一番恐ろしいのは
画像ぶっ込んでみました。
第九話 人魔のトレジャーハンター(後編)
目が覚めると、そこにはレインの他にハレティとヘラもいた。
窓を見ると闇が深みを増していた。深夜二時。しかし大都市エメスは眠ることを知らない。
「二人帰ってきたぜ。ずっと寝てたから起こさなかった」
レインは椅子に座って話した。
「そっか。ありがと」
「疲れてたんだな。ヨーグルト買ってきたからこれでも食べて、また寝たらいい」
この魔界は本来ヨーグルトというものはないが、人間界と繋がってるところがひとつだけあるのでそこから仕入れることがある。レインと違ってスクーレは人間なので食べる物に迷っていると、ヨーグルトが売っていたので買ったのだという。
「レイン……ありがとうね」
「いいってことよ」
私はプレーン味のヨーグルトを食べ、眠った。私が食べている間、ヘラとレインは寝てしまった。ハレティは出発の準備をしている。
__最近ハレティとしゃべってないな……。
ふと思った時、彼は私のところへ来て、微笑みながら耳元でこう言った。「そのペンダントがあればいつでも一緒ですよ」と。
私は何かが込み上げてくるような感じがし、変な感じがしたのですぐに眠った。
翌日。ハレティに呼び出された私とレインはチケットを持っていた。
ヘラが「二人とも俺らが調べてる間、暇だろ?だからここの名物、サーカスでも見ていくがいい」と言ったからである。というものの、チケットはハレティが手配した。
「スクーレ!なんだかデートみたいだな!二人でサーカス行くんだぞ?」
「な、何を言ってるのよ!私は……」
思わず勢いで言ってしまい、しまったと口を塞いだ。恐る恐るレインを見てみると、案の定膨れっ面をした彼が立っていた。それからサーカスが始まるまで一言もしゃべらなかった。
彼が口を開いたのは席決めの時だった。私は上の方を選び、彼は前の方を選んだ。サーカスは陽気な彼がとても喜びそうなものだったが、彼はずっと下を向いていた。途中で気づいたが、彼はマフラーを外していた。
私は彼が気になりすぎて、私に向けられる視線に気づかなかった。
「……スクーレ」
「?」
「……何泣いてんだよ」
「!!」
サーカス終演後、彼は誰もいなくなった会場で私に話しかけた。
いつから泣いていたのだろうか。
彼の目は心なしかいつもより鋭く冷たく見えた。
「何でもない」
「……ならいいけど。ほら、出るぞ。ハレティたちが待ってるはずだ」
「もうそんな時間?」
私は驚き、ペンダントを見てみるがハレティからの反応は見られない。まだ調べているはずだ。
私がペンダントを見ているとき、剣を構える音がした。咄嗟に見てみると、レインが細い方の剣を構えていた。私に向けて。
「何を……!」
「……人間は嫌いなんでね。オレは人間を恨んでいる……」
「人間を、恨んでる?」
私はバックステップを踏もうとしたが、乱雑に並べられている椅子にぶつかり、思うように動けなかった。足が滑り、転げ落ちていった私。そこにコルマーで見た大きな翼を広げたレインが襲いかかる。細長い剣を振りかぶったのを見て、覚悟して目をつぶった。
しかしいつになってもその時が来ない。恐る恐る目を開けると、そこには二人のレインがいた。もう一人はさっきまでのレインの腕を掴んでいた。
「剣を戻せ」
「……いつ目を覚ました?」
「さっきだ。お前、スクーレに何をしようとした?」
「ふん、決まってるだろ?殺そうとした。お前こそ、なぜ人間といる?」
「お前に教えることではない」
睨み合う二人のレイン。恐らく腕を掴んでいる方が本物だろう。では、もう一人は?
「……リスト。もうスクーレに近づくな」
「ふん。長年悪魔をやってる者には敵わんな」
「当たり前だ。エセ悪魔」
どういうことなのか?どうしてレインはこの人の正体を知っているのか?
答えは簡単。捕まった時に元の姿を見たのだろう。
「だが、エセ悪魔というのは少し違うな」
「?」
「オレは人間から悪魔になった人魔だ。魔人とは違う。まだ人間に近いからな」
「完全に悪魔になったが、まだ人間の心とかが残ってるってことか?」
「ま、そういうことだ。おい、人間。またお前を殺しに行く。その時は大人しく殺されろよ」
「その時はオレが阻止するからな!」
リストと呼ばれた男は変身を解き、黒のソフト帽、長い前髪を持つ黒髪、灰色の着物に黒いマントを羽織り、下駄を履いたほぼ黒ずくめの姿で去ってしまった。
彼には翼が無いので一歩歩く度「カランコロン」と音がする。
不思議な人だった。元人間が人間を恨むなんて……レインもずっと彼の方を見ている。
どこからリストと入れ替わっていたのだろうか。ハレティと一緒にいる時はレインのはずだ。では、レインがトイレに行ったときだろうか。多分その辺りだろう。
考え事をし、周りが見えなくなってきたところでレインが話しかけてきた。
「大丈夫だったか?スクーレ……怪我は無い?」
「……うん」
「ふっ……もう怒ってないから、一緒に行こう?このあと花火があるらしいんだ!昼の花火なんて珍しいよな!行こーぜ!」
無邪気に出口へと走っていくレイン。それより喧嘩した時はまだレインだったのか。私はリストが言った言葉を頭の隅にしまい込み、彼のあとを追った。
どうも、グラニュー糖*です!
ついにリスト登場しましたね!
そしてこれ書いてる今、何かが喉につまって痛いです。マジで。
リストはpixivでもよく出してるキャラなんです。
描きやすいし……ごほんげふん。
では、また!