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出会いから約2週間。
クラウドは3日とあけずにリディアナに会いに来た。
昼食やお茶の時間を一緒に過ごすことにも慣れ、むしろ楽しさを感じているし、時には薬草採取を手伝ってくれたりもする。
そして今日も。
いつもどおり家の裏手の草原でお茶をする。
「そういえばクラウドさんはおいくつなんですか?」
今更ながら以前から気になっていた質問を、今日はハーブティなんですね、とにこやかなクラウドに唐突に尋ねた。
余談だがクラウドは紅茶よりもハーブティの方が好きなようだった。
なんでも、すっきりするから好ましい。とのこと。
「…24?…いえ、そういえば昨日25になりました」
「きのう…?」
はい、となんでもないように頷くクラウド。
リディアナにとっても初めての友人。
その誕生日を聞きそびれていた上に、すでに過ぎてから知るとは…
手持ちでプレゼントとして贈れるものなどないし、お金もない。
どうしたものかと少し考え、リディアナは思い付いた。
「クラウドさん!少しだけ待っててください!」
「リディ?」
不思議そうなクラウドを置いて、少し離れた場所にクラウドに背を向ける形で座る。
そのままもぞもぞと動き始めたリディアナにクラウドは声をかけた。
「何をしているんですか?」
そっと立ち上がり、近くに行こうとすると、リディアナがそこから声をあげた。
「こっちにきたら駄目ですよ、クラウドさん!もうすぐ終わるので座って待っててください」
そう言われてしまえば仕方がないのでクラウドは静かに座り直した。
ただ視線だけはリディアナの背中から離れないが。
(よし!できた!)
リディアナは今作ったものを後ろに隠しながら、クラウドの元へ小走りに駆け寄る。
小首を傾げるクラウドの目の前に隠していた両手を差し出して言う。
「お誕生日おめでとうございます、クラウドさん」
作ったのは花冠。瞳の色と合うように紫の花をベースに色々な色を少しずつ差し込んだそれは、急拵えにしては満足の出来。
「本当はもっとちゃんとしたものを贈りたかったんですが…」
そう言いながらそっと頭に載せてみる。
思った通り似合う。
「ありがとう…ございます」
茫然とされるがままになっていたクラウドがぽつりと言う。
そのまま不思議な表情で黙り混んでしまったクラウドにリディアナは声をかける。
「クラウドさん?」
「…リディ」
アメジストの輝きの奥に常とは違う光が宿る。
椅子に座ったクラウドが目の前に立ったリディアナの両手をとった。
「花冠、とても嬉しいです。ついでにもう一つ、我儘を聞いていただけませんか?」