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結果から言うと、私は日和実草の群生地を見つけることができた。

日和実草は透明な花弁8枚が重なるように生えた薄紫の葉と茎をもつ不可思議な植物だ。

夢中になって採取していたため、予定より時間がかかってしまった。

花束のように集めて抱えると、乗り合い馬車へ急ぐ。


(あれ?)


結構な時間を採取に費やしたのだが、あの樹の根元にはまだあの青年がいた。


「何度もすみません」


目を閉じてした青年は、それでも私が近づいて来たことには気づいていたようで驚く気配もなく目を開く。


「これ、貰ってください」


一輪の日和実草を差し出す。

花言葉は"確かな幸福"、そして魔を払うとも言われている。


(どうか暗い陰のあるこの男性(ひと)が幸せになれるように、厄災を除いてくれますように)


目の前に差し出された一輪の花を凝視したまま微動だにしない男性に無理矢理握らせる。


「あ、そろそろ帰らないとまずいので、失礼します」


お辞儀をして走り出そうとしたところを、今度は男性に手を掴まれるかたちで止められる。


「名前を伺っても?」

「え、えと、リディアナ…です」

「…リディアナ」


甘く転がすように名前を呟かれたことにびっくりする。


(誰だこのひと)


先程までとはまるで別人。

そんなことより、手を離してもらいたい。


「あの…?」

「失礼。わたしはクラウド。綺麗な花をありがとうございます、リディアナ嬢」

「ええと、クラウド様ですね。その、そろそろ馬車の時間なのですみません。失礼します」

「クラウドでいいですよ」


どうみても良いところのお坊っちゃまみたいな人を呼び捨てるわけにはいかないだろう。

困惑していると、名残惜しそうに手を離される。


「では、また会いましょう」


いつの間にか立っていたクラウドが耳元で囁くものだから、リディアナは咄嗟に耳を手で押さえる。

顔が熱い。


「し、しつれいします!!!」


尻尾を巻いて逃げるように、リディアナは一目散にその場を駆け足で離れた。


(な、なに!?今の!!)



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