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妹が憎たらしいのには訳がある  作者: 大橋むつお
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67:『C国多摩事変・2』

妹が憎たらしいのには訳がある


67『C国多摩事変・2』      



 300機のチンタオは二世代前のロボットであるために今のC国のコードも通用しない。


 私たちから連絡を受けたC国大使館は、すぐにチンタオたちに「行動中止」のコマンドを二世代前の様式で送ったが、彼らは通常のコマンドコードを受け付けず、C国大使館そのものを敵と見なし、攻撃を加えてきた。


 C国大使館は、自動でバリアーを張って無事だったが、周りの建物に被害が及んだ。Rヒルズの南側の窓ガラスは全部割れてしまった。


 国防省の対応も早く、阿佐ヶ谷駐屯地は、ミサイル発射の熱源に向けて反撃の地対地ミサイルを撃ち込んだが、ステルス化したチンタオたちはすでに移動したあとだった。


 ユースケは、首都防衛の精鋭ロボット部隊〔ロボコン〕を送った。彼らは国内最精鋭部隊で100機のロボコンで構成され、司令機の一機を上空で待機させ、3機編成の33の小隊に、それぞれ指令を送った。


 ロボコン部隊は、チンタオの初期ステルスを易々と見抜き、あっと言う間に半数を多摩地区で撃破した。

 残ったチンタオ達は、カメレオンのようにステルスのモードを変換し、都心部へと近づいてくる。


 都心は、100機以上のチンタオの攻撃を受け、あちこちで大惨事が起こった。ミサイル発射直後の熱源を衛星で探知し、その後20分でさらに50機のチンタオを撃破、擱座させた。


 チンタオは旧式ではあるが、偽装については能力が高く、都心に入ってきたものは、熱源を市販の自動車と変わらないものにし、トンネル内で、荒川で見かけたバンに擬態化し、都心の中枢に向かっていく。


 ロボコン部隊は、強力なセンサーで擬態するチンタオの速度に次第に追いつき、一機、また一機と撃破していく。


 わたしと優子は、ロボコンを除けば、数少ないチンタオのステルスが見破れる個体なので、彼らが目標としている新宿の国防省に向かう。


 新宿では、まだ市民に情報が行き渡っておらず。あちこちで交通事故や混乱の最中。


「あのバン、チンタオよ!」


「任せて!」


 シュバッ!


 腕のグレネードを発射した。


 徹甲モードにしたグレネードは、チンタオの内部に入って爆発するので、そんなに破片は飛び散らない。しかし程度問題で、数千個の大小の部品が凶器になって、あたりに飛び散る。

 わたしたちは、一度に一万個の目標を追尾する能力がある。飛び散った破片がどのような軌道を描くのか瞬時に計算し、危険の高い破片から対応する。ごく小さなものは目に仕込まれたレーザーで蒸発させ。それ以上のもので脅威にならないものは放置する。


――三時の方向の破片、オッサンに!――


 真由の指示でジャンプ。オタオタしているオッサンにしがみつく。若い女にしがみつかれたと思ったオッサンは一瞬ニタリ。直後背中に衝撃、チタン合金の肋骨の下の柔らかい生体組織に突き刺さる。


「おじさん、早く逃げてね。都庁の方角が安全」


 そうアドバイスしながら、背中の破片を抜く。血が噴き出し、オッサンの顔にかかった。


「ごめん……」


 腰を抜かしたオッサンを尻目に、国防省へ急ぐ。


 真由も女の子を庇って首を破片が貫いている。


 両手両足のグレネードを使ったので、関節の生体組織が破れ、わたしたちは血みどろになった。


 国防省の構内に入ると、弾薬庫を目指した。


 もう手持ちのグレネードが切れてしまっている。


「甲殻機動隊。少し弾薬を分けて」


 相手はロボット兵だったので、0・1秒でIDを認識して弾薬庫に入れてくれる。


 両手足にグレネードを装填し終えた時に衝撃がやってきた。


「バリアーが破られた!」


 外に出てみると、国防省の東側のバリアーが破られていた。


 周囲の破片から三機のチンタオが同時に突っこんできたことが分かった。

 もう一機は、わずかに間に合わなかったのだろう、植え込みのところでデングリカエって黒煙を上げている。


 バリアーはすぐに回復を現す薄いグリーンになっている。


「お前達も大変だったな」


 ユースケが声をかけてきた。


「CICにいなくていいの?」


「ああ、やつらの目標はCICのコマンダーのオレだ。いっそ外に出た方が始末が早い」


「最後の1機が突っこんでくる!」


「司令機よ!」


 わたしと優子とユースケは、瞬時に同じコマンドコードになり、二百キロの速度で構内を走り回った。


 もう、グレネードを撃っている暇もない。


 直前で司令機は三つに分離し、三人それぞれに向かう姿勢を示したが、これはブラフであった。ユースケのコマンドコードを正確に読み取った司令機は、ユースケに集中した。


 優子は、その前に身を投げ出した。


 ドッゴーーーーーン!!


 強烈な炸裂音がして、司令機も優子もユースケも吹き飛んでしまった。


 優子は、ボディーの正面で受け止めたので、胴体のところで千切れてしまった。生体組織がぶちまけられ凄惨な姿ではあるが、頭部は無事だったので元気ではある。


「優子、世話かけちまったな」


 片腕を失ったユースケが優子の顔を覗き込む。


「ハナちゃんが来るわ」


 そう言うと、二人とも安心したようだ。


「優子、おまえがサッチャンだってことは分かっているけど、そっちの勝負は当分お預けな。フェアにいきたいからな」


『いやあ、神楽坂も、マンションは爆破されるわ、新宿の方から人が逃げてくるわで大変でした』


「遅れた言い訳?」


「いいじゃん、ハナちゃんも大変だったみたいだから」


 同期した優子とハナちゃんは、情報を共有したようだ。


「木下クンは……」


『……なんとか、人間の形にして、あとのお世話はお願いしてきました』


「ありがとう……わたしたちもメンテナンス大変なんだろうな」


「もし、わたしのCPの中に優奈が生きてるって分かったら……ユースケ、どうしただろうね」


「生きてるって言っても、前頭葉の破片でしょ」


「今の戦闘で活性化が進んでニューロンが伸び始めてる……」


「それって……」


「フジツが量子コンピューターの小型化に成功したって情報あるから」


「復元……」


「やってみる価値はあるかも」


「よし、急いで帰ろう!」


『了解!』


「「うわ!」」


 ハナちゃんは急発進して、一路大阪を目指した……。





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