五章之壱 花のつぼみたち
唸っている。
体が熱い。
いつの間にか、夢の中にいることに気が付いた。
ふかふかのベッドの上で、ビャッコが唸っている。
熱に浮かされているのだ。
最近の夢は、ずっとこの唸ってばかりのシーンだ。
そして昨日、説明があった。
説明したのは、犬系の獣人だった。
そいつは急に犬の姿になり、そしてまた人型になった。
「こういうことが、もうすぐできるようになる・・・この熱はその前兆だ」
なるほど・・・
って、マジかよっ?
数日熱にうなされている夢ばかりだが、ついには体細胞が急速に変異していくのが分かるほど、ビャッコはベッドの上で暴れだした。
かぶっていた布が身体にからまり、それがイヤで暴れているようにも見えたろう。
俺は・・・いや、ビャッコは、
まとわりつくかぶっていた布をはねのけた。
・・・
・・・・・・
そこで葉介の目が覚めた。
ふとんをはねのけ、飛び起きたのだ。
「・・・はぁ・・・なんなんだ・・・?」
頭をかいて、抱える。
しばらくそうしていると、セットしておいたロックがオーディオから鳴りだした。
四時四十五分だ。
ロフトから降りて一階に行くと、姉と遭遇。
「おはよ。まさか本当に家継ぐ気なわけ?」
「まだよく分からんよ」
「ああ、そう」
葉介の姉はパテシェ。
名前を葉子と言う。
出戻りで、息子が一人いる。
ちなみに現在恋人募集中。
葉子の息子、葉介からした甥、そのこは現在二歳で起床は六時くらいだ。
『アンパンマン』が大好きで、葉介は時々アンパンチをくらう。
二歳のこのパンチは怖い、と葉介は思う。
普通に放つと、葉介の股間のあたりがヒットゾーンだからだ。
・・・厨房。
葉介はチョコレートの新作に挑んでいる。
銀色の大きなボウルの中の溶けたチョコを、光沢が出るまで混ぜる作業が大変だ。
無心で混ぜなさい、と父に言われた。
なので真剣に混ぜている。
チョコの中にジャムや紅茶クリームやカスタードを入れたりしようと思っている。
上手くいったら、誰かに食べてもらいたいな、と葉介は思った。
二年七組全員に食べて欲しい。
父は、「無心で」と言った。
母は、「愛を込めて作りなさい」と言った。
なので葉介は、無心を保ちながらも愛情を込める練習をしている。
樋口洋菓子店を継ぐのは、葉子か葉介か、進路調査があった日に家で話題になった。
葉介は、一生家族とこうして・・・
店を経営できたらなぁ、と心の中でつぶやいた。
* * *
「私の名前はアヌピス、説明に来た」
「俺の相棒どうなるのっ?」
「落ち着いて。今説明するから・・・肩の手、どかして・・・」
「ああ・・・ああ、ゴメン。ゴメン。早く治してっ。ずっと唸ってるんだよっ」
「分かってるから、まず君が落ち着いて」
「わ、分かった・・・」
深呼吸をするヘルメイス。
そして犬に変身して、また人型に戻るアヌピスとなのった男。
いずれこういう風に、自在に人型になる術を得るだろう、みたいに言われた。
「意味分かんないよ・・・俺は生まれた時から人型なんですけど?」
「そういう種もいる。君はカリョウビンガじゃないか」
「そうなんだけど、もしかして樹海の磁力と関係しているの?」
「何故?」
「いや、よく分からないけれど・・・」
その時、いっそう大きなうめき声が聞こえた。
「ビャッコっ?」
振り向いた先に、ちょうどかぶっていた布をなぎはらったビャッコがいた。
数秒の間。
ヘルメイスは瞬く。
「え、誰?」
ベッドに横たわっているのは、ビャッコの筈だ。
しかも人型になることを説明されたばかり。
ちょっと・・・あれか、天然記念物ってやつか・・・?
蔵人は自分でもそうと呼べるほど、案外と平気に『その姿』を受け入れた。
まだ荒い息をしている『そいつ』が、はぁぁ、と息を整えた。
そして自分の腕や足、そして布に隠れた部分などを確かめてみて、こちらを見た。
「え、ビャッコなの?」
ビャッコはもう一度、布に隠れた部分を見た。
「意味が分からない・・・」
「ビャッコ、お前人型になったんだよっ」
人型になったビャッコは、その白く長い髪をぐしゃぐしゃと触った。
「不可思議だ・・・」
「具合はどうなの?」
「眠い・・・」
「じゃあ、一緒に眠ろうっ」
そう言って俺、いや、ヘルメイスは、ビャッコの横に飛び込んだ。
・・・
・・・・・・
蔵人は目を覚ます。
夢の中・・・実は周りに、リンやルシファー達もいた。
と、言うことは・・・
「樹里もこの夢見るってことか・・・?」
蔵人は眉間を寄せた。
枕を壁に向かって投げつける。
そしてベッドの端に座り、大きなため息を吐いた。
片手で頭を抱え、かぶりを振る。
「受け入れがたい・・・」
次に樹里があの夢の話を始めたら、この話をしなくてはいけないのだろうか。
蔵人はもう一度、深いため息を吐いた。
* * *
「覚えているかどうかわからんが・・・」
ルシファーが壁についている認証システムに触れると、扉がスライドして開いた。
中には、棺のようなものが設置されていた。
俺、いや・・・ルシファーはリンを見る。
「お前が空から落ちてきた日、お前はこのカプセルに入った」
リンがうなずく。
思い出した。
「そうか」
ふたりでカプセルに近づく。
「これは生命維持回復装置、通称『パンドラ・ボックス』・・・発掘された古代文明利器だ。我々ブルーローズは、古代文明を研究し、人間に多少情報を流すことで外交をしている。お前の首輪の外し方を人間が知っているかもしれないから、それも外交内容にいれておこうな」
リンは微笑った。
ありがとう。
「ああ」
俺の口元が少し上がった。
・・・
・・・・・・
棗は目覚めた。
ぼうっとした頭で、三浦樹理に会いたいな、と思った。
側に置いてあった携帯電話をとり、三浦樹里にメール。
少しの間、内容を考えた。
内容はこうだ。
題・ユズ
【ユズの写メくれ】
お前が一緒に写っているのがいい、とは、なんだか言えなかった。
* * *
樹理の部屋にいる、樹理と蔵人とユズ。
蔵人は樹里のベッドに横になって、くつろいでる。
樹理はその側で、ひざの上のユズにかまっている。
「あの温かいパイナップルの状態を『デザート』と呼ぶことは許さない」
「前に中華屋さんに行った時に、酢豚食べたあと、入ってたパイナップル食べてたよ?」
「だから、冷めるのを待っていたのだ。最後までとっておいてあっただろうに」
「ふぅん・・・」
「なにがふぅん、だ。あれをあったかいまま食べるやつがいるんだぞ?」
「特に関係ないよ」
「すげぇな・・・」
蔵人は感嘆の声をもらす。
樹理にとって、酢豚にパイナップルが入っていることは特に重要ではないようだ。
「で、なんでここ来たの?」
「なんで、って時間ができたからだ。夢の話、するんだろう?」
「あ・・・忘れてた・・・」
蔵人は溜息。
「まぁ、いい。何が聴きたい?」
「ん~・・・」
樹理は人差し指をあごに当てて考える。
ユズが愛らしい声で鳴く。
樹理は空中から、兄に振り向いた。
「お兄ちゃんは、夢の中でヘルメイスなんだよね?」
「そうだ」
「耳に翼、生えてるよね?」
「そうだ」
「それって、どんな感じ?」
「は?」
数秒の間。
蔵人は考える。
「よく分からん。自分の耳だ。耳は耳だ」
「ふぅん・・・」
さらに数秒の間。
「で?」
「で?って?」
数秒の間。
「聴きたいことはそれだけなのか?」
「ん~・・・どこから聞けばいいんだろ?」
「ああ、なんだ。それは分からなくもない」
「ん~・・・前にも言ったことあるけど、前世だったらどうする?」
「知らんね」
「ヘルメイス、って調べたんだけど、『伝達』の神様なんだよ」
「久也から聞いた」
「なんだ」
「リンは?」
「よく分からない」
「で?」
「もしかしたら、って思うことがある」
「なんだ?」
「ゼインって、『ゼウス』じゃないの?」
「は?」
「これも調べたんだけど、偶然『もしかして機能』でひっかかったのね?」
「ゼイン、って調べたら、もしかしてゼウス?って?」
「そうそう」
「で?」
「ゼウスって、ヘルメイスのお父さんだよ」
「はぁ?」
「うん・・・」
「で?他には?」
「あと、ゼウスの使いに、鷹だったかな?鷲だったけ・・・忘れたけど・・・」
「鷹と鷲は、動物学的には大きさの違いだけだ」
「ああ、そうなんだ。それは知らんかった・・・」
「で?」
「最近の夢でね、茶色の大きな鳥が出てきたの。ゼインに仕えてるって」
「それで?」
「ヘルメイスは、伝達の神でしょ?」
「そうだったな。それがなんだ?」
「ヘルメイスはゼウスの息子と言われていて、伝達の神」
「何が言いたい?」
「ゼウスが情報通なのは、二羽の鳥が情報収集をしているからなんだって」
数秒の間。
おっかなびっくりの蔵人。
「なるほど・・・・・・何となく、言いたいことが分かった・・・」
「こんなこと、リングちゃんやワカバちゃんには言えなくて・・・」
「分かってる。広瀬棗には言ってあるのか?」
「このことはまだ言ってない。体調とかいろいろ、今は自分のことでいっぱいだろうし」
「お前ら、交際しているのか?」
「お友達として?」
「なんだ。『お友達』程度か」
「よく分かんないよ」
「好きなのか?」
「え・・・」
樹理の顔に赤みが差す。
「なに照れてる?」
「急におかしなこと聞かないでよっ」
「それはお前にとって、兄が確認、当たり前のこと?」
「そう、ですっ」
「好きなのか」
「そうです、好きです」
「そうだ、好きか嫌いかは誤魔化してはならない約束だ」
「本人に会っても、おかしな素振りしないでよっ?」
「一方的なものなのか?」
「分からない、ってばっ」
「そう、興奮するな」
「うるさいよっ。まだ『こんな気持ち』操れないのっ」
「コントロール?そんなもん、できん」
「お兄ちゃんはしてるじゃないさっ」
「久也のことか?」
「そうっ」
「知らん」
「お兄ちゃんって誰が好きなのか分かんないの、コントロールしてるんじゃないの?」
「は?」
蔵人は瞬く。
「意外だ・・・」
数秒の間。
樹理は少し、落ち着く。
「何が?」
「お前の方が、コントロールできるんじゃないのか?」
「意味分かんないよ」
「俺もだ」
樹理はユズを抱いたままベッドに横になる。
ユズが鳴いたので、蔵人との間に置いた。
蔵人はユズにかまう。
それを見ながら、しばらく気を落ち着けるため考え事をしようとする樹里。
「ねぇ、お兄ちゃん・・・」
ユズにかまっている兄は、わざと視線を妹に持って行かなかった。
聞いているのは分かっているので、樹里は続ける。
「『運命』だと思う?」
「お前の名前は?」
「『ジュリ』」
「そうだ。シェイクスピアの作品の登場人物ジュリエットからだ」
樹里は大きなため息。
「そう、私の名前は『ジュリ』です」
今度は蔵人が大きなため息。
「まるで俺は、フジサワタケトだな・・・」
樹里が言う。
「そう言えば、今度近くで個展があるんだって。手紙来てたよ」
* * *
「はぁ・・・」
洞窟ような場所。
ルビー色の湖の水に浸かって、濡れた髪をあきあげるルシファー。
葉や茎も赤い、八重咲の赤い花が周りに咲いている。
側にあった、赤い宝石がついた剣を握る。
剣をそのルビー色の湖に浸ける。
静寂の音に混じって、剣で水をかき回す音がする。
バシャ、っと、剣をルビー色の水から取り出し、その刃を、ルシファーは舐めた。
しばらく剣を見つめる。
少しの沈黙。
「「リン・・・」」
・・・
・・・・・・
目が覚めた棗は、何度かしばたいた。
* * *
学校。
三年生の教室は四階。
樹理は久也に会いに行っていた。
「他の学年の教室に入るのってドキドキする」
「分からなくもない」
樹理は久也の言葉に微笑した。
「あのね?」
「夢の話?」
「そう」
「うん」
「質問していい?」
「なぁに?」
「あの夢が前世だったとして、なんで夢の人達は今と同じ言葉で喋っているのかな?」
久也は意外な顔をした。
「ほう・・・」
しばらくの間。
久也は耳のピアスに触れながら、少し唸った。
「僕が思うにはね?」
「なぁに?」
「あの夢が前世だとしたら、『僕達が』同じ言葉を使っていることになる」
「はっ?ああ・・・」
「それから、もうひとつ可能性がある」
「なぁに?」
「誰かが、彼らの言葉を、僕達にも分かるように、訳している」
「はっ?誰っ?」
「多分、脳だろうね」
「はぁ~・・・・・・え・・・ああ・・・ん?」
久也は何でもないことかのように言った。
「僕は、こんな混乱でいっぱいだった時期がある」
「それって大変・・・ひとりで抱えてたら、苦しいかも・・・」
「僕は樹理ちゃんのこと、愛してる」
「私も、久也君のこと愛してる~」
「蔵人と結婚していい?」
「お兄ちゃんが承諾するなら、いいんじゃないの?」
「祝福してくれるの?」
「別に、ふたりが愛し合ってるなら、反対しないどころか、幸せになって欲しいよ」
「なんだ・・・安心した」
「お兄ちゃんと結婚したいの?」
「実は、よく分からない。一生付き合っていたい」
「ふぅん・・・」
久也は樹理を見つめる。
その視線に気づいて、樹理は「ん?」という顔をする。
「樹理ちゃんって、とっても変わってる」
「そう?」
「そう」
「どんなところ?」
「樹理ちゃんって、運命のひとが同性だったら、抱く?」
「今は異性ともそういうことしたいかどうか分からないから、未知の世界だよ」
「ほ~・・・答えてくれてありがと」
「いえいえ」
久也と樹理はほぼ同時、はにかみ笑いをした。
* * *
なんで泣いているのか分からなくなるほど、頭の中はさびしいでいっぱい。
「やっぱり、赤子だ・・・」
「はぁっ?なんで・・・砂の者の?」
あ。
やっと出会えた・・・
ミネアナとゼインに出会った時のことだ。
初めて見る。
これから何か起こるのかなぁ~・・・?
俺を、いやアークを抱き上げるゼイン。
のちに、義理の父になる男。
「さて、名前はなんとするか・・・」
「里に戻ってからでいいんじゃない?」
「それもそうだな」
ミネアナ、人間界ではアテナとも呼ばれている。
全知全能の神ゼウスの頭から生まれたのではないか、と人間に想像された頭のいいひと。
・・・
・・・・・・
うっすらと目を開け、そして自分の目覚めた場所が教室であることに気付く。
休み時間だろうが授業時間だろうが、活気に満ちた教室。
今はどちらの時間だろう、と何となく思う。
机に伏していた上半身を起こし、深いため息。
涙目をごまかすため、目をこするヤマウチ・カズヒコ。
前の席に座っているテンゲンが声をかける。
「あ、カラオケ・・・じゃなくて、おはよ~」
「おはよ~。おはよ~とカラオケって全然言葉似てないよ?」
「カラオケの話をしたいのだ」
「オケオケ。なぁに?」
「えーと・・・来れそう?」
「そうとう楽しみなのね~。行こうと思えば行ける」
「じゃあ、考えといてね~。そんだけ~」
一彦との話を切り上げ、別のメンバーとの話に戻る点玄。
やっと頭が起きてきて、それと同時にまた眠くなってきたような気がするカズヒコ。
溜息。
教室に一人になった時よりも、孤立した時間を感じた。
あくび。
背伸び。
何気に教室の真ん中を見る。
そういえば、広瀬棗達はまだ、登校できる状態ではないことを思い出した。
「さびしいなぁ~・・・」
点玄が一彦の方へと振り向く。
すでに開封されているお菓子の袋を差し出した。
「食べる?」
「あ、いる~・・・どうも、ね」
「何か悩んでるの?」
「いや、別に?」
「そう?」
「なんで?」
「ん~・・・なんか・・・最近、さびしそう・・・」
一彦はお菓子に伸ばす手を止めた。
点玄を見る。
「だからカラオケ、カラオケ言ってるの?」
「僕、家族でカラオケ行った時が一番楽しい思い出なの。最近みんな、なにか変?」
「僕も変だよ」
「ああ、そうなんだ・・・やっぱり・・・どうしよ~・・・みんなとカラオケしたい」
「僕、参加するけど歌わない」
「それでもいいのさ~」
「やっぱ歌おうかなぁ・・・」
「山内君、自分に合った歌うたいなよ」
「探してみようかなぁ・・・ありがと」
一彦はお菓子を一個つまむと、口の中に入れた。
「あ、美味し」
点玄は笑った。
「よかった。じゃ、話し合いに戻るんで」
「オケオケ。ありがと」
「何かあったら、ちゃんと言うんだぞ~」
そう言って背中を向けた点玄を見つめているうちに、一彦の目から涙が出ていた。
点玄と話していたクラスメイトがぎょっとする。
「どうしたのさっ?」
「ん?」
点玄は一彦の方へと振り返る。
それと同時に、一彦が抱きついてきた。
瞬き、そして泣いている一彦の背中を抱きしめてさする点玄。
「泣いてるの?」
「どうしよ~っ?バレたくないよ~っ」
「泣いてること?大丈夫、ここにいる誰も君のことバカにしないよ」
「っ・・・」
息が一瞬詰まるほどの感動のあと、関を切ったかのように大声で泣き出す一彦。
数十秒、息がまともにできなかった。
「なんで点玄君まで泣いてるのぉ~~~~~~~っ?」
クラス全員が気づくほどの声だった。
「うぅっ・・・」
涙でくしゃくしゃになった顔を隠すように、一彦に抱きつく点玄。
クラスメイト全員が、近くにいる人物達と目配せをする。
廊下側にいた生徒が、この教室を目指して歩いて来る教師を見つけた。
もうすぐ休み時間が終わる。
「閉めろっ」
弾かれたように、廊下側の窓と扉を閉める二年七組の廊下側生徒。
ドアを開けようとして、鍵がかかっていることに意外そうな顔をする教師。
その教師に向かって、扉についているガラス窓に紙を貼りつける生徒。
太いマジックペンで、文字が書いてある。
【 一時間、立ち入り禁止 】
そのあと一彦は、一時的に何もが分からなくなるまで泣いた。
出席している二年七組全員の泣き声は閉まった空間を超えて隣のクラスにまで聞こえていたが、どうして泣いていたのか聴きに来る者はいたが、それをバカにする者はひとりもいなかった。
泣いてた理由。
「意味が、分からなくなったから・・・」