プロローグ
俺ことロゼ・ベルムートは今人生に置いてとても大切な場面に直面している。
「では始めてください」
そう言われ俺は詠唱を開始する。
【雷よ】
俺の詠唱はこれで完了だ。
目指す先は約20メトル先にある人型の的。
俺は魔法詠唱を開始した時点でスティック型の杖を的に向け、詠唱が終了した瞬間に杖の先に集まっていた魔力が雷へと変化し、それが矢の形となり的の上。丁度頭に向かって空気を裂きながら突き進み頭のど真ん中に着弾する。
「はい。お疲れ様でした」
そう試験官の人に言われその場から立ち去る。
周りをチラチラっと確認して誰もいないのを確認すると......
「はぁ......疲れた」
あの魔法は俺が唯一上手に使える魔法だ。
そんな得意な魔法でも1発撃つだけで相当キツい。
さっきは顔は全く変化させずにポーカーフェイスでいたが、実際心の中では死にそうになっていた。
何故そんなことになるのかと言うと、俺には魔法適性がほとんど無いからだ。
全ての人類は全ての基本属性魔法はどれだけ弱くても使える。
そして、その属性魔法の中で1つ、2つ、3つ、それ以上と得意な属性が出てくる。
賢者と呼ばれる太古の魔導士は全ての属性魔法が得意で全てレベル10まで使えたと言われている。
そして、その魔法と関係あるのが魔力量と魔力変換効率だ。
魔力量は生まれつきで基本的な魔力量は決まるが後天的にも増える事はある。
そして、魔力変換効率は完全な生まれつきだ。
後天的にどうこうなる話ではない。
そんな俺には問題があった。
魔力量が少なかった?まぁ、少なかったがそれでも平均的な量だ。
魔力変換効率が悪かった?いや、逆に魔力変換効率は最高だ。ほぼ99%変換出来ている。
じゃあ何が問題だったかといえばそれは得意な属性魔法がなかった事だろう。
ほとんどの魔法が基本属性魔法...要するにレベル1以上にいかないのだ。
いや、行きはする。だが、それは何年も同じ魔法を練習し続けてようやくだ。
俺の場合は雷魔法を5年......サンダーボールだけを繰り返し、撃ち続けようやくレベル2のサンダーアローが打てるようになった。
だが、もうこれが正直限界だろう。
何度も打ち続けた結果詠唱は短くなり、より早く打てるようになった。
でもそれだけ......
「ふぅ。運良く合格出来たらいいな...」
〜試験官サイド〜
「では始めてください」
私は次の受験者が指定地に着いたらそう言う。
次の受験者の見た目はどこにでもいそうな少年だ。
イケメンではないが、ブサイクでもない。クラスに1人はいるような人。
その受験者は腰からサッとタクト型の杖を取り出し魔法の詠唱を口にする。
【雷よ】
私の耳に聞こえてきたのはそれだけだった。
(え?)
私は当然失敗したと思った。
こんな若い...私より年下の子が詠唱短縮...それも1語詠唱を出来るとは思えない。
だけどそれは私の予想を裏切り杖の先に魔力が集まりそれは雷に変化し雷の矢となり的の上...頭に直撃する。
(なんて子なの......)
今の魔法はレベル2のサンダーアロー。
だけどそれを1語詠唱で顔色1つ変えず淡々と撃つ。
(逸材だわ。この子は)
「はい。お疲れ様でした」
私はそう言ってこの受験者の背中を見送る。
受験者の名前やら何やらが載っている羊皮紙を見て「ロゼ・ベルムート......」
名前は覚えたわよ?
魔法詠唱の募集。
厨二心の溢れる方、是非詠唱を。
マジムズ