解決
第二十九話 「俺はムジナを知っている」
「姉ちゃん……」
「どうしたの?」
俺とリストは部屋の外で二人の会話を聞いていた。
「俺、姉ちゃんを心配させないように強くなる!……あの日の出来事は忘れることはできなかったけど、きっと強くなるから!」
ラビスの突然の言葉に目を丸くするナニル。
そしてナニルはラビスに向けて微笑んだ。
「ラビス……ありがとう。でもあんまり無理しないでね」
「姉ちゃん……!」
「ごめんなさい、ラビス……ごめんなさいっ……!」
部屋の中で泣きながら抱き合う二人を見つめ、俺たちは静かにハイタッチをした。
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「ヘラ!」
「ん?」
目的を果たし、ここから離れようと準備をしていた俺をラビスが引き止めた。
「俺さ、お前の友達知ってんだよ」
「友達?」
「俺はムジナを知っている」
「!?」
信じられなかった。いつムジナがこんなところに来ていたのだろうか。もしかするとここまで追いかけてくるのかもしれないという不安が心に生まれた。
「昔、ヘッジって死神と一緒にカリビアって人を連れてきてさ。カリビアは倒れてたけど」
「あのカリビアさんが?」
「これ以上言えることはないけど……バノンに行ったみたいだな」
「うん。……ってことはヘッジさんと同じくらいの年齢なのか?!」
「言ってなかったか?俺はお前よりだいぶ年上だ!」
「そうだったのか?!」
ということは姉ちゃんとも同じくらいということだろう。
まずこんなところまでムジナたちの名が広まってるだなんて思いもよらなかった。
「おーい!ヘラ!出発するぞ!」
下の階からリストの声が聞こえる。これからリストと一緒にクノリティアに戻るのだ。
「おう!……じゃあ、またいつか会おうな」
「いつでも待ってる」
にっこり笑ったラビスの心にはもう昨日までの彼はいない。彼は新しい自分へ向かって歩き出すのだから。
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「何で……」
「これって……」
半日後、俺たちはクノリティアのムジナの家に戻った。しかし、そこには誰もいなかった。
「誰もいない……!」
「もう出発したのか?……これだから人間は……」
「……でも俺はスクーレたちを信じる」
「どうしてだ?ここから離れたのは彼らの意思だろう?」
「あそこ」
「んん?」
俺はムジナの家の地下室にある本棚に向かった。そこには一冊だけ古く、そして太い本があった。
俺はそれを引っ張り出し、真ん中辺りを開いた。するとどうだろう。本が強く光り、目の前に真っ黒な空間が口を開けたのだ。
「何だこれ?……懐かしい気配がする」
「やっぱり。ここからムジナは霊界に戻ったんだ」
「霊界に繋がるゲート、というのか?」
「あぁ。……これはシフという人間を呼び出したときに使った本だ」
シフというのは、二年前に俺とムジナとハレティが戦ったときに同伴した人間だ。
「死神が人間を呼び寄せたというのか?あり得ない話だな」
「俺も最初は信じられなかったさ。でもムジナは本当は人間の魂を狩り続けるだけじゃなく、人間というものを知りたがってたんだ」
「……つくづく珍しいやつだな。だが、この状況とどう関係があるんだ?」
「ふふん」
俺は本を閉じ、元の場所へ戻した。同時にゲートも消えた。
そしてリストの方へ向き、こう告げた。
「もしかするとハレティが戻ってきたかもしれないんだ」
どうも、グラニュー糖*です!
お花見って四月からだと思ってました。(これ毎年言ってる気がする)
先月、お花見ニューストレスをレインでやったやつをpixivに載せました。
では、また!




