12 (クラウド視点)
王都に戻った日の夜。
クラウドは自室のベッドの上で恍惚の表情を浮かべていた。
右足はベッド下へと投げ出し、左足を折り曲げ抱え込むようにして足首に触れる。正確には、足首に着けたアンクレットを優しく撫でる。
誕生日などどうでもよかった。
"25年前に生まれた"
ただそれだけで意味などなく、権力を欲する屑共にかけられる祝いの言葉など耳障りな騒音でしかなかった。
それなのにあの日、誕生日を知ったリディから花冠と祝いの言葉を貰い、感じたのは純粋な喜びと甘い疼き。
リディと出会わなければ心にも止めなかったであろう花で作られた冠も、今までみた何よりも美しく思えた。
そして衝動を抑えることができず、騎士の誓いを立てることを願う。
慌てるリディもなんて美しいのだろう。
(もう少し時間をかけて、と思っていたのに)
忠誠を、というと駄目だと止められる。
では愛を、というと驚いたようだが、それならばと受け入れてくれた。
友愛、敬愛、なんでもいい。
命はすでに捧げてしまった。その証である左胸の痣を忌々しく思う。
だが、愛は全てリディアナのもの。
『ゆ、許します…』
クラウドが直前に願ったことを叶えてくれた、消えそうな声を思い出すと、それだけでも心が跳ねる。それなのに。
「っく、ふふふ」
アンクレットを指でなぞると、笑みが溢れた。
月花の守りのアンクレット。
作る工程の難しさから市場には一切出回らない装飾品だ。
(ああ、あの隈はわたしの為だったのだ)
無理をさせて心配な気持ちと、それを上回る悦び。
妖しげな光を纏わせ、アンクレットを見つめる。
ほんの少し、月の黄色を含むシルバーの編み紐と深い緑の石。
これはまるで。
「貴女の色ですね」
編み紐にプラチナブロンドの髪が、石に暗緑の瞳が重なる。
心配そうに見つめる顔も、不敬な発言したクラウドを嗜める顔も、そして嬉しそうに目を細めて笑う顔も。
(もっと見ていたい、貴女の傍で、ずっと)
別れ際に渡したアメジストのピアス。
プラチナブロンドから覗くそれを見たとき感じたのはほの暗い満足感だった。
リディアナの危険を察知するため、と言ったが別に片割れのピアスである必要はなかった。
それでもピアスを選んだ理由がようやくわかった気がする。
アメジストを身に付けたリディアナを見たかった。
そしてピアスで自分の存在を主張することで、鏡を見るたび思い出してほしい。
(忘れないで)
リディアナを害するものは必ず取り除く。
何であろうと、誰であろうと、必ず守るから。
(だからわたしをずっと、貴女の傍に置いてください)
「リディ」
わたしの、ただ一人の主。




