分かりました。仮、ですよ。仮でいいので保護者になります。誰か良い飼い主を見つけるまで」
「はい。仮で登録しておきます。名前は、どうしましょう」
「名前。名前は、かりん。かりんでお願いします」
部屋の片隅に置かれた半分潰れた酒の缶にでかく”花梨酒”と書かれていたのが目に入ったからだ。
(どうせ仮だ。引き取った保護者が本当の名前を付けるだろう)
そう思って適当に付けた。
「では、”かりん”と。かりんちゃんが起きましたらこちらの栄養剤を食べさせてあげてください。一応、錠剤と粉末と用意しておきましたので」
「え? 俺が食べさせる?」
「あ、お仕事がありました?」
「いや、仕事は……。時間は、ありますけど」
「では、保護者としてお願いします」
「はあ……」
流されるままにシュウイチはカエル娘、かりんの部屋へ案内された。