悩み事
第二十六話 姉弟
俺はリストと同じ部屋で休むことにした。ベッドは病院なのに二つしかなく、俺らは同じベッドで眠ることになった。
俺は夜になったので眠ろうとしたが、一つ気になったことがあったため、リストに話しかけた。
「なぁ、リスト」
「何だ?」
「あの二人、仲悪いみたいだな」
あの二人というのは金髪の女と青い髪の男のことだ。
「ナニルさんとラビスくんの事か?」
「そうだ」
「彼女たちは姉と弟という関係だと聞いている。昔から兄弟というものは仲が悪いと言うのではないのか?」
「……それは絶対無い」
「何故だ?」
「それは……俺も全く同じ関係だからな」
「ではお前にも姉がいるのだな?」
「あぁ。優しくて……いい姉ちゃんだ」
「ほう……それは一度会ってみたいものだな」
「やめとけ。俺も同じようだが、姉ちゃんはサキュバスだ」
「なんと」
どこか古めかしいリストと話しながら、俺は故郷のイリスに残してきた姉ちゃんのことを思い浮かべた。
俺がムジナを守ることができず、霊界に残してしまい、引きこもっていたときにずっと面倒を見てくれていた姉ちゃん。なのに一枚の扉から外に出ることはなく、スクーレたちとの戦いのあとに家まで運んでもらい、さらには家を離れ、旅に出てしまった。俺は何もしていないじゃないか。俺は、何も恩返しをしていないじゃないか。
「……ヘラ」
「……」
「ヘラ!!」
「……うわぁっ!?」
「何ボーッとしてるんだ?」
バランスを崩し、ゴツン!と大きな音を立てて頭から床に落ちてしまった。
俺は頭を押さえながらよろよろと立ち上がる。しかしリストはバカにすることはなかった。
「うぅ……」
「大丈夫かい?」
「……大丈夫」
「それはよかった。また倒れるかと思って焦ったよ」
「……ごめん」
「いいよ。健康以上の幸せは無いからね」
リストはにこっと笑ってみせた。こんな仕草を見ていると、ハレティが言っていたのと全くイメージが違って見える。ハレティは極悪人の話をするかのように注意を促していたことが多々あったが、本当は優しい人なのではないのかと思えた。
スクーレたちには悪いが、もう少し様子を見てみることにした。
すると階段の方からドンドンと忙しない音が聞こえた。その後、勢いよく開いたドアの向こうに救急箱を持ったナニルが息を切らしながら叫んだ。
「大丈夫ですか!?さっき大きな音が聞こえたんですが……!」
「大丈夫ですよ。本人が大丈夫と言っているのでね」
「それが大丈夫じゃないということなのです!本人が自覚していなくても体のどこかは傷ついているのですから!ほら、見せてください!」
「な、何をする!?」
夜の小さな病院でぎゃあぎゃあと騒ぐ声が響いた。そして「姉ちゃん!」と焦りの中に怒りも見えるラビスが叫びながら部屋に入ってきた。この姉弟は叫ぶのが好きなのだろうか。
「ちょっと怪我をするだけでもこれなんだから!……すまんな、姉ちゃんはこうなると止まらねぇんだ。だから……」
ぶつぶつと何かを言い続けるラビス。この二人の仲の悪さの原因はこれもあるのだろうかと思った。
「いいから止めてくれー!」
俺は眠いし頭も痛いのでどうにかこの状況を終わってもらうように叫んだが、残念ながら効果はなかった……。
どうも、グラニュー糖*です!
異様に兄弟が多い、ですか?
一人っ子なので憧れが強いんです。
あと霊感も全くないんです。
許して!!
では、また!




