リストと病院
第二十五話 魔界の医者
「……おい、いつまでも寝てないで起きろ」
うっすらしている意識の中、声が聞こえた。
目を開けるとそこはどこかの部屋の中だった。視界の隅には青い髪の男がいた。彼が声をかけたのだろう。
「聞いてんのかー?」
男は寝起きのせいで動けない体をベシベシと叩いてきた。
体力が完全に回復したら覚えとけよ。
「ラビス。患者に暴力はいけませんよ!」
「あだっ!!」
新たに部屋に入ってきた金髪の女は男の頭をグーで殴った。心の底からグッジョブと思った。男は頭を押さえている。いい気味だ。
「あぁ、すみません!お見苦しいところをお見せしてしまって……」
「……お気になさらずに。ところでここはどこですか?」
「ここは姉ちゃんの病院だぞ」
彼はよろよろと起き上がる。
「病院?また珍しい施設ですね。魔界には存在しないと思ってましたが……」
「まぁこんな辺境の地に足を踏み入れる人は少ないですからね。多分ここだけですよ」
「でも俺は途中で倒れて……」
「お前をここまで連れてきたやつがいるんだ。下にいるからついてきなよ」
先程ラビスと呼ばれた男についていくと、着物にマント姿の男が椅子に座っていた。こいつは……。
「やっと起きたか」
「お前は……」
「リスト……と言った方がわかるか?人間と旅をする紅き悪魔よ」
「お前がスクーレを狙っている……!」
「はいはい、喧嘩はそこまでですよ、二人とも」
険悪なムードの中、パンパンと手を叩きながら二階から金髪の女が降りてきた。ニコニコと笑顔を浮かべているが、これ以上睨みあっているとラビスにお見舞いしていたグーパンが飛んできそうなので俺はリストから目を逸らした。
「その方があなたをここまで連れてきてくれたのです。あなたは疲労に加え、体温が低下しすぎていたので危険だったのですよ?」
「そうだったのか?」
俺はリストに目を向ける。
彼は腕を組んだ。
「めっちゃ冷たかった」
「……それは礼を言う」
「もうちょっと見つけるのが遅かったら雪だるまになっていたかもな」
「……それはダサいな」
俺が苦笑いすると、金髪の女が俺たちにコップに入った水を渡した。
「とにかくここまで回復したのは奇跡です。あなた方は旅をしているのでしょう?旅路に戻らないのですか?」
「……喧嘩、したから……戻れない」
俺はムジナの顔を思い浮かべながら呟いた。こうしているとイラついてきたので考えることをやめにした。
「そうですか……そちらの方は?」
「クノリティアとは少し離れているし、場所も伝えてないからこいつを送らねばならぬ。だからここにいるぞ」
「わかりました。まだ精をつけていないのでのんびりしていってくださいな」
「感謝する」
こうして俺とリストはこの病院に残ることにした。
リストの目的は人間であるスクーレを殺すこと。ムジナもレインも正直言ってあまり盾にならないだろう。ムジナなんか耐久力はおろか、触れることすらできないので役には立たない。だから俺がやらないといけないのだ。
最善なのはリストの殺意を消すこと。同居とも言えるこの数日でどうにかしたいものだ。
どうも、グラニュー糖*です!
今現在進行形で昼ごはん食べてます。
あっ、落とした……食事に専念します。
では、また!




