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僕の2190日の記録

こんにちは。

二本目の投稿にして少々長文になってしまいました。


少々読みにくいかもしれませんがお楽しみいただけると幸いです。

 僕は1歳になった。

 まだヨチヨチ歩きだけど前よりだいぶ長く歩けるようになった。ただ体が硬いからよく転びよく泣いていたらしいけど、そんな僕に母さんは


「大丈夫だよ、痛いの痛いの飛んでいけ。ほらもう飛んで行ったから痛くないでしょ?」


 痛いの痛いの飛んでいけ。母さんが良く使うおまじない。僕や妹が転んだりして泣いたときによく唱えてくれた魔法のおまじない。今となっては懐かしいけどあの頃は本当に魔法のように効いていた気がする。


 僕は二歳になった。

 僕の誕生日から半年後、妹が生まれた。名前は紫苑。意味は紫苑の別名『おもいぐさ』からとって思い人を大事にしますようにと僕の母さんが名付けた。

 よく泣く子で両親ともに僕の相手をしてくれる時間が極端に減った。

 あの頃は妹に両親を盗られたと思っていたに違いない。それと一つ不思議なことに妹の髪には色素がなかった。生まれたころから白髪というよりも光に反射して光って見えるから銀髪だったというところだろうか。

 このおかげで妹は小学中学高校と大変な思いをしていたが今となってはこの髪に生まれてよかったと言っているので彼女なりに自分の体質を受け入れているようだ。


 僕は三歳になった

 二歳の時に比べてだいぶ話すことができるようになっていた。


「まま、このおはなはなに?」

「その花の名前?その花は紫苑。○○○の妹の名前とおんなじ名前だよ」

「しおんとおんなじなまえ?それじゃあこれしおんにぷれじぇんとする」

「お、優しいお兄ちゃんだ。紫苑も起きたらきっと喜ぶね」

「ほんとぱぱ?しおんがよろこぶ、ぼくもうれしい!」


 ふと昔の記憶が流れ込んできた。

 あの頃は家族そろってよく公園に行っていた。外の世界は初めて見るものばかりだったからよく質問していたっけ。夏になると父さんが僕のために虫をたくさん捕まえてくるから母さんが怒ってたっけ。

それとこのころから自転車に乗るようになったんだ。


「馬鹿、ちゃんと前見てこがないと倒れるぞ」


そういいながら自転車の後ろをお爺ちゃんが押してくれている。僕は補助輪なしで乗る練習をしていた。いや、させられていた。


「まだできないよ」

「いや、○○○なら絶対できるぞ。ここで諦めちゃだめだ、早く乗れるようになったらお友達に自慢できるぞ」

「ともだちにじまん?ねえじいじ、じまんってなに?」

「そこからか...」


 いろいろあったけど結局この日で乗れるようになったんだっけ。確かこの後自転車は父さんに任せておじいちゃんのサイドカーに乗せてもらって家に帰ったんだっけ。


 懐かしい記憶に浸りながら僕は次の記録に進む。


 僕は4歳になった

 この頃から僕は私立の幼稚園に通うことになった。

 私立に通うことになった理由は父さんが言うにはお婆ちゃんが創設者だったから流れで入れることになったらしい。正直何処でもよかったっていうのが本音の様な気がするけどとにかく通うことになった。

 幼稚園に入ってからはハプニングだらけだった。僕は周りの子に比べて少々いや、とても身長が高かった。サッカークラブにも通うことになってさらに大きくなった。そのおかげで少し体が当たっただけで相手の子が泣いてしまうので母さんとお婆ちゃんのもとにクレームの電話がたくさん来ていた。

 体が大きいだけではなく力も十分以上に強かったので遊び道具も壊してしまうことが多かった。もちろんワザとではない。だけど周りはわざとやったと決めつけてくるうえこの年齢帯の子たちはすぐ報告し無駄に盛る。そんなこんなで僕はすっかり悪役というポジションについてしまった。

 僕は関係していないのに僕の名前を出せば最終的に僕が悪くなる。お婆ちゃんも尽力を尽くしてくれていたようだけど卒園するまでこのポジションは変わらなかった。


 僕は五歳になった

 いまだにこの園内での悪役は僕になっているが唯一、僕が悪役でいるのは間違っていると信じてくれていたのはサッカークラブの仲間たちと初めての友達の華浦ちゃんだ。

 華浦ちゃんは華浦ちゃんでいじめの対象だった。体がとても小さく自分の意志がはっきり言えない性格が仇となりいじめられていた。

 華浦ちゃんと僕の初めての出会いは最悪で華浦ちゃんへのいじめの最中だった。男女かまわず物を取るは殴るはで今となってはこいつら本当に同い年なのか?と疑うレベルで酷かった。そんな状況で僕は何を思ったのか、サッカーで鍛えていた渾身の蹴りを華浦ちゃんの正面にいた男子に喰らわせていた。

 僕の人生で最初の暴力だった。

 それからはひたすらに男子どもを殴りけり続けていた。女子はというといつも何もしてこない僕に驚いたのか腰を抜かして泣いていた。


「泣いて済むと思うな!」


と女子も殴りたかったが幼稚園に入園するにあたって


「○○○、喧嘩をするなとは言わないけど女の子にだけは手を出しちゃだめよ。それと年下のお友達にも絶対に手を出してはいけないからね。ママとのお約束よ」


と母さんからの言いつけがあったおかげで行動に移すことができないでいた。が、男子は別なのでひたすらに殴り続けていた。体が大きかったおかげで3、4人から囲まれても負けることはなかった。

 男子どもがボロボロになっているところにやっと先生がやってきて抑え込まれた。さすがの僕もまだ5歳。大人の力にかなうはずもなく、人生初の喧嘩終了のゴングが鳴らされた。取り押さえられていた時に見えた華浦ちゃんの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。


「あの時はさすがに嫌われたなって思ったっけ」


いつものように事の発端は僕にあり僕が悪役で話は終わった。華浦ちゃんに対してのいじめは一切出てこなかったので先生たち含めて本当にくそ野郎のたまり場だった。

 問題が起こった次の日のお昼ご飯後の昼休み。いつものようにサッカーボールを片手に広場に行こうとしたけどサッカーボールがなかった。しかたなく木登りでもしようと広場の隅に向かうと華浦ちゃんが座っていた。サッカーボールを片手に。


「何やってるの?」


 反応がない。今だからわかるけどあの頃の僕は本当に馬鹿だ。馬鹿にもほどがある。昨日の自分が何をしたかすっかり忘れていた。逃げられるに決まっている。


「あ、、が、、、、、と」


 だけど華浦ちゃんは予想を外れ逃げなかった。


「昨日、助けてくれてありがと...本当にありがと」


 さらに予想外なことに泣き出してしまった。

 この時はまた何かやらかしたっけ?って慌てたよ。ありがとうって泣きながら言われるのは初めてだったからそれに対してどうすればいいかわからなくておどおどしてる過去の僕の姿が今でも目に浮かぶよ。


「それと、○○○くん私にサッカー教えて」


 その時の僕は何と返したのだろう。いや、返せたのだろうか。まあどちらにしろこの日から僕に初めての友達ができた。


「うん、とんでもない5歳だった。内容が幼稚園児のすることじゃないんだよね」


 僕はコーヒーを片手に笑いながらつぶやいた。


 僕は6歳になった

 5歳の時の事件以来僕に対する直接的なちょっかいはなくなり華浦ちゃんへのいじめもピタリとやんだ。サッカーを始めた影響か華浦ちゃんは自分の意見をちゃんと言えるようになり友達もどんどん増えていった。

 相変わらずちっちゃいままだったけど体の小ささを生かしたプレイのおかげで僕の所属していたクラブチームは県大会を優勝することができた。

 全国はどうだったかって?ベスト5で止まってしまったよ。


「○○○くん!もうすぐ卒園式だね。そういえば〇〇〇くん海波小学校だったよね?私も同じだよ~」

「本当?!でも華浦ちゃん卒園したらお引越しするって言ってたよね?」

「うん!卒園したら○○○くんのおうちの近くにお引越しするの!」


 華浦ちゃんはとんでもないぐらいお金持ちだった。この頃の僕は知らなくて当たり前だったけど今の僕から言えば「すごいなお前よくこんな会社の令嬢と友達になれたな」ってレベルでお金持ちだった。


 そして卒園式当日。

 周りは泣いている子たちが多かったけど僕はまったくその気になれなかった。

 卒園式が終わるとママとパパが黒い眼鏡をかけたおじさんとお話をしていた。


「どうも初めまして。うちの華浦が〇〇〇君にお世話になっているようで○○○くんには感謝しきれませんよ」

「はぁ、はい。華浦がということは華浦ちゃんのお父さんですか?どうも初めまして○○○の父の正人です。そしてこちらが妻の○○です」

「あぁ、自己紹介が遅れましたな。私は中京工業地帯を仕切らせていただいております霞原銀字と申します。そして明日からお宅の隣に引っ越してきたものでもありますので、どうぞよろしくお願いします。」

「お隣さんだったんですね!○○○ともにこちらこそ宜しくお願い致します」


 両親はとても緩い人だった。中京工業地帯というワードすら知らなかったのだろう。驚きという表情はまったくなかった。

 両親たちの会話を聞いていると華浦ちゃんがとびかかってきた。

 

「○○○くんこれからもよろしくね!............いつまでも一緒だよ」


 というわけで華浦ちゃんがお隣さんになり友達一号から幼馴染一号に昇格した。


「いやー、この黒服着た人たちは怖かったな。それにしてもアルバム全然減らない......次はこれか」


 僕は次の記録を手に取りパネルに触れ



「コーヒーのお替り、お願いします」

最後までお読みいただきありがとうございます

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