決着
今回は長いので、時間を十分とって読んでください。
第四十二話 決着
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「さぁ、かかってきなさい!」
「ぐ……ぅ……うああっ!」
レインがヘラに施した魔法が効いているのだろう。ヘラの動きはさほど変わらないが、悪い力はあまり感じられなくなった。それでもまだ呻き続けている。
「ぐあああっ!」
「さすがね。昔より黒く、熱くなってるわ」
「リメルアさん!覚悟してください!」
リメルアに一番近いハレティが右手に魔力の水を湛えるが、ヘラの炎の熱量でどうしても蒸発してしまう。
「……!」
「そんなんじゃいつまで経っても攻撃できないわよ。炎と水って相性悪いもんね」
リメルアの言葉にハレティは唇を噛む。
「なら……スフィアしかありませんね」
「あら、一つ足りてないみたいだけど」
「これで十分です」
「随分とナメられたものね。生魔のスフィアを使わないなんて。何か理由があるのかしら?」
「あなたには関係ないです」
そう言いながらハレティは黄、緑、白、赤の四つのスフィアを取り出して周りに浮かせた。
「消滅しない程度にボコボコにしてあげます」
「やっとやる気になってくれたわね」
「ちょっと!こっちも相手しなさい!」
ハレティと話をしながら攻撃を避けられる私は耐えきれなくなったので思わず叫んだ。ナメてるの絶対リメルアの方でしょ……。
「ちゃんと相手してるでしょ?それとも……私が速すぎて見えないのかしら?」
「戯言を!」
怒った私は星の魔法を放った。紫の光を纏った魔力の塊はゆっくりと膨張していき、ヘラ、ハレティ、リメルアを取り囲んだ。しかし苦しむのはリメルアのみ。なぜなら敵味方を見分けることができる魔法だからだ。
「いい魔法を使うじゃない」
「どーも」
「人間のあなたがなぜ魔法を使えるかはわかんないけど、倒し甲斐がある人間のようね。久しぶりだわ」
リメルアは嬉しそうに言い、体の一部をコウモリに変えて襲いかかってきた。
「……燃やしてやる!壊してやる!消してやる!!」
ヘラが叫び、リメルアのコウモリへと隣から火炎放射のような炎が発射された。黒く熱い炎が。恨みの塊のような炎が。
「なんでこんなに暴れてるの?ちょっと抑えたんじゃないの!?」
「レインさんはもう限界……少しくらい許してあげてください」
ハレティは申し訳なさそうに言う。しかし誰かが悪いということではない。早く倒さねば。ヘラのためにも、レインのためにも。
「どうしたの、ヘラ。随分と弱体化してるじゃない!もっと熱い炎飛ばしてみなさいよ!」
「……ぐああ!」
ヘラはリメルアの言う通り、黒い炎の塊を投げた。さっきより大きくて熱い炎を。
「そう!そのくらい!」
リメルアは嬉しそうに叫ぶやいなや、その炎を打ち返した。そしてそれを私とハレティとヘラは避ける。背後で騒ぎ声がした。恐らくレインたちに当たったなどそんなものだろう。
「ちゃんと当たってくれなきゃ、お仲間が苦しむわよ?」
「二人は丈夫だから放っておいていいの!」
「好きにしなさい」
リメルアはクスリと笑うと、少し吸収したヘラの炎を氷の中に閉じ込めた。そしてそれをこちらへと放つ。
「冷たいけど熱い!?」
「リメルアさんはエネルギーを吸い取ることが得意なんです。もちろん放つことも……面倒な相手です」
「面倒なんてひどいわね。でもそれでヘラがやる気になってくれたから許すけどね!」
「ふざけるな。俺はお前を倒すだけ」
「でもドラゴンみたいなその大きな爪が私に当たったことないけど?」
「うるさい」
「あらあら」
ヘラはもう一度獣のような声を上げると、彼の愛剣であるヨジャメーヌに黒い炎の魔力を纏わせ、そのまま斬りかかっていった。
「うぉおおおおっ!」
「まだまだね」
「行きなさい!」
ハレティはヘラを避けたリメルアの方へとスフィアを飛ばし、旋回させた。それはどんどん彼女の行く手を阻むように移動していき、激しくグルグルと回っていった。
「へぇ……ヘラは囮だったってわけね。でもこんなものっ!……いたっ!」
リメルアがスフィアを退けようとしたが、バチッ!と大きな音を立てて弾き返されてしまった。それを見てハレティは満足そうに頷いた。
「これで動けないですね」
「ハレティって案外すごいかも!スフィアを自由にできたり……」
「いえ。これらは元は私の力が分裂したものですから。当然ですよ」
「ハレティの力……?幻覚とかワープとかも?」
「えぇ。人間ながらもよくできてました」
ハレティはにっこり笑った。
私も笑い返そうとした時だった。後ろでレインを見ていたリストが叫んだ。
「スクーレ!早くしろ!レインはもうダメだ!」
「リス……ト……オレはまだ、やれる……」
レインが反論するが、もうフラフラだ。
「うぁ、んがあああっ!」
「ヘラくん!?」
「ヘラ!?」
「あら、封印解けちゃったのね。タイムオーバーかしら」
リメルアが嬉しそうに言う。そんな彼女を倒そうと、制御不能になったヘラが襲いかかる。
「燃えろおおおおっ!」
「何回も言うけど、そんなので燃えないわよ」
「うるせぇ!!」
完全に聞く耳を持たなくなってしまったヘラ。私は彼を見て固まってしまった。
「ねぇ、ハレティ……ヘラ、元に戻るよね?」
「何とかしましょう。まずはリメルアさんを倒す、それだけです。私のスフィアで動きを止めていますので、あなたはヘラくんを無視していいのでリメルアさんを倒してください!」
ハレティが拳を握って笑顔で語りかけてくる。しかし私は不安に襲われていた。
「……私なんかがリメルアを倒せるのかな……」
「スクーレ。それがあなたの悪いところですよ。ちゃんと自分を信じなさい」
「でも……」
「くよくよしないで。あなたは勇者ですから。勇気ある者、それが勇者なのですよ」
私は一瞬、大昔の……初代勇者アルメト様のことを考えた。
彼女はただのお姫様。でも彼女は現実に立ち向かった。
ハレティを従えて。
今、私にもハレティがついている。
……私にも……!
「……うん!私……リメルアを倒して、ヘラとレインとヘッジさんを助ける!」
「そうですよ!頑張りましょう!」
ハレティの精一杯の笑顔に後を押され、私はスフィアに囲まれながらヘラの炎を振り払うリメルアの近くへと歩み寄った。
「……人間なのに頑張るのね」
「守りたい人がいるから」
「そ。それなら私はそれを壊す悪役になりきるわね」
リメルアは黒い炎を受け流しながら返事をする。ヘラは相変わらず暴走し続ける。ハレティはスフィアを操作するのに必死だ。ヘッジさんは自分を抑えることしか頭にないようで、リストは気絶したレインを看病している。
みんなそれぞれの仕事をしている。私も『リメルアを倒す』という仕事をしないと。今までずっと見ているだけだった私も成長しないと。
ずっと大事にしてきた斧をぎゅっと握りしめたとき、いつもペンダントからハレティが出てくるときより高温の熱が私の内から溢れ出した。
たまたま私を見たハレティは驚いた顔をしている。スフィアを操作するか、私を止めに入るか……交互に見て悩んでいるようだが、そんな余裕は見ての通り無い。
前もこんなことがあったっけ。あれは確かスグリさんとの戦いの時……。あの時はハレティが止めてくれたけど、今度は誰も手を離せない。リメルアも私を見て何かを考えているようだ。
不意に私は斧を前に掲げた。すると先程までヘラを制御していたレインの魔法より、もっと濃い青の光が私を包んだ。
魔力が満ち溢れてくる。私の体の中に『何か』がある気がした。
確かにさっきリメルアは「人間のあなたがなぜ魔法を使えるかはわからない」と言った。正直、私にもわからないが、その『何か』が関係してくるのなら、私は魔法を使えなくなってもいいから、守るべき者を守りたいと思った。
そしてその魔力はどんどんヘラの方へと流れていく。わけがわからず、目を白黒させていると、リメルアが私にスフィアの名前を教えると同時に哀れみの目を向けてきた。
「あらあら、生魔のスフィアの力まで奪い取ろうとするなんて」
「……」
「あなたの意思じゃないことはわかってるわよ。怒らないで」
ヘラへの殺気はそのままに、リメルアは笑顔を見せる。それでもヘラの攻撃は止まらない。後ろの方ではハレティが懇願していた。
「……リメルアさん、これ以上スクーレを巻き込まないでください」
「巻き込んでるのはあなたではなくて?」
「それは……そうですけど……普通の人間に戻すためにも、あなたを倒さねばなりません!そして……生魔のスフィアを封印します!」
「言い切るのね。あなたの力がスフィアに敵うとでも?」
「元は私の力って何度も言ってるじゃないですか。そりゃあいろんな人に渡っていきましたが……それでも私の力なのです!だから勝てます!」
「頑張りなさい」
戦闘中ながらも他人の心配ができるリメルア。絶対に勝てるという自信があってのことだろう。
ヘラもそうだが、私も異変が起こっていた。
「熱い……!あの時より……めちゃくちゃ……!」
「スクーレ!」
「ハレティ、あんたはスフィアを……!」
「ダメです!それに……熱を発しているのは、あなたの体内にある生魔のスフィアなんです!それを取り除かない限り!」
「じゃあ取ってよ!」
「取ったら魔法を使えなくなるんですよ?それに他の人間と同じように、悪魔を敵視するようになってしまうんですよ?いいんですか!?」
私は背筋が凍った気がした。
「それって……」
「レインさんたちのこと、忘れてしまうんですよ!?」
「嫌!でも……それでこの状況が収まるなら……!」
突然わけのわからないことを言ったハレティの言葉に、私は少しだけ混乱してしまった。
みんなのことを忘れる?みんなのことを敵視する?魔法を使えなくなる?
どれも嫌だ。もしかすると、そんなことをしなくても勝てるんじゃないかと思う自分もいる。しかしこのスフィアは今ヘラに力を吸われてしまっている。それも大量に。一体化してしまっている私にはわかる。でも嫌だ。そんな方法をしてまでヘラを止めたくない。止めてもヘラのことを忘れてしまったら、元も子もない。
「……もしスフィアを渡したら終わるの?」
「生魔のスフィアは命を司っています。命というのは、存在、生命力、魔力、記憶など……。生きるのに必要なものです。ですが、あなたは人間として生きている。実質、二つの命を持っていると言っても過言ではないんです。それを使って戦えば……勝ちは確定でしょう」
「……私はみんなにかけるわ。私が正気とか記憶とか失っても、みんなが助けてくれる……そう願うわ」
「彼らは悪魔ですよ?」
「それでも!私は彼らが大好きだから」
ハレティは目を見開いた。
そして俯き、こちらに真剣な眼差しを向けた。
「……良いでしょう。まずはその燃えるように熱くなった体を冷やしましょう。冷たいですが、我慢してください。そして、そのあとにスフィアを取り出します。そしたらレインさんの方へと向かってください。あとは私が何とかしますから……安心してください」
「うん!」
ハレティはヘラがまだリメルアと戦っているのを確認し、スフィアの操作を止めた。リメルアが解放される。直後、ハレティが私に水の魔法を唱え、聞き慣れない言葉を発すると、体の力が抜けるような気がし、思わず目を閉じた。
目を開けると、青く光る珠……生魔のスフィアが浮いていた。
「……あれ、私、どうしてこんなところに……」
「スクーレさん、あなたはあっちに行っててください。手を振ってるでしょう?」
目の前の男は後ろを指差す。だが、私は目の前の光景が信じられなかった。
「きゃっ!?幽霊!?……ってあなた、もしかしてあの伝説に出てくるハレティ……?!」
「今はそんなこと言ってる場合ではありません。あちらに行ってください!ここはもうすでに戦場ですから」
「う、うん!」
私はハレティにソフト帽を被った人と倒れた金髪の男の方へと押しやられた。
「……魔力を感じない。普通の人間に戻ってしまったのか」
「あなたは?」
「リストと呼んでくれ。びしょびしょだな。このハンカチしかないが拭いてくれ。風邪を引かれては困る」
「あ、ありがと」
素っ気無く対応してくれたリストという男は、ハレティの方へと向いてしまった。ハレティはいくつかのカラフルな珠を使って応戦している。もう一人の赤黒い男は、正気を失っているように見えた。そして二人が戦っている相手。あれは……ハレティと同じ伝説に出てくるリメルア?どうしてこんなところに?
私が追い付かない頭を回転させていると、赤黒い男がリメルアに一発パンチをお見舞いした。灰色のカーペットが衝撃波でボロボロになる。避けようがない私をリストが羽織っていたマントで守ってくれた。
「じょ、丈夫な生地ですね」
「……それより大丈夫か?」
「はい!」
元気そうに返事をしたが、内心では怪しんでいた。どう見ても同じ人間だが、どこか嫌な雰囲気を醸し出している。刺すような鋭い目つき。冷たい態度。普通の人間に見えるが、どこかが違う。それに倒れているのはもしかして……。
「あの……倒れてるのって……」
「こいつか。こいつは……レイン。悪魔だ」
「えぇっ!?悪魔!?」
私は思わず身構えた。
「大丈夫だ。襲いかかったりはしない」
「本当ですか?」
「オレが嘘を言っているように見えるか?」
「……悪魔はみんな嘘つきだと他のみんなが……」
「そうか……だが、レインは優しいぞ。お前のこと、気に入ってるみたいだからな」
「私を?」
「あぁ。悪魔のこと、信じられるようになったらレインと仲良くしてやってくれ」
「……頑張る」
リストは私の答えに満足したのか、首を縦に振って再び前を向いた。その先には水でできた槍を持ったハレティと、ギザギザで痛そうな刃の剣を持った赤黒い男が、力無く倒れているリメルアの方へとそれぞれの武器を向けていた。
「ヘラくん、そこまでにしておきましょう」
「……ふん。殺生嫌いのハレティめ」
「どうせリメルアさんは吸血鬼なので死にませんよ」
「それもそうだな」
顔色一つ変えずに返事するヘラと呼ばれた男。そしてリメルアはそんな彼に質問を投げかけた。
「どうして……急に強くなったのよ……」
「そりゃこのスフィアの力だ」
「生魔のスフィアが?」
「あぁ。膨大な魔力のおかげでな。さぁ、観念しろ」
「……しょうがないわね」
リメルアは起き上がり、両手を上にあげた。降参、というわけだ。その途端、リメルアの近くで苦しそうにしていた黒髪の男が倒れ、代わりにレインが目を覚ました。赤いが穏やかな瞳。確かに悪魔だと思わせる姿だ。
「やっと目覚めたか、レイン」
「……すまんな、リスト……って、スクーレ!お前、魔力はどうしたんだ!?」
「それについてはオレが説明するから」
「うん……ったく、オレが寝てる間に何があったんだよ……」
ため息をつきながら頭を掻くレイン。ボサボサの髪がさらに掻き乱される。そしてリストはレインに説明し始めた。それを見ていた私は何か嫌な予感がし、立ち上がった。
「あれ、どこ行くんだ?」
「ちょっと……ね」
「?」
不思議そうに首をかしげるレインを放っておき、私はハレティの方へ行こうとした、その時だった。リメルアが語り始めたのだ。
「私は吸血鬼でしょ?なのに何でインキュバスに……しかも子供に負けないといけないのよってずっと思ってたの。この高貴な吸血鬼が最弱と言われるインキュバスによ?ハレティ、あなたはどう思うのよ」
「それは……ヘラくんが強かったからですよ」
「……」
「そうかしら?でも……それももう終わり。死ぬのよ、ヘラ」
「悪あがきはよせ」
「ふふ……このスイッチ、何だと思う?」
リメルアは足を一回踏み鳴らした。すると床から小さな黒いスイッチが現れた。二人が不思議そうに見る。リメルアはそれを確認してから妖しげに微笑み、スイッチを踏んだ。直後、部屋中からカチカチカチッ!と音がした。その後、キリキリという音に変わる。異変を感じた二人は逃げようとするが、ヘラの足元がたくさんのコウモリに押さえつけられ、身動きが取れなかった。
「ねぇ、見覚えある?あなたを殺した弓矢よ!いっぱいあるでしょ?今度はヘラをそれで殺すの!滑稽な話よね?!」
高笑いをしながらハレティに話しかけるリメルア。ハレティの死因は毒を塗った弓矢だと本で読んだことがある。しかしあれには毒が塗ってあるようには見えない。むしろ青白い光が見える。後ろで見ていたレインがそれを見て呟いた。それにリストが反応した。
「霊矢……」
「霊矢?」
「射られた者の魂を霊界に縛りつける珍しい矢だよ。なんでこんなところに……」
「まさかヘラの魂を霊界に縛りつけ、魔界に返さないって作戦か!?じゃあやはりハレティは……」
「いや、ハレティは行き来できるから関係ないだろう。昔、ここを見つけたのがヘラとムジナだったらしいから、二人とも始末しようとしているのかもな……。ハレティは最後まで利用されていたんだ!」
レインがヒステリックな声を上げた瞬間、部屋中からバシュッ!と音が聞こえた。その『霊矢』が発射されたのだろう。私は反射神経が反応せず、動くことができなかった。その代わり、前で何かがぶつかる音がした。
ヘラの体が宙に浮く。コウモリたちが衝撃で床から引き剥がされる。何かが体に刺さる音。そして床に倒れる音。全てが一瞬の出来事だった。
「いってて……」
尻餅をついたヘラは顔をしかめ、思いっきりぶつけたお尻をさする。彼の視線の先には大量の霊矢が刺さったハレティが倒れていた。
「ハレティ!」
「無事……でしたか、ヘラくん……」
「どうして俺を……」
「あなたに謝りたかったからです……。ムジナくんを操り、シフくんを勝手に連れ出させてごめんなさい……そしてムジナくんを閉じ込めてごめんなさい……感情を封印してごめんなさい……あなたにはたくさん謝ることがありますよね……」
ハレティは消え入りそうな声で言った。
「もうしゃべるな!もう……許すから……!霊界にも行けるから、いつでもムジナに会えるんだぞ!それだけで俺は満足するから……!」
「ふふ……感情が戻っていますね……泣かないでくださいよ。その涙はあとに取っておいてください」
ハレティは震える手をヘラの顔に当てた。そして私を呼ぶようにヘラに指示した。
「スクーレ……私はヒーローになれたでしょうか?それとも……敵でしょうか?……そういえば、忘れてましたよね……」
「ハレティ!やだ、もうお別れなんて……!早く病院に行こ!」
床に座りこんだリメルアは私を見て鼻で笑い、口を開けた。
「無駄よ。その傷は治らないわ」
「リメルア……!何度ハレティを殺したら気が済むの!?」
「私だってヘラを狙ったのに、勝手に飛び込んで来るんだもん。私のせいじゃないわ」
「これだから悪魔は……!」
私の怒りが爆発しそうになった。しかし私の手を握ったハレティによって収まってしまった。
「ストップですよ、スクーレ。私はもう霊界に行かないといけません。そのペンダントが熱くなりますが、一瞬だけなんで我慢してくださいね。……これでお別れですね……記憶を無くし、あっさりお別れする。これほど楽なものはありませんよね……」
楽と言っておきながらも泣きそうな顔をしているハレティ。霊界ということは幽霊がたくさんいるところなのだろう。ハレティの仲間がたくさんいるのだろう。なのになぜ泣いているのだろうか。
「ヘラくん、あなたにいろいろ返さないといけないものがありますね。しっかり受け取ってくださいよ?返すだなんて言ったら泣いてしまいますよ」
「ハレティってば……もう泣いてるじゃねぇか」
「ふふ……そうですね。レインさん、幸福を願っていますよ」
「うん……!うんっ!」
「それでは……またいつか……」
ハレティがにっこりと微笑むと、青白い光が彼を包み、首から下げていたペンダントが発熱した。ビックリするくらいの熱量だったが、すぐに冷えた。そしてそのペンダントはパキンと音を立てて壊れてしまい、ユリの形の綺麗な鉄は花弁と茎を分けるかのように折れてしまった。
「……ハレティ……もう戻ってこれないの?」
「いつもはそのペンダントから出てきていたが……壊れてしまったから不可能だな」
「そんな……嫌だよ……!」
ぺたんとボロボロになったカーペットが敷かれた床に座る私に、レインは慰めのつもりか、彼が身に付けていた白いマフラーを私にかけてくれた。
「……いいの?」
「元はといえばスクーレのだったし……」
「……ありがと」
私が少し寂しそうに笑うと、レインは恥ずかしそうに目をそらした。
ハレティが消えた方で重低音が聞こえた。そして真っ黒い穴が開き……そこから黒髪の男の子が落ち、それをヘラがキャッチした。
「ムジナ!?」
「ヘラ!」
「本物だよな!?また魂だけじゃないよな!?」
「うん!本物だよ!ただいま!」
「うぇぇーーん!会いたかったよぉ!」
「もう、ヘラらしくないなぁ……って痛いよ!苦しい!」
ヘラはムジナと呼んだ男の子を抱きしめ、号泣していた。ずっと会いたかったのだろう。
それを見てレインは嬉しそうに笑い、リストは後ろを向いた。
どうも、グラニュー糖*です!
いつも三話セットなんです。
リメルアを無事倒せて良かったです!
でも、スクーレの記憶がなくなっちゃいましたね……(誰のせいだよ)
次回はエピローグ!お楽しみに!
では、また!




