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えがおは、はなまる



 シュウイチとアサラはコンピュータの前に陣取って今か今かとそれを待っていた。

「お前落ち着いてるなあ。こういう時の旦那って落ち着かなくなるのが相場じゃねえのか?」

 アサラは笑いながらシュウイチの方を見た。

「俺に聞くな。はじめてだし、これでも落ち着いてねえよ。お前の方がよっぽど経験豊富なんだろ?」

 背筋を伸ばし両手を強く握りしめたシュウイチは一点を見つめたままだった。

「いやなあ。立ち会いは良くやるけど旦那ではないからなあ」

「お前は、結婚しないのか?」

「うちの娘たちはどうぶつだぞ? お前みたいに簡単ににんげんを捨てられねえんだよ」

 アサラは背もたれに背中を預け、目を閉じた。

「いや、ノダテ」

「ノダテつあん? なんでノダテつあん?」

「お前。抱いたのにそんな事言うのか?」

 シュウイチはアサラ身体を強引に引き寄せて強い口調で言った。

「え? マジで? 何で知ってんの?」

 目を泳がせながら慌てるアサラに薔薇の香りだとシュウイチは一言呟いた。

「あー、シュウってオオカミだったな。そうかー」

「アサラ」

「解ってる。解ってるよ。ノダテがオレの事を好きだって知ってる。だから抱いたんだし、にんげんだったらノダテが1番だ。今は」

「だったら」

 ふたりの会話はそこで途切れた。なぜなら新しい命の声が響いたからだ。

 

 OGYAAAAAAAA!!!!

 

 元気な産声だった。

 続く産声に混ざる様に足音が近づいてきてさんにんの娘が顔をのぞかせた。

「産まれましたよ!」「産まれましたー!」狐娘と犬娘が同時に叫ぶ。

「ぼくも赤ちゃん欲しい。産みたい」

 そう言うアルテにアサラがいや、アルテは産めねえだろと突っ込むとわたしが産んであげます! といつの間にか後ろに立っていたテラスが思いっきりアルテを抱きしめた。

 アルテからむぎゅうと息が漏れる。

「窒息死するからやめろ」

 シュウイチはテスラからアルテを引き剥がしコンピュータの前に戻った。

「で名前は、いいんだな?」

 シュウイチが戻るとアサラは名前の入力だけ残した鑑札票の入力画面をとんとんと叩いた。

「出来たのが男の子って判って付けるべき名前はこれだってすぐ決まった。それでいい」

「じゃあ、入れるぞ」

 アサラは一文字ずつ口に出しながら入力した。

 

 ハ・ナ・マ・ル

 

「よし、名前も登録したし顔を見に行くか」

 決定ボタンを押し席を立ち上がったアサラはシュウイチの方へと顔を向ける。するとそこには少し震えたシュウイチが居た。

「どうした? シュウ」

「足が、身体が震えて……」

「肩、貸してやるよ」

「すまん」

「いつだって助けてやるよ。オレが、飼い主なんだし。だから、オレが迷った時は助けてくれ」

「ああ」

 ふたりは肩を組んでゆっくりと歩く。その後ろには肩を寄せ合って歩く狐娘と犬娘。口を鼻を抑えながらテラスから逃げ回るアルテ。

 病室に着くとかりんは鼻息荒く叫んだ。

「しゅういちさん! 可愛い男の子ですよ!」

 笑顔でベッドに近寄りシュウイチがそっと人差し指を近づけると男の仔、ハナマルは近づけた指をぎゅっと握った。

 かりんのいい部分とシュウイチのいい部分を受け継いだハナマルの頭と尻には白銀色の獣耳と尻尾が揺れていた。

 

 

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