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怪奇討伐部Ⅱ  作者: グラニュー糖*
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物の怪再び

第三十九話 朽ちない体



 スクーレたちが二階へ向かったとき、オレとリストは一階に残って化け狸と化け狐と戦っていた。化け狸はろくろ首へ、化け狐は包帯男へと変化していた。


「なぁ、包帯男さんよぉ」

「何?」

「お前、ムジナに似てるな。魂だけじゃなかったのかよ?」

「オレはムジナであってムジナじゃないんだ。化けたもの。つまり化け物だ」

「でもお前はムジナだ。たとえ化け狐でもな」

「戯れ言を。ろくろ首さん、いくよ」


 ムジナ……ではなく、包帯男はオレにキツくあたった。


「ちっ、お涙ちょうだい作戦はダメか」

「バカだろお前」


 隣から冷静なつっこみが飛んでくる。

 ちょっとはふざけてもいいと思ったのに……。

 包帯男は自らの包帯を伸ばし、オレたちを拘束しようとしてくる。それにリストは鞭で対抗した。中距離攻撃対戦である。


「お兄さん、私たちはのんびり観戦でもしときましょ?痛いの嫌でしょう?」

「そうだな。オレが痛くなる戦いは、な!」


 オレはろくろ首に向けて剣を振り回す。だが、当たることはなかった。


「卑怯だわぁ。でもそんなのじゃ当たらないわよ」

「くそ速い!」

「あらあら、口が悪いわよ」

「誰がそうさせてるんだ!」


 オレはまたカリビアの剣でろくろ首を斬りつけようとするが、ヒラリヒラリとかわされてしまう。これではオレの体力が持たないと判断し、攻撃をやめた。


「もう終わり?疲れちゃったのね、かわいいわぁ」

「うるさい!」

「怒った顔も素敵よぉ」

「ぐぎぎ……」

「それにしても二人ともよく戦えるわねぇ」


 ろくろ首は余裕綽々としている。……こいつめ。


「む……頑張れ、リスト!」

「……黙れ。集中できないではないか」

「ご、ごめん……」


 どうやらオレはろくろ首のペースに巻き込まれてしまったようだ。


「そういえばお兄さん、昔は幽霊とか妖怪とか苦手だったのよね?」

「そうだ」

「ぜーんぶ本物から聞いたわ。で、今はどうなの?隠れる人もいないわよ?」

「……正直、お前たちが相手してくれたから……どんどん苦手じゃなくなった。怖くもなくなった」

「それはよかったわね」


 オレは何を言っているんだ。でも本当のことだ。なぜか不思議な気持ちになってくる。ふわふわするような、なんというか。


「オレ……ちゃんと成長してる?」

「してるわよ」

「……へへっ♪」


 何度も遭ってきたろくろ首に対してどうしてだろうか、照れくさくなってきた。


「お兄さんは恋してるでしょ?あの人間に」

「え!?な、何を言って……」

「目でわかるもん。私を倒して、彼女の元へ行ってあげなさいな。小さな王子様」


 オレが何か言い返そうと思ったその瞬間、隣でパシィン!と一際大きな音がした。驚いてリストを見ると、彼は恐ろしい表情をしていた。


「……小さいって……言うなぁあああああ!!!」

「うわわっ!?」

「彼は怖いから嫌いよ」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇ!リストは小さいとか聞こえたらキレるんだよ!」


 オレは小さいと聞こえて憤怒しているリストを指差した。


「そうなの?……あら、どっかで見覚えあると思ったら江戸にいた子じゃない」

「江戸?」

「お兄さんは知らなくてもいいわよ。懐かしいわねぇ、本物は気づいてないかもしれないけど、化け狐もろくろ首も江戸にいたころリストくんに遭ってるのよ?ま、彼は覚えてないみたいだけど。長生きしてるわねぇ。今じゃ人間界は平成よ」


 江戸やら平成やら訳のわからない単語をペラペラとしゃべるろくろ首。それをリストは静かに聞いていた。


「平成……か。ビルとかいうものがたくさん建っているらしいな」

「ビル?」

「お前は知らなくていいぞ」

「む……」


 鞭を首に巻き付けられた化け狐……包帯男はノックアウト寸前。完全に放置されていたらしく、今にも倒れそうだ。

 そして目の前では人間界トークをするリストとろくろ首。早く上に行かないといけないのにこいつらは何してるんだ。

 オレは苦しさで、半分変化が解けかけて狐の尻尾が見えている包帯男の方へと歩み寄った。手にカリビアの剣を装備して。


「く、苦し……」

「じゃ、とっとと斬るぜ」

「!?」


 隣で狐の断末魔が聞こえているにもかかわらず、人間界トークを続ける二人。オレはそんな二人を放置してはしごに手をかけた、その時だった。


____ドクン。


 先程狸に噛まれたところが激しい痛みに襲われた。


「いっ……づ……」

「あら、お兄さんどうしたの?」


 いち早くオレの異変に気づいたろくろ首が歩み寄ってきた。元はといえばお前のせいだと言いたいところだが、そんな力は出すことができない。

 そうこうしている間にも傷口がどんどん熱を帯びていく。まるで焼けるような痛み。狐の祟りかなんて思ったりしたが、そんなことはなかった。


「これは……」

「……恐らく私が噛んだことによって吸血鬼化が始まったのね」

「はぁ!?そんなこと、ありえん!」

「それがありえるのよ。ここの主は吸血鬼リメルア。私たちはリメルアの部下としてここにいるの。もとは別の人だったけど……彼がどこかに行っている間、リメルアが私たちをガブリと噛んで……気づいたら私たちは吸血鬼化してたの。見た目はそのままだけど……。その力が発現しちゃったのね」


 そんな説明はどうでもいい。早く……治す方法は……?


「どうやったらレインは治るんだ?」

「それは簡単よ。リメルアを倒すのみ」

「簡単すぎて拍子抜けするな。薬とかニンニクとかは要らないのか?」

「要らないわよ。古い古い。昔は倒せるような力が無かったから薬に頼ってただけよ。それに……」

「それに?」

「もう一人新入りがいてね。彼も吸血鬼化が解けたらいいけど」

「そいつは?」

「その人の名前は……」


__________


 はしごを上った先にいたのは黒髪を後ろで束ね、明らかに大きい白い服に黒いスパッツというなんとも変な格好で、腰に黒いローブを巻き付けたどこかで見覚えのある姿……ずっと探していた者の姿があった。


「ヘッジさん!ここにいたんですね!」

「ヘラくんにスクーレ……ハレティも。どうしたんだい?」

「どうしたって……リメルアを倒しに来たんです」

「そっか……じゃあ呼んであげるよ」


 ヘッジさんは後ろを向いた。


「ま、待ってください!なんでこんなところにいるんですか?」


 ヘッジさんは少し笑ってこう答えた。


「なんでって……結婚したからさ」

「は!?」


 私とヘラはもちろん、ハレティまで驚いている。なんでそんな急に……。


「ヘラくん、俺の家は親がいないの知ってるよな?」

「はい。いつも結婚相手を探しに行ってましたね。じゃあついに見つかったんですか。おめでとうございます」

「お祝いは呪いが解けてからでいいよ」

「わかりました」


 こんなにおめでたい話なのになぜか嬉しい気持ちにはなれなった。それはハレティも同じだった。


「ヘッジさん、そろそろここを通してくれませんか?私たちはリメルアを……私を殺したあの吸血鬼を倒さねばならないのです」

「それはダメだ」

「なんでっ……!」


 一生懸命訴えかけるハレティの目には大粒の涙が浮かんでいた。アルメト様のことを思い浮かべていたのだろう。二人の旅を突然幕引きした者を前にし、許せないという気持ちが前に出ているのだろう。


「なら俺を倒すがいい。妻を守るのが夫の役目だ」

「それは……できません。旅の仲間ですから」

「じゃあ諦めるんだな」

「嫌です!」


 ハレティはいつもとは違う反応をする。

 ハレティが怒るのはわかるが……。


「わがままだ。あのアルメトもお前のわがままのせいで悲しんで死んだんだろ?ならどうするかわかるよな?」

「わかりません!いえ、わかってはいけないんですっ……!」

「どうして?」

「どうしてもです!だからもう……私は正直に生きます。死んでますけどね」

「ふっ、ブラックジョークを言うのは変わってないな」


 ヘッジさんは目を閉じて笑っている。だが、そんなお遊びは終わりに近づいていた。


「では……やりますか」

「そうだな」

「「死なない程度に!」」


 二人が叫んだ直後、私たちとヘッジさんの間に爆風が巻き起こった。もうこのメンバーで戦えない、そんな気持ちが私の心を支配していた……。

どうも、グラニュー糖*です!


昨日は眠すぎてヤバかったです。

バスの中でみんな「眠い!!」って言ってたw


では、また!

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