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怪奇討伐部Ⅱ  作者: グラニュー糖*
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かのインキュバスの守るべき者

第十話 霊界の管理人



 封印の塔。別名『霊界の門』。

 そこに霊界へ続くゲートがある。元学校だった施設を壊し、この塔を作ったのでそれほど時は経っていない。まだ二年しか経っていない。

 ゲートは厳重に保管されており(悪魔なので完全ではない)、入ることはまず不可能だ。しかし、顔パスで入ることができる者がいる。

 ハレティだ。

 最近まで霊界にいたので家に帰る感覚なのだ。誰も家に帰るのを拒む者はいないので霊界に行くことができる。

 そして今ヘラを連れてやって来たのは霊界の奥の方にある深い洞窟。青白い光が漏れ出している。


「ふふ、あなたがここに来るのは二年ぶりでしょうか」

「そうだな」

「あそこに見えるのが祭壇です。ほら、いるでしょう?」


 ハレティは長い袖をもたげ、指を差した。

 その指の先を見たヘラは目を大きく開いた。


「ムジナ……!」


 大きな赤黒い水晶に肩から下が癒着してしまっているのがヘラの友達であるムジナだ。二年前、共に戦った時と全く同じ服装をしている。

 彼は顔を項垂らせ、ピクリとも動かない。

 紺がベースで、黄色い三角模様が数個あるセーターのようなデザインの上着と、紫のズボンはところどころ破れており、肩辺りまである黒髪はボサボサ。靴は赤黒い水晶の奥の方に埋まっているため確認できない。

 その姿はまるで船の先に磔にされた者のようだった。


「彼が今の霊界の管理人です……と言っても彼のことはあなたが一番知ってますよね」

「……あぁ」

「彼がいないと霊界は存在を保つことができません。他人事だとは思わないでくださいよ?霊界が無くなってしまうと、霊の行き場が無くなり、人間界や魔界に溢れ出してしまうのですから。そうなると、二年前の戦いよりもっと酷な戦いが行われるでしょう」

「お前じゃダメなのか?」

「ダメです。力があまり残ってないので。それに……」

「?」

「……歴史が進みません」

「どういうことだ?」


 ヘラは目を細めた。


「アルメト伝説を知っているならわかることです。私が魔界にいることで、人間たちの歴史が進み、世界の時間が調整されるのです。スクーレもそうですね。私がいることで新たな勇者が誕生する。そしてまた旅が始まり、時が進む。そういうことです」

「……ふん」


 ヘラは水晶から目を離さない。見かねたハレティは側に寄っていった。


「難しかったですか?」

「そんなことはない」

「よかったです。さぁ、行きましょう。彼の力が安定していることは確認できましたからね」

「ムジナ……」

「寂しいですか?親友と別れるのは」

「……当たり前だろ」


 ヘラはまだムジナから目を離さなかった。自分は表情を奪われる呪いをかけられただけなのに、彼はこんなところに閉じ込められてとてもかわいそうだ。しかもこの厳重な警備はハレティの指示のもと、展開されたに違いない。ムジナが出てこないようにという意味も込められているかもしれない。

 ハレティがムジナに背を向けたあと、ヘラは静かに一礼して魔界に戻っていった。



 ハレティとヘラが魔界に戻ったときはもう夕方だった。ハレティが買ってくれた黒イモリの炭火焼きを歯切れが悪い礼をして受け取り、真っ黒じゃないかと呟きながら口に含み、盛大に吹き出した。

 ホテルに戻ると、既にスクーレとレインがベッドに座って話をしていた。レインがハレティとヘラに気づくと、彼は満面の笑みで「おかえり」と言った。

 彼は続けて今日出会ったリストのことを告げ、また襲いかかってくることも伝えた。ハレティは大変驚いた顔をし、私に「あなたはどうしてこうヤバイ人に会うんですかねぇ」と馬鹿にしてきた。今度清めの塩でも買っといてやろうかと思った。


「しかし……厄介な人に目をつけられたものですね」

「厄介?」

「えぇ。レインさんの言う通り、リストさんは元人間……ましてや人間を恨んでいるのですよ。危険極まりないです」

「きっと何かあったんだろうな」


 レインは買ってきたアイスクリームを食べながら呟いた。

 側にはスクーレが使っていたであろうドライヤーが転がっている。


「どうして悪魔ってみんな何かあるのかしら?」

「む、無い奴もいるぞ」

「そうなんだ……」

「悪魔は無から生まれるものです。私が生きていた頃、突然現れた悪魔は闇から生まれました。何も物質は無かったのです。

あと、何でも都合の悪いことを忘れてしまう悪魔ですが、精神的かつ魂に刻まれるほどのトラウマを経験してしまう以上、ここにいる二人のように大人しくなる悪魔はいないです」

「……レインもヘラも苦労してきたのね」

「いつか話してやるよ。勇者のイベントの一つとして、な」


 レインはドライヤーを直しながら言った。


「イベントなんかじゃない……仲間として聞くの」

「スクーレ……スクーレー!!」

「きゃあああ?!」

「こら、レインさん!はしたないですよ」

「……んなもん俺の前で見せんな。種族わかってやってるんだろ」


 どさくさに紛れて飛びついてきたレイン。それを見てハレティは叱り、ヘラは後ろを向いて呟く。めちゃくちゃなメンバーだが、これが楽しい。

 ぴょんと飛び出た黒髪がくすぐったい。楽しそうに笑うレインの首には白いマフラーが巻きついていた。

どうも、グラニュー糖*です!

いやぁ、すごいですね。

ムジナが囚われてるところ。

これからヘラはどうやって彼を助けるのか、見ものですね!


では、また!

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