ハレティと伝説
この話は、別に血はないですが、モンスターがかわいそうになる表現があります。
第三話 伝説の人
黄のスフィアも無事獲得し、次の街に行こうとしたとき、ヘッジに呼び止められた。
「スクーレ」
「どうしましたか?」
「俺も連れてってほしい」
「え?」
私は驚いた。
だが、彼の瞳は真剣そのものだった。
「俺は……あいつを探すため、ここを離れる!……と言ってもここの悪魔じゃないけどな」
「でもカリビアさんは……」
「あいつはあいつのやることがある。まずはカリビアに別れの挨拶とその大きな斧を強化してもらえ」
「は、はい!」
「準備してくる」と言ってどこかに行ったヘッジを見送り、私はカリビアさんのところへ向かった。
「そうか……二人とも行くのか」
「はい。お世話になりました」
「いや、オレはただ仕事をしただけだ。ほい、頑張りなよ、勇者さん」
「……はい」
「ほら、元気出せ!」
そう言ってバンバンと背中を叩いてくるカリビアは少し寂しそうな顔をしていた。
「じゃ、行ってくる」
「行ってきます」
「気を付けろよ。くれぐれも……死なないように」
「ありがとう。さ、行くか!」
「はい!」
……このヘッジの決断が後々大変なことになることはまだ誰も知らなかった。
「……次はどこに行くんだ?」
「あれ、ヘッジさんも行くのですね」
「お前、ずっとそこにいただろ」
「ふふ、そうでしたね」
何、この空気……本当に電撃が走ってるみたい。
確かに初日から仲は悪かった印象はあったけど……。
「あ、スクーレ。モンスターですよ」
「お出ましね!」
「あれは……ゴブリンか」
「でやー!」
私はカリビアさんに強化してもらった斧を振り上げ、力任せにゴブリンの脳天へと振り落とした。そしてゴブリンは真っ二つになった。
「な、なかなかエグいことするね」
「モンスターとか悪魔なら当然よ」
「う……」
私の言葉にヘッジさんは顔を押さえた。
「ふふ、どうしたのですか?顔面蒼白ですが」
「いや……なんでもない」
「あ、ヘッジさんも悪魔でしたね。ごめんなさい」
「気にしなくて良いよ」
「じゃあ、真っ二つにしても良いということですね、スクーレ」
「やらないわよ!!」
ハレティの言葉に私は憤慨した。
それに人型なんだからやりにくい。気分が悪くなってしまうから。
「で、どこなんだ?」
さすがヘッジさん。話題を変えてくれてありがとうございます。まさに鶴の一声です。
「次は……一番近いのは『コルマー』ですね。しかし……」
「あ……」
そうだった。ハレティが殺されたのはコルマーだ。霊となった彼にはとても行きづらい場所だ。しかし、あくまで伝説の話。本当にそこで死んだのか定かではない……が。
「私はそこで死にました。伝説ではなく、本当です。アルメト様も存在しました。……今日はそろそろ夕方になるのでここまでにしましょう。夕飯の時に伝説について少しお教えしましょう」
もう日が傾いており、夜を告げるヨナキドリというモンスターが現れ始めた。そいつらは夜になると飛躍的に魔力が増幅する厄介なやつだ。
なのでハレティに結界を張ってもらい、この森の中で一夜を明かすことにした。ヘッジさんにとって初めての野宿である。
焚き火の光が優しく照らすなか、ハレティは夢を見るような表情で伝説を語り始めた。
「大昔、私とアルメト様が魔物を浄化していったという話は知ってますね?」
「もちろん」
「私はコルマーで毒矢を射られて殺されてしまったのです。その日、私の誕生日だということでアルメト様がプレゼントを選んでいる時でした」
「つまり誕生日と命日が同じということか……」
ハレティの話にヘッジさんは腕を組んだ。
「そうです。実はその犯人を倒す旅なのです」
「えっ……じゃあ、ハレティの敵討ちの旅ってことなの?」
「……そうでもありますが、他の目的もあります。『彼女』が今殺そうとしている相手……『あの子』を護るための旅です。ヘッジさん、あなたならその子の名前を知っているはずです」
「俺の知り合い……?」
「彼の名前は『ヘラ・フルール』。イリスに住むインキュバスです」
「ヘラくんが?!」
ヘッジの表情が変わった。
『ヘラ』という名前は私も知っている。二年前、幽霊と妖怪に立ち向かった二人の悪魔のうち一人だ。
イリスというのは魔界の東南にある、アメルよりある意味辺境にある森。そこにヘラが住んでいるという。
「どうしてヘラくんが狙われてるんだ?」
「それは本人に聞いてくださいよ。ほら、危ない。だから焚き火は嫌いなのです」
焚き火の木が「パチン!」と音をたてて弾けた。それをハレティが嫌そうな顔で見ている。過去に何かあったのだろうか。
「二人とも、スープが冷めてしまいますよ。私は夜にやることは一つもない。幽霊は寝ることを許されていない。夜は永いのですよ」
私はハレティの言う通り、すっかり冷たくなってしまったスープを一気に飲み干した。直後、ハレティは焚き火を水の魔法で消火した。どうやら魔法を放つ程度の力は残っているようだ。
辺りはすっかり暗くなり、私は寝る準備を済ませた。
ハレティは木の上の方まで飛び、お月見をしている。幽霊がすることにしては優雅なものだ。
ヘッジさんは既に眠っているようだ。せっかくの野宿、もっと楽しめばいいのに……もしかして楽しんでるのは私だけかな?
一方、私はハレティが語った伝説の裏側と狙われているヘラさんの話が頭から離れず、なかなか眠りにつくことができなかった。
どうも、グラニュー糖*です!
一回目、三話まとめましたが、やはり多いですね!
二期からはいつも三話セットで出しているのですが、ページというものが無いようなので一話ずつにしようかと思います。
まぁそれでも六ページとか出てきてビックリしましたけどw
あ、言い忘れてましたが、「(笑)」ではなく「www」派なんです。
では、また!