5.『語られる伝承』
千年…
言葉にするのは簡単だ。
だが、実際に千年とはどれほどかと聞かれれば、それはそれは途方もなく長い時としか答えようのないものだった。
「あら?最後の二人には聞き覚えがあったかしら?」
不自然な反応をした俺にエレノアは興味を持ったのか素朴な質問してきた。
だが、聞き覚えもなにも…本人である。
「もしかして、面識があるとか!!」
「…は?」
俺が呆然としているのを余所にエレノアは一人で盛り上がっていく。
いや、面識というかなんというか…
何度も言うが、本人である。
仮に面識があったとして…
何故そんなに舞い上がるのかちょっと気になるなぁ。
もしかしたら、俺の話が誇張されて伝説のように語り継がれているのかもしれないし?
いやしかし、悪者扱いされてるのかもしれない。
後者だったら嫌だな…
悪者要素があるからないとは言えないし。
とりあえず聞いてみることにする。
「…随分気になってるようだけど、その二人がどうしたんだ?」
我慢出来なくはないが、好奇心が勝ってついつい質問してしまうんだよなぁ。
なにせ男の子だからな!
精神的にはオッサンの筈だが、体が子供であるせいで少し子供っぽい事を考えてしまう。
「よくぞ聞いてくれました!このエレノアちゃんが教えてあげましょうっ!」
妙にテンションの高いエレノアは気にしないでおき、わざわざ教えてくれるらしいからありがたく聞かせてもらう。
果たして、後世ではどのように語られてるのか。
魔女であるエレノアはどこまで知っているのか。
期待と不安が半々ってところか。
「実はね…クロギリ・テンドウって人なんだけど、かなりヤバい存在だったって聞いてね、それで凄く調べたのよ!」
僕ヤバいんですかぁ…
一人称「俺」なのにおかしくなっちゃったぁ…
えぇ、ヤバいってなに…
…まぁ、俺は色々やらかしてるし…
神様殺っちゃってるし…?
というか仲間一人守れなかったし…
あっ、いっけねぇ…自己嫌悪が…
気を取り直して話の続きを聞くとしよう。
「異世界からの転生者って大体は魔王だったり邪竜だったり人類存続を脅かす存在を倒す勇者として召喚されるんだけどね」
まぁ、そうですね。
俺も魔王が現れた時に嫌々戦わされたね。
そりゃもう壮絶な死闘だった。
大切な人がみーんな死んでいったよ。
あぁ、死にたくなってきたぁ…
いけないいけない、また自己嫌悪…
「彼は魔王を倒した後に姿をくらませてね、何をしたと思う?
最凶最悪の存在だった魔神を倒しちゃったんだよっ!?
凄くない!?凄いよね!!神ですら魔界に閉じ込めるのが限界だったって神話で語られてるのに!!
凄いなぁ…会ってみたいなぁ…!!」
目の前に居ます。
でも、そうかぁ…
たしかに強かったもんなぁ、片腕を代償にしたし戦いながらスキルを発現させちゃうし聖剣は砕け散ったし。
むしろ、なんで倒せたのかこっちが知りたいぐらいだな。
「あ、でも…その後、魔神の邪気に取り込まれて神々に反逆してね。
戦争みたいになったんだけど、神々を追い詰めたギリギリのところで最後に一人の女神が彼に剣を突き刺して戦いに終止符を打ったって話なのよねぇ…」
うん…?
…魔神の邪気に取り込まれた?
なんだその話は?
俺は取り込まれてないし、むしろ俺が魔神を喰ってやったんだが?
神々に反逆したってところもやや違う。
「危険な存在だ」のなんだのと命を執拗に狙われたの俺だぞ…俺被害者っ!!
あの女神は何も言わなかったのか…
誠実そうな女神だったじゃねぇか。
「もっと話が残ってれば良かったんだけどなぁ、残念ながら謎に包まれてて調べても失踪後の話はあまりないのよねぇ…
で、どうかしら?気にならない!?」
どうよどうよと言わんばかりの顔でエレノアは見つめてくるが、俺は今それどころではない…
女神許すまじ。
神を殺し回った俺が悪者みたいじゃないか。
と、それは一度置いといて…
俺の幼馴染みの話を聞きたかったな。
彼女を守れなくてかなり後悔してるんだが、どのような感じに語られているのだろうか…
もしかしたら俺のようにどこかの時代で転生したのかもしれないし…
何か情報があればいいが…
「一緒にいた穹って人の話はないのかな?」
「あら、そっちが気になるの〜?
でも残念、魔王と戦った際に亡くなったらしいわよ。
他にもたしか十勇士って呼ばれる当時最強の戦士達がいたんだけど、その魔王を相手にした際に亡くなったって言われているわ。
とんでもなく強い魔王だったって話の書物が遺ってるし災難よね…」
「そっか…」
嘘ではない。
魔王は強かったし、俺は穹を守れずに死なせてしまった。
それに、おそらく十勇士とやらは生前に俺を勝手に師匠だのなんだのと呼んで慕ってくれた奴らだろう…
彼らも守れずに死なせてしまって、ずっと後悔している。
しかし、なんだかなぁ…
なかなかカッコイイじゃないか、『十勇士』なんて。
そうか…彼らも後世で語られてるんだな…
ほんの僅かしかないのは不本意だが、彼らの話も残っていて良かった。
ずっと俺についてきてくれて、慕ってくれて…本当にとても強かったからな。
自慢の仲間たちだ。
「なによ、辛気臭い顔しちゃってぇ〜…つまらなかったかしら?」
「ううん、そんなことないよ…ありがとう」
俺は自分が嫌いだが、仲間たちはみんな大好きだった。
そんな大好きだった仲間達が後世でもこうやって語られているのは素直に嬉しいな。
しかし、やっぱり出来れば守ってやりたかった…
幸せにしてやれなかったのが心残りだ。
と…あまり感傷に浸っていると、エレノアから妙な勘ぐりを入れられてしまうので話題を変えてしまおう。
「他の転生者についても色々と話があると思うから教えてほしいんだけど、大丈夫かな?」
素直に気になっているので、他の転生者の話も聞いてみる事にした。
俺の同じ異世界からの転生者たちがどのように生きていたのか、名前からして同郷の者だから余計に気になってしまう。
「聞きたいっていっても他の転生者にはそんなに面白い話はないわよぉ?そもそもあまり興味湧かなかったしぃ…」
「いいからいいから」
面白い話がないって…
可哀想だなぁ、彼らも戦わされるために召喚されたんだろ?
魔王とか邪竜とかさっき言っていたじゃないか。
何か美談とか残ってるんじゃないのか…?
「そうね〜…」
エレノア仕方なさそうな感じではあるが、どうやら話してはくれるようだ。
あるなら普通に話してくれれば良かったのに。
とか思いながらじっとエレノアを見つめて話をさっさとしろよと促す。
「八百年前に召喚されたチヒロって名前の勇者は、三人の仲間と一緒に北の邪竜を討伐したって話が残ってるわ。
本当かどうかは知らないけど、詳しくはチヒロ冒険記っていう本があるからそっちを読むといいかもねぇ」
短い…それだけ…?
というか、今聞き捨てならない事を言わなかったか?
本になってるの!?
チヒロさんだいぶ恥ずかしいことになってるんだけど大丈夫なのだろうか…
黒歴史の塊みたいなものじゃないといいな。
だが、まぁそのうち探して容赦なく読んでやろう…
いや、待てよ…?
もしかして、俺のも…いや流石に…
調べても無いと言っていたような気がするし残ってないといいな!!
残ってたら焼いて処分してやろう!!
「七百年前に召喚されたタクミって人は、異世界転生者の中で唯一金色の髪をしていて、容姿も良くて女性に人気があったと言われているわ。
まぁ、やった事といえば…
魔物を退治しながら世界を回った事ぐらいかしら?
美少女を侍らせながらね…
書記も残っているらしいから詳しくはそっちを見てちょうだい」
えぇ、タクミくん楽しんでるなぁ…
俺と真逆の人生で幸せそうじゃないか。
羨ましいなぁ。
け、決して美少女を侍らせたいとかそういうのはないんだが…
まぁこれはこれで気になるからそのうち探して読んでみよう。
恐らく何の参考にもならないだろうが。
「五百年前に召喚されたマリアって人は、当時、南を荒らして人々を苦しめたと言われている大魔獣カースドイビルファングを一人で仕留めた英傑よ。
さらに大魔獣と肩を並べて南で猛威を振るっていた魔王軍を四人の戦士を連れて討伐したのも彼女。
今でも南のリベーラ大陸ではマリア様だとか聖女様って崇めている人がたくさんいるわ。
彼女については南の大陸に行けば、たくさんの資料があると思うから行く機会があったら色々見るといいわ」
聖女様と言われるぐらいだから、物凄い人格者なのだろうなと思った。
きっと、人一倍正義感の強い女性だったのだろう。
にしてもカースドイビルファング…
強そうな名前だなぁ。
イノシシ型の魔獣なのかな?
魔王軍ってのも気になる。
俺が戦ったのは単体で軍なんてものはなかったしな。
エレノアは俺と会ってみたいとか意味のわからない事を言っていたが、普通の人ならどう考えてもマリアさんに会いたがらないだろうか?
…違うだろうか?
俺はちょっと会ってみたくなったぞ。
五百年前だから不可能だが。
生前、時間遡行の魔法は何度も探したし作ろうとしたが、残念ながら無理だった。
「四百年前に召喚されたレンって人は、あまり人々に好かれなかった勇者だと言われているわ。
召喚されたのが四百年前だし、きっと南のリベーラ火山付近に住んでるっていう紅蓮の魔女なら会ったことあるんじゃないかしら。
冷酷無比で、例え犠牲者が出ようと合理的であるのを優先して行動していたせいで、特に西の一部の人々から物凄く嫌われている人物よ。
聖剣を二本所持していて、一人で国を相手にしたりもしたそうよ〜」
なるほど、数字で物事を判断するタイプ、合理性の塊のような人か。
高校のクラスにも居たなぁ…
結果や数字が全てだぁ〜って言う奴が…
面倒だったし意志を曲げない奴だったけど、間違えると律儀に頭を下げて謝るから良い奴だったのかもな。
レンという勇者もそうだとは限らないが。
それにしても国を相手に一人とかどうやって戦ったんだよ…
「二百年前に召喚されたリョーマって人は、陽気な人だったらしくてお酒が物凄く好きだったらしいわよ〜。
勇者なのに王国の軍をまとめあげて邪竜相手に完璧な作戦を立てて圧勝したっていう話があるわ。
他にも戦争で軍の損害を抑えたり、魔物の大量発生時には恐ろしいほど完璧な陣形で圧勝したりと、一部の人たちからは軍師様だって言われているわ」
指揮官としての能力が凄そうだ。
面白そうな人だが、酒は…うーん…
そもそも、今の体だと問題アリか…
気が合うかどうかはわからないが、話してみたいなぁとか思った。
「異世界からの転生者についてはこんなものかしら。
異世界からの転生者は他にも居たらしいけど私が知っているのはこのぐらいよ、満足したかなぁ〜?」
「ありがとう、色々気になる事があったけど大丈夫だよ」
一人一人丁寧に紹介してくれたエレノアに感謝をしつつ、頭の中で軽く整理しておく。
知識として頭の片隅に置いておこう。
どうせ、この人生には目的がないからな。
いつか本を探してたりしてみようかな。
一人でこれからの事を考えていると、エレノアは頬杖をつきながらジッと見つめてくる。
「ねぇ、あなたも転生者なら生前の名前とか話があるんでしょう?名前はクロムってのがそうなの?」
「あぁ…いや、クロムは今の名前だけど…」
正直、教えても面倒くさくなるだけだから教えたくないなぁ。
適当な理由を付けて誤魔化せないか…
「言いたくなさそうね、まぁ無理には聞かないけどっ。それじゃ、スキルについては聞いても構わないかしらっ?」
俺が生前の名前を言うのを渋っていると、すぐに諦めてくれた。
しかし、今度はスキルについて聞いてきた…
これもこれで教えると面倒くさそうだが、流石に何も話さないってのはちょっと申し訳ない。
名前ほどは面倒くさくはならない筈だと自分に言い聞かせ、腹を括って話すことにする。
「スキルね…わかったよ…」
もちろん乗り気ではないが、先程の話からしておそらくスキルで身バレはしないだろうとたかをくくり、教えてやることにする。
教えるならとことん教えてやろう!
だが、同時にとことん教えて貰おうではないか!
「んじゃ、実際に見てもらった方がいいかもしれないし、外に出て使ってみようか」
〜あとがき〜
オムライスに新たな刺激が欲しい人は僕の取っておきのレシピを教えてしんぜよう。
1.まずはライスを用意する!
ぶっちゃけ白米のままでも問題ないが、何かが欲しい!って人にはケチャップとかよりも焼肉のタレの方がいいかもしれない!そっと全体にかけてやろう!
2.卵を二つ割って掻き混ぜて、フライパンへGO!
3.この際、ひっくり返したりせずに片面のみ。
上の面がトロトロになってきたなぁってところでライスの上に乗せる!
※焼いた面を下にするとなおよし!
4.2~3の工程をもう一度行い、二層にする。
この時点で卵を既に四つ使っているので、カロリーに関してはもう諦めろ!
5.お好みソースを網状にかけて、その上にマヨネーズを同じく網状にかけてやる。
ラストにかつお節とあおさ粉(or青のり粉)をかけてやり完成だ!!
これをやったらもう普通のオムライスには戻れないので覚悟しよう!!
次回、『最近、異世界系で溢れかえっているが、気にせず書籍化して欲しい!』




