犯人は?
第二十話 ムジナの支援
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私たちはその夜、ムジナの魂に連れられて彼の家に泊まることにした。
ヘラは昔ムジナと遊んでたときに泊まっていた部屋で、私たちはムジナとヘッジさんがいた部屋だ。
そしてどうして彼の魂だけ封印されなかったのかを教えてもらった。
「ムジナ……」
「ヘラ。落ち込まないでよ。ほらっ、オレだって完全に封印されたわけじゃないんだから!」
「……そうだよな」
ヘラの顔に少しだけ笑顔が戻った。
「そうだ。どうして魂だけになったのか教えてあげる」
「でも、俺だっておんなじところにいたのに……」
「実は秘密にしていたことがあったんだ」
「?」
ムジナは私たちを隣の部屋に案内した。そこには花瓶が置いてあり、彼はヘラにそれを動かすように指示した。(魂だけなので動かすことはできない。ハレティのように霊体なら可能)
すると黄色の珠が出てきた。
これはまさか……。
「黄のスフィア?」
「うん。ごめんね、オレが持ってたんだ」
「……ムジナなら許す」
「許しちゃうんだ……」
「それより見てよ!これ、幻影見れるんだから記憶も見れると思って、いじったんだ」
いじっちゃダメでしょと思ったけど、見せられた幻影は予想もつかないものだった。
ハレティが何かを唱えた瞬間、ムジナの周りに赤黒い塊が出て、取り囲んでいた。その時ムジナから光が射出された。それも物凄いスピードのモノが。
それを見たヘラは信じられないというような顔をしていた。まだ呪いが不安定でぎこちなかったが。
「ルージ……?!」
「え?ルージ?」
ヘラの話によると『手長足長』という妖怪に殺されたはずの彼が使役していた妖精だという。そのルージという妖精は素早さが自慢で、彼も捕まえられなかったほど速かったそうだ。
「実はルージに頼まれてたんだ。ヘラに生きてるのを隠してほしいって。妖精は復活するからね」
「……ルージのスピードを利用してハレティの術を歪めたってことか?」
「ちょっとだけだけどね」
ヘラは困ったような、悔しいような、嬉しいような複雑な顔をしていた。
まさかルージが生きていたなんて。ハレティの力をねじ曲げる力を持っていたなんて。
彼も予想外だっただろう。
「……ところで、二人はカリビアさんと戦うんでしょ?」
「あぁ」「そうよ」
「なら、あれを使って」
ムジナが指差した先には箱があった。ヘラがそれを開けると、そこには剣が入っていた。
「これは?」
「お兄ちゃんがカリビアさんに修行してもらってたときに使ってた剣だよ」
ムジナは笑いながら答えた。でもどうしてこんなところにあるのだろうか?それと、どうしてこの剣を勧めたのか?
「カリビアさんってば、忘れんぼだからここに置いてっちゃったんだ。この剣、初めて強化したものらしいよ」
「なかなか良い素材を使ってる」
「毒を以て毒を制す……って言うでしょ?」
「カリビアさんにはカリビアさんの剣ってことか」
「そ!頑張って!」
ムジナがガッツポーズをとる。それを受け流し、ヘラはレインに剣を渡した。
「オレに使えと?」
「頼む」
「くくく、ヘラに頼まれたの、初めてじゃねぇか?」
「わ、笑うなよ」
相変わらずニコニコしながら剣を受け取るレイン。それを見てムジナは少し寂しそうな顔をした。私はそれを見逃さなかった。
「……どうしたの?」
「いや……オレといるより楽しそうだなって思ってさぁ……」
「そんなことないわ」
「?」
「ヘラはきっとあなたのことを一番に思ってるはずよ」
「でも……」
「だってヘラってば、旅についてくるまであなたがいなくなって引きこもりになってたんだから」
「ヘラが?!」
ムジナはとても驚いていた。それほどヘラの性格に合っていない行動だったのだろう。
「そっか……ならそう信じておくよ。ほら、明日は再戦だろ?寝たらどうだ?」
「ふふふ、そうしておくわ」
「む、ハレティに似てきてるんじゃないか?」
「えっ……なんか嫌ね」
「それはそれでハレティが可哀想だな」
ムジナは嬉しそうな顔で話してくれた。彼の言う通り、明日はカリビアさんとの再戦。
作戦は魔法をよく使うこと。カリビアさんが初めて強化し、彼の弟子だというヘッジさんが使っていた剣を装備したレイン。その魔法をよく使うレインが鍵となるだろう。
明日はどんな戦いになるのだろうか……?
どうも、グラニュー糖*です!
悪気は無かったんだよ。
ホントダヨ
では、また!